クワガタムシ
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?クワガタムシ | ||||||||||||||
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ノコギリクワガタ |
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クワガタムシ(鍬形虫、Stag beetle)とは、昆虫綱コウチュウ目(甲虫目、鞘翅目)クワガタムシ科に含まれる昆虫の総称。
このグループには、体長3mm程度のものから最大120mmに達するものが含まれ世界での種類数は100属1000種を超えるが、分類の難しいグループもあり正確な数は不明である。また、最近でも多くの新種が見つかっている。さらに、甲虫類の化石はごく少ないため、甲虫は昆虫の中では新しいグループに分類されているが、新生代新第三紀鮮新世から中新世頃の地層からクワガタムシの化石が発見されており、クワガタムシは甲虫類の中では比較的原始的な種類に属していることが明らかになっている。
一般にクワガタムシとして認識されているのはオスの顎が発達した種類のものであるが、オスでもメスと殆ど変わらない種も多く存在しており、比率的にオスの顎がメスと殆ど変わらない種が特に珍しい訳ではない。
クワガタムシの成虫は比較的飼育しやすいことから、古くからペットとしての扱いが一般化していた。だが現在、オオクワガタ飼育ブームの過熱により、様々な環境問題及び社会問題が発生している。
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[編集] 名 称
オスの1対の大顎が大きく発達し、戦国時代の武士の兜についている鍬形(型)(くわがた)の形に似ていることからその名がある。
学名Lucanidaeについてだが、Nigidius Figulusが、クワガタムシを魔除けとして使っていたルカニア地方 (Lucania) に因んでLucaniと呼んでいたことを古代ローマの博物学者プリニウスが記しており、これが由来と見られる。
英語ではStag beetleというが、stagは雄鹿、beetleは甲虫を指し、クワガタムシの大顎を鹿の角になぞらえたものである。他のヨーロッパの諸言語においても同様の由来の呼称が使われている。中国語は日本語での漢字表記と同じである。
[編集] 分布
東南アジアに分布の中心があり、熱帯アフリカがこれに準じる。東南アジア周辺のオセアニアやインド方面にも多い。ヨーロッパや北米では種類数が少ないが、南米に大型種が見当たらないことは興味深い。というのも、よく対比されるカブトムシは南米を分布の中心とするが、東南アジアにも、コーカサスオオカブトなどといった大型で有名な種が多数生息しているからである。
分類学の始まったヨーロッパでは、大型種はヨーロッパミヤマクワガタとパラレリピペドゥスオオクワガタのみであった。ヨーロッパミヤマクワガタの属するミヤマクワガタ属Lucanusはクワガタムシ科の学名Lucanidaeにも使われており、大航海時代に発見された海外の種は全てLucanus属に入れられていた。パラレリピペドゥスオオクワガタはオオクワガタ属の基準種である。
[編集] 日本での分布
日本では37種程が知られている。ヤクシマオニクワガタを独立種として、更にマグソクワガタをクワガタムシ科として認めた場合、39種となる。日本のクワガタムシは殆どが黒または赤みの混ざった黒であり、地味な印象がある。
離島の多い日本では、広範囲に渡って分布し各島で亜種を擁するものも多く、ヒラタクワガタなどは日本だけでも十数もの亜種で構成されている。一方四島として唯一九州にはキュウシュウヒメオオクワガタ、オニクワガタの各亜種が固有に生息しているほかは、本土内で亜種が分かれることは特にあまりない。
ただし、標高の高い地域にしか生息できないルリクワガタ属やツヤハダクワガタでは事情が違い、ルリクワガタ属ではルリクワガタは本州、四国、九州と全般的に生息するものの、それ以外では東北地方にコルリクワガタ、関東甲信越地方にトウカイコルリクワガタ(亜種)、中部地方西部から近畿地方にかけてキンキコルリクワガタ(亜種)、瀬戸内地方にニセコルリクワガタ、甲信地方にホソツヤルリクワガタ、四国九州の一部にミナミコルリクワガタ(亜種)と、かなり断続的に分布しており、ツヤハダクワガタの亜種でも似たような分布を示している。
全体的な分布としてはやはり南寄りで、本土に広く分布するものの中でもヒラタクワガタ、ネブトクワガタ、ルリクワガタ属などは北海道には分布しない。逆に南方の離島には種、亜種共に固有種が多数生息している。
また、チビクワガタ属は本土にも生息はしているものの、南の離島に多く、天敵が少ないためであろうと考えられる。
[編集] 離島
伊豆諸島では八丈島に固有種が多く、独立種ハチジョウノコギリクワガタとハチジョウコクワガタ、ハチジョウヒラタクワガタ、ハチジョウネブトクワガタの固有亜種、スジクワガタ、チビクワガタが生息している。一方八丈島以北の島は本土のものとあまり変わらず、伊豆大島から三宅島にかけてのイズミヤマクワガタ(亜種)のほかには御蔵島、神津島の極めて特殊な生態のミクラミヤマクワガタくらいで、本土のものと特に亜種が分かれず分布しているものもある。その先の小笠原諸島にはオガサワラネブトクワガタ、オガサワラチビクワガタが生息するが、大型種は見られない。
対馬のクワガタムシは日本列島よりも朝鮮半島との関係が強い。朝鮮半島に広く生息するチョウセンヒラタクワガタ、キンオニクワガタのほか、ヒラタクワガタの亜種ツシマヒラタクワガタが対馬にも生息しているといった状況である。周辺の離島にもゴトウヒラタクワガタ、イキヒラタクワガタという亜種が点在している。
日本でクワガタムシが最も栄えているのは南西諸島である。屋久島にヤクシマコクワガタ、ヤクシマスジクワガタ、ヤクシマオニクワガタ、ヤクシママダラクワガタの特産亜種亜種、その周辺の三島列島硫黄島と口之永良部島にノコギリクワガタ2亜種、トカラ列島にトカラノコギリクワガタ、トカラコクワガタの特産亜種とトカラ、ガジャジマ、ナカノシマのネブトクワガタ3亜種、奄美諸島には日本唯一のシカクワガタ属アマミシカクワガタやスジブトヒラタクワガタ、更には以南の奄美大島、徳之島、沖永良部島、沖縄本島、与那国島など多数の島々にマルバネクワガタ属4種2亜種やヒラタクワガタ6亜種、ミヤマクワガタ1亜種、リュウキュウノコギリクワガタ5亜種(基亜種含む)、アマミコクワガタ4亜種(基亜種含む)、ネブトクワガタ6亜種が集住している。徳之島にはヤマトサビクワガタが生息する
そのほかには大東島にはヒラタクワガタの亜種とダイトウマメクワガタが、硫黄島にはイオウマメクワガタが生息している。
概して離島には地上歩行種が多いと言える。これは本土では捕食者に狙われやすかったがために絶滅し、離島のみに生き残ったからだと考えられている[要出典]。
[編集] 生態
[編集] 成虫
成虫は一般に夜行性のものが多く、灯火にも飛来するが、ルリクワガタ類やヒメオオクワガタのように、冷涼な高緯度地方や高い標高の地域に生息するものでは、昼間活動するものもいる。
成虫の食物は、大型種ではマルバネクワガタ属などを除くと、樹液や腐敗した果実などのように糖分とそこに繁殖した酵母菌を多く含む餌に集まる種が多い。こうした食物に集まる大型種を含む系統群(タクソン)自体が、このようなパッチ状に点在する餌資源を雌雄の出会いの場とすることで雄による雌を巡る激しい資源防衛(雌自身、或いは雌のやってくる餌場の独占)のための闘争行動を行うグループとして進化したたと考えられ、これによって闘争の武器になる身体の大型化、雄の大顎の長大化といった一連の形態の進化が生じたと考えられている。
さらにこうした繁殖戦略を持つクワガタムシでは、闘争による資源防衛の成功率が高くなるためには巨大な体躯が必要となるが、これを形成するのに必要な成長量が幼虫時代に確保できなかった雄でも、小柄で身軽な体を活かして餌場の周辺を資源防衛の勝者に目立たないようにうろつき、餌場の主が気がつく前にやってきた雌にアプローチして交尾に成功する性質も同時に進化した。つまり、雄の繁殖戦略自体が成長の履歴や自らの置かれた相対的な状況に応じて切り替えられるようになっているのである。これらのクワガタムシの雄が、しばしば個体によってからだの大きさに大きな変異があり、それに連動して大顎の形態にも大きな変異が生じる性質は、この行動上の繁殖戦略が形態面に反映したものと考えられている。
こうした資源防衛戦略による大型化は複数のタクソンで複数回生じたと考えられており、例えば同じクワガタムシ科の中でもオオクワガタ属やノコギリクワガタ属などを含むタクソンと、ミヤマクワガタ属などを含むタクソンは、互いに独立にこの性質を獲得したと推測されている。
このような食性のクワガタムシは飼育下では、昆虫ゼリーと言われる専用の人工餌が開発、市販されているので、これを与えるのが便利である。また、リンゴやバナナを与えてもよい。
他に新芽や若枝に集まって大顎で傷をつけて出てきた汁を吸うもの、一生朽ち木の中で過ごし、朽木内の他の昆虫を捕食しているもの、成虫になってからの摂食活動(後食)をほとんどしないものも知られている。
[編集] 幼虫
幼虫は同じコガネムシ上科に属するコガネムシ科の幼虫に似ているが、ほとんどのコガネムシ上科の幼虫では尾節に開く肛門が横に裂けて排泄時には上下に開くのに対し、クワガタムシ科の場合には肛門は縦に裂けて排泄時には左右に開き、この左右に座りだこ状の突起があるため区別できる。
また、コガネムシ科の幼虫は腐植土などの比較的壊れた植物繊維質の餌を好むが、クワガタムシ科の場合には繊維質の残っている固めの餌を好む(次項参照)。
幼虫期間は2年のものが多いが、飼育下では栄養素が高濃度で供給されるため、1年程度で成虫になる種類も多い。オオクワガタ、ノコギリクワガタ、ルリクワガタ類などでは夏~秋に産卵されたものは幼虫で1年目の冬を越し、翌年の秋に羽化して成虫になり、そのまま蛹室内で越冬する。低温でじっくり幼虫に餌を食べさせたほうが大型個体になりやすいと信じられている。
[編集] 餌
幼虫の餌は木材が腐朽した朽木などの腐植質であるが、生態学的に大きく白色腐朽(白腐れ)材食、褐色腐朽(赤腐れ)材食、軟腐朽材食(黒腐れ)、シロアリによって生成した腐植食の4タイプに大別される。
白色腐朽材食を獲得したタクソンは比較的新しく現れたものであるが、最も資源量が多いタイプの朽木を餌としており、地球上で最も繁栄しているグループである。オオクワガタ属やノコギリクワガタ属などが含まれるタクソンで、近年のクワガタムシ飼育ブームでも主要な対象種になっているものはこれに含まれるものが多い。古い型のクワガタムシでもキンイロクワガタ属などのように、一部この性質を獲得しているタクソンが散見される。木材粉砕物と栄養添加物を混合してビンに詰め、水蒸気で高温高圧滅菌して、その中でキノコの菌糸を純粋培養した、いわゆる菌糸ビンによる飼育の対象となるのは、この型のクワガタムシである。オオクワガタのように比較的乾燥した堅い朽ち木を好むものや、ヒラタクワガタやノコギリクワガタのように湿り気の多い、場合によっては枯れ木の根株の地下部のような土壌中に埋没した部分を好むものまで、様々な環境を好むのものが分化している。
褐色腐朽材食のクワガタムシはマダラクワガタ属など古い型のクワガタムシに多い。白色腐朽材食のクワガタムシの幼虫が褐色腐朽材も問題なく食物にできるのに対し、褐色腐朽材食のクワガタムシの幼虫は生理的に白色腐朽材を食物にできないことが知られている。
[編集] 蛹
3令幼虫が終齢で、この段階で十分摂食して成長すると、蛹室と呼ばれる部屋を作って体色が濃くなり動かなくなる前蛹状態になり、脱皮によって蛹になる。羽化したての成虫には色がついておらず、特に大顎の根元や前翅は色づき、硬化するのに時間がかかる。多くの昆虫と同様、この硬化はキノン硬化と呼ばれる酵素反応で、外骨格を構成するキチンから成るシートに大量に埋め込まれたタンパク質分子が、相互にハイドロキノンと反応して架橋され、これによって物理的に硬くなると同時に褐色に着色する。同時にハイドロキノンからはメラニン色素も合成され、色はさらに濃くなる。
[編集] 体の構造
頭部・胸部・腹部に分けられるのは例外ではない。背面から見た場合、しばしば前胸背板が胸部に、後翅の部分が腹部にあたると誤解されるが、前胸とは胸部の一部分であり、後胸・腹部が翅の下にあることは腹面から見ればわかるだろう。
[編集] 大アゴ
クワガタムシの最大の特徴でもある、一般の会話では「鋏」「角」「牙」などと呼ばれる部分は、学術的には大腮(たいさい)と呼ばれるが、愛好家の間や専門書等では大アゴと呼ばれることが多い。これはもともと採食器官として多くの昆虫にあるものが戦闘用に発達したものである。餌場やメスの取り合いにおいて使用されるが、闘争心の高い種では、目の前の動く物体を全て攻撃対象とみなしてしまうことがよくあり、大アゴの間で木片を動かしてやれば挟むし、メスさえも死に追いやることが稀ではない。そのためそのような種ではペアリングの際には注意を要する。
オオクワガタ属のものは大アゴの力が強いことが知られているが、それよりも奇抜な大アゴを持つホソアカクワガタ属やチリクワガタ属はあまり力が強くなく、過剰適応の例とされる。一般に朽ち木に産卵する種類の方が力が強いようである。
大アゴは中空だが、断面などの点で構造力学的に理に叶った形をしており、人の手で折れるようなことはまずない。
成虫は雌雄の大きさ・形が異なるものが多く、通常雌よりも雄が大きい。雄では発達した大アゴを持つ種類が多く、大アゴの形状も分類上の重要なポイントとなっている。比して、雌では殆どの種が黒っぽく同じような外観をしている。背中に模様のある派手な種ではメスにもまったく同じ模様とは限らないものの持つものもあり、識別が多少簡単にはなるが、それ以外の大勢では頭楯の形状や前翅の点刻の深さなどで判断し、オスに比べてとても難しいことは言うまでもない。植物防疫所により輸入可能なクワガタムシがオスだけと決められているのも、このような理由によるものである。
オスでも小型種であれば大アゴが発達しないものが多く、種・亜種の判別は困難を極める。このような種では、他のオスだとわかる明確な指標のない多くの甲虫 類と同じように、雌雄の判別がすぐにできないこともある。
また、幼虫時代の栄養状態や環境条件によって、体の大きさが大きく変化したり、大アゴの形状に変異が見られる種類が多い。時には別種かと思うくらい変異があることもあり、
- 長歯型(大歯型)
- 中歯型(両歯型)
- 短歯型(原歯型)
などと分けられる。大歯型のものが人気があるが、全ての型を標本箱に並べて変異を楽しむことも多い。全ての種にこれらの型の全てが見られるわけではない。もちろん大アゴの発達があまりない種では変異もないし、オオクワガタ属でも変異が連続的であり劇的な違いは見られないが、身近なクワガタで言えばノコギリクワガタが有名である。長歯型では強く湾曲する大アゴは、原歯型では直線状で短く、内歯も目立たなくなる。尚、この類の用語はきちんと定義された学術用語ではないため、愛好家によって違う変異の体形に使われていることがあると記しておく。また、全体の大きさと大アゴの形とは必ずしも対応しない場合があり、ツヤクワガタ属や一部のノコギリクワガタ属にこの傾向が見られる。
大アゴの向かい合う方向に生えている突起を内歯(ないし)といい、先端部分を外歯(がいし)という。根元から数えて第一内歯、第二内歯と呼ぶ。内歯の数、位置、形状は重要な種の識別要素である。
[編集] 脚
脚(または肢)は前胸に1対、後胸に2対生え、根元から腿節(たいせつ)・脛節(けいせつ)・フ節(ふせつ)(「フ」は足偏に付)に分けられる。脚の根元の体との接続部分を転節、転節のついている板状の器官を基節という。
飼育下ではフ節がよくとれるため、慌てる飼育初心者も多いが、出血の恐れもなく、また脚が6本もあるので1本くらい取れただけでは支障はない。ただ標本としての価値が下がるため、標本収集を目的とする者は採集したものを、フ節が取れるのを恐れて、持ち帰って飼育せずそのまま酢酸エチルで殺すことも多い。生体でも通常より値段は下がるため、主に累代飼育を目的とするものは種親の欠陥を気にせず購入するが、欠陥箇所によっては交尾や産卵に支障をきたす場合があるため、注意が必要である。
[編集] 翅
他の甲虫類同様、前翅はとても硬く柔らかい部分を守る働きもしている。鞘のように後胸・腹部や後翅を覆っているため、上翅(じょうし)或いは鞘翅(しょうし)ともいう。
飛行時には前翅を開き、後翅に血液を通し広げて飛ぶが、大型種の場合飛ぶのは至極不器用で、また柔らかい部分が剥き出しになるため鳥に狙われやすい。あまり飛ばない種も多いが、翅が退化してしまっているわけではない。このような種は灯火やバナナトラップなどに集まりにくいため、ルッキングでの採集が基本となる。
飛行後、後翅をうまく畳めなくなってしまい、前翅からはみ出た状態になったり、前翅自体がきちんと閉まらなくなることがある。これは飼育下で狭いケースに入れられたクワガタムシが飛ぼうとしたときにも起りやすく、俗にはねパカという[要出典]。この場合、後翅が何かに引っかかって状態が悪化することがよくあるため、はみ出た翅は切り取ってしまうのが結果的に最もよい[要出典]手段である。
[編集] その他の器官
- 触角
- 基本的に10節に分かれ、根元から数えて第一節は長く、第二節との間で曲げることができる。これがクワガタムシ科と他の科を識別する要素のひとつになっている。
[編集] 採集
クワガタムシを対象にした採集には以下のものがある。それぞれ有効的な種、有効的でない種があり、目標の種によって使い分ける。それぞれの採集方法の詳しい解説はトラップ (昆虫採集)を参照のこと。
- 灯火採集
- クワガタムシの成虫、大型の人気の高い種の多くは夜行性で、明かりに集まる性質がある。そのため24時間明かりの点いているコンビニや自動販売機、街灯などを見廻ったり、ライトトラップを設置しておびき寄せる方法がとられる。ライトトラップは装備が多くなるため、本格的に採集を職業、趣味にしている人のみが行う。日が暮れる間と昇る間が飛来のピークとなる。
- トラップ採集
- クワガタムシの餌を日中に数箇所設置しておき、夜見てまわる。昆虫図鑑などではよく蜂蜜を木肌に直接塗るものが紹介されているが、これではあまり効果がない。使い古したストッキングに腐りかけたバナナを数本いれ、アルコールに浸して発酵させて枝に括り付けると効果がある。バナナ以外ではパイナップルが使われることがあるが、殆どはバナナである。 この採集方法は、使用後にストッキングの後片付けをしない採集者が多い為、後片付けが出来ない人は自粛してもらいたい方法でもある。
- 洞採集
- 材割採集
- 朽ち木を斧で割って幼虫や蛹、羽化したばかりの新成虫を取り出す方法。手頃な立ち枯れや倒木を斧で割り、それらしき新しい坑道を見つけるとそれに向かって掘り進んでいく。成虫の活動しない冬期には唯一の採集法となるが、一度割った朽ち木は二度と幼虫の住処となりえないことから、問題視されている。
[編集] 飼育
[編集] 流れ
[編集] 成虫飼育
ケースにマット(後述)を7、8割まで入れる。木に産む種類の場合は同時にシイタケ栽培のあとの廃ほだ木などを利用した飼育種に応じた腐朽度の産卵木数本も同時に埋め込む。マットに産卵させる種の場合、特に底のほうは硬く詰めると足場となり産卵しやすいとされる。次に餌となる昆虫ゼリーを入れ、メスを入れる。オスは別のケースに入れる。マットは少なめ、低価格のものでよい。
マットの湿気を保つため、定期的に霧吹きをかける。手で握って固まるくらいが丁度いいとされている。
オオクワガタ属のように長寿命の分類群のメスは、幼虫のときに蓄えたタンパク質だけでは十分産卵できず、成虫になってから樹液に繁殖した酵母の摂取、他の昆虫の捕食などによってタンパク質を多量に摂取する必要があることが知られており、同居中のオスを襲って食べてしまったなどという報告も多い。対策として高タンパクゼリーを与えるのが効果的で、そのほかにも昆虫の死体やカブトムシの蛹を与える愛好家もいる。
カブトムシと異なり、クワガタムシは縄張意識や戦闘本能が雌雄の区別なく強いので、カブトムシのように、オス1匹に対し複数のメスを同じケースに入れて飼育する事は避けたほうが好ましい。同種のメス同士が戦って勝った方のメスが負けたメスを殺してしまう事もあるからである。また、同種のオスがメスを死に追いやることも稀ではない。そのため、ペアリングの時以外には雌雄別々に飼育する事が好ましい。
[編集] ペアリング
野外で活動中に採集された個体ならば既に交尾を済ませている確率が高いが、飼育繁殖個体の場合オスと交尾させる必要がある。クワガタムシには大アゴの力が強いものも多く、時にはメスを敵とみなして殺してしまうこともあるため注意をしなければならない。飼育者の見ている間で交尾させる、クワガタムシの大アゴを輪ゴムなどで縛るなどの方法がとられる。
[編集] 割り出し
産卵木に産卵孔と呼ばれる産卵した痕が見られると、産卵した証拠である。卵の段階で取り出すと見落としやすく、また幼虫の消化管の醗酵室に共生する微生物の定着がうまくいかないからと考えられる原因で管理も難くなるため1令幼虫以降にまで育った段階で取り出すのがよいとされている。マットに産む種類は飼育容器のプラスチックの壁越しに、底に卵が見えることがある。産卵した形跡が見られない場合、産卵木、マットの種類を変えて試行錯誤する必要がある。
[編集] 幼虫飼育
幼虫飼育には大きく分けて3種類ある。
- 材飼育
- 産卵木を使用する。産卵木に穴を空けて幼虫を入れ、マットに埋める。自然に最も近い飼育法だが、手間がかかる割には大型個体が望めないため最近は少ない。
- マット飼育
- マットに産む種類でなくともマットで飼育することができる。発酵済みマットに入れておくだけなので手間はかからない。添加物を混ぜて工夫することもできる。
- 菌糸ビン飼育
共食いが起こったり、一匹あたりの餌の配分が少なくなるため、1頭ずつ別々の容器に入れるのが基本だが、オスとメスの羽化時期がずれて次の産卵が行えなくなるのを防ぐ目的で、栄養状態の悪化による羽化個体の小型化に目を瞑り、敢えて多頭飼育することがある。
大体を食い終わると、マットを入れ替えなければならない。この時に幼虫が出した糞を新しいものに混ぜておくと新しいものに馴染みやすくなり、ストレスを感じず幼虫が痩せるのを防ぐことができることが知られている。そのほかにもドッグフードや成虫用の昆虫ゼリーを与える愛好家もおり、様々な方法が試みられている。
[編集] 蛹の管理
幼虫は蛹室を作って前蛹状態に入るが、蛹室は脆くて崩れやすく、容器を雑に扱うと割と簡単に崩壊してしまうことがある。この場合は人工蛹室を使用する。スポンジや木を使った市販のものもあるが、その手のものは簡単に自作できるし、マットに穴を掘り蛹室を再現することでも代用できる。
羽化したての新成虫は完全に色付いていない。外皮もまだ柔らかいため触るのは厳禁である。数日後あるいはそのまま蛹室内で越冬してから地表に出てくる。幼虫の成長のための摂食でなく、成虫になってからの摂食を昆虫学用語で後食(こうしょく)というが、雌の寿命が短く、幼虫期に蓄えた栄養素だけで卵形成し、産卵する種と、雌の寿命が長く、成虫になってから新たに後食によって得た栄養素で体を充実させ、逐次卵や精子を形成して長期に渡り繁殖活動を続ける種でこれの意味は大きく異なる。前者では単に活動に必要な糖分を得るだけでよく、時にはほとんど後食そのものを行わないものもあるが、後者ではタンパク質などの様々な栄養素を必要とする。成虫の活動時期の長い種や、蛹室内で越冬する種では、性成熟し、交尾可能な状態になるまで数ヶ月かかる。
[編集] 飼育用品
ホームセンターやデパートなどで売っていることがある。専門店に行けば、割高だが質が高い用品を手に入れることができる。
[編集] 昆虫ゼリー
クワガタムシ、カブトムシ用に樹液の代替品として開発された餌。クワガタムシ飼育ブームの以前から、夏休みに子供が採集したクワガタムシやカブトムシを短期間飼育するための用途で開発、販売されていた。市販されているカラフルなものはそうした古典的なタイプで、安価だがその分防腐剤がたくさん入っていたり単純に糖分の水溶液を寒天で固めたのみの栄養素に偏りがあるものが多いため注意を要する。尚、人体には無害だが、防腐剤がたくさん入っているため多量に摂取することは避けるべきである。
飼育ブームの到来以来、飼育愛好家のより高度な要求に応じて以下のような特殊なゼリーが開発、市販されるに至った。3層になっているもの、プロポリスを配合したものなどユニークなものも多い。
- 黒糖ゼリー
- マルカンの「サムライ」が有名。黒褐色のものが多い。本来自然下で餌とする樹液の成分をヒントにして作られた。嗜好性に重点を置いている。栄養価は高いが、口ブラシの固化が指摘されている。
- 高タンパクゼリー
- フジコンの「ドルクスゼリー」や「乳酸ゼリー」が有名。乳白色のものが多い。栄養に重点を置いている。メスの産卵時にタンパク質を必要とすることから考案された。高値であるため、産卵用のメスなど特定のクワガタムシに与えることが多い。
寒天にヨーグルト、果汁などを混ぜ自作する方法があるが、手間がかかる割に日持ちしないため、市販のもので十分とされる。
他にも以下の関連商品がある。
- 餌皿(皿木)
- 昆虫ゼリーをそのままマットの上に置くとマットがついて汚れてしまうほか、マットにも汁がついて不潔になりやすく、またクワガタムシにとっても食べにくい。そのため円盤型に輪切りにした木の切り口に昆虫ゼリーが入るような穴を数箇所空けた餌皿が市販されている。
- ゼリーカッター
- 昆虫ゼリーの蓋に十字型の切れ込みを入れる道具。昆虫ゼリーの蓋を開けて液が飛び散るのを防げるほか、中身がこぼれない、マットまみれにならないなどの利点がある。
- ゼリースプリッター
- 昆虫ゼリーは底が深く、長い大アゴを持つクワガタムシでは底のほうまで食べきることが出来ない。また無理に顔を突っ込んで大アゴが底を突き破り、抜けなくなる事故も見られる。そこでゼリーを縦に割ることのできる器械が市販されている。
昆虫ゼリーはいかにも人工物であるため嫌う愛好家も存在し、代わりに天然の樹液に似せて作られた人工樹液も売られているが、利便性は昆虫ゼリーに劣る。
[編集] マット
昆虫飼育用にシイタケの廃ほだ木などの朽木を粉砕し、或いはさらに添加物を加えて発酵させたおが屑や土のような腐植質のフレーク状のものをマットと呼んでいる。栄養剤添加と発酵によって、クワガタムシの成虫や幼虫が野生状態で生息場所としている様々な腐朽段階の朽木や腐植質の状態を人工的な飼育環境下に再現でき、こうした状態の違いによって用途や飼育に適した種が異なる。
ミタニ社の製造販売する「くぬぎ大王」を筆頭とする未発酵マットは、材を機械で砕いたもので木の色が残っており、手が込んでいない分安価であり、マットの発酵段階を厭わない成虫観賞用飼育やカブトムシの幼虫飼育、産卵木の埋め込み用として使われる。添加剤や水を混ぜて数日置くことで発酵させることができる。
発酵済みマットは黒っぽく、ミヤマクワガタのように土の状態にまで腐朽が進んだ朽木や腐食の堆積に産卵し、幼虫がそこで育つタイプのクワガタムシや、外国産カブトムシの採卵、幼虫飼育に利用することが出来る。種類によって適した発酵段階や窒素量などが違い、見極めを誤ると採卵できなかったり、幼虫を死なせてしまうこともあるため注意を要する。各社がよい製品の開発にしのぎを削っており、成分は基本的に企業秘密とされる。
関連商品
- マットプレス
- マットを、手が中に入らないビンに詰める際に利用する。プラスチック製のものやステンレス製のものがある。てこの原理を利用したものも存在する。
[編集] 産卵木
朽木に直接産卵する種から採卵するために用いられる木材の形状を保った状態の朽木で、種類によって適した種類、硬さ、太さが異なる。一般にはクヌギ・コナラ材をシイタケ栽培に用いた後の廃ほだ木を商品化したものが手に入りやすい。カワラタケがついているものは適度に柔らかくなるため良質である。爪がめり込む程度の硬さがよいとされる。
オオゴンオニクワガタやタランドゥスオオツヤクワガタなど飼育が難しいとされてきた種では近年霊芝材(れいしざい)、すなわちマンネンタケの菌糸を接種して作り出した朽木の効果が注目されており、他の種でも試されるなど需要が増えつつある。
[編集] 飼育容器(成虫用)
飼育容器に必要な条件としては
- 中に熱がこもらないような通気性
- 観察することの出来る透明性
- 何匹も飼育をする時にでも場所をとらない積み重ねが可能
- 逃げられることのない蓋の頑丈さ
のようなことが挙げられる。
- プラスチックケース
- 略してプラケース、もっと略して愛好家間の符牒的用法ではプラケと呼ばれる。
- ガラスよりも扱いが簡単であるため初心者に多く利用される。最も飼育容器として使用されるが、コバエシャッターと比べると多少の欠点がある。
-
- コバエシャッター
- シーラケース社から。符牒的に「コバシャ」と略される。クワガタムシ飼育に特化したケースで、愛好家から一定の支持を集めている。穴が数箇所に空いた部分にフィルターをはめ込む仕組みになっている。蓋が網状になった通常のプラケースと比べると、コバエが自由に出入りすることもできないし、クワガタムシが大アゴで挟んで抜けなくなる事故も防げ、また湿度も保つことができる。そのため、最も飼育容器として奨められる飼育容器であるが、高価なのがネックである。
- コバエシャッター
- ガラスケース
- 鑑賞魚用の水槽。大きさに難がない。蓋を別途用意する必要がある。
- コンテナケース
- プラケース中ほどのものからガラスケースくらいまでの大きさがある。積み重ねるのが簡単で、蓋がぴっちりと閉まるため使い勝手がよい。半透明なため観賞性は悪く、主に大量に飼育している増殖・販売業者や愛好家に利用される。
新聞紙を蓋に挟むと保湿に効果があることが知られている。そのため専用のシートや蓋にはめ込む形式のものも市販されている。
- タッパー
- 安価であるが、成虫幼虫ともに飼育容器としては最もすすめられないケースである。原因は、「飼育スペースが非常に小さい(特に巨大種や大型種の飼育には奨められない)」 「穴を開けても通気性が悪い」 「蓋のはめ込みが出来ない」 「透明度の強いものでも半透明のため、鑑賞性が悪い」「蓋や本体が軟らかい材質でできているため、外産カブトムシの幼虫にかじられやすい」などがある。
[編集] 飼育容器(幼虫用)
1ペアから時に何十個もの幼虫が得られる。そうした大量の幼虫を場所を取らずに置けることが重要である。
- プリンカップ
- 卵や1令幼虫に対して使われる。プリンカップ型のプラスチック。積み重ねができるため、店頭などでメスなどの小型の成虫に対しても使われることがある。
- ビン
- 2令幼虫以降に対して使われる。マットを硬く詰め易く、蛹も観察しやすい。
[編集] 菌糸ビン(菌床ビン)
未分解の木材を粉砕したおが屑に栄養剤などをくわえて滅菌し、オオヒラタケなどの菌糸を植つけ、多くのクワガタムシの幼虫が好む白ぐされ状態の朽木の環境を人工的にコントロールしやすい環境下で再現したもの。本来はほだ木を使わずに木材腐朽菌の食用キノコを栽培するために開発され、エノキタケやヒラタケ、エリンギタケなどの産業的栽培に用いられてビン栽培法と呼ばれているものをクワガタムシ飼育に転用したものである。
菌糸のため白っぽく、幼虫が食べたところが茶色くなるため交換のタイミングを見極めやすい。もともとキノコ栽培用の技術であるため、時にはビンの中の菌糸表面からキノコ(菌の子実体)が生えてくることがあるが、菌は子実体の成長と胞子生産のために菌糸体に蓄積した栄養素を子実体へと転流してしまい、ビン内の菌糸体内部にクワガタムシの幼虫の成長に役立つ栄養素が乏しくなるために、まだ大きくならない原基のうちに抜き去るのが望ましいとされる。使用後数ヶ月で品質が落ちるため、幼虫の食欲にあった大きさの菌糸ビンを使う必要がある。
自然状態の朽木に近い産卵木飼育や発酵マット飼育と比べて1種類の菌のみが純粋培養された菌糸ビン法は菌とクワガタムシとの関係に異なる点が多い。そのため様々な点で他の飼育法と異なる管理法をとらなければならない。
例えば産卵木飼育ではクワガタムシの成長に適する種のキノコの菌糸が、この飼育法では逆にクワガタムシの幼虫を襲って殺し、そこから栄養素を吸収してしまうことも起きた。このため、クワガタムシの成長に適合する菌の種類の解明までにかなりの試行錯誤が必要であった。
また多種類の微生物が朽木に共存して微生物群集を形作る野生状態、産卵木飼育、発酵マット飼育では、クワガタムシの幼虫がいったん食べて消化管の一部に発達した発酵室内で朽木を発酵、栄養素の一部を吸収して排泄した糞を再び摂食によってできた朽木の坑道内で様々な微生物に発酵させ、再度摂食するというサイクルを繰り返して朽木の中の栄養素を徐々に吸収していくが、菌糸ビン飼育では単純に特定のキノコの菌糸体のみを消化吸収して、そこに蓄積された栄養素を利用しているらしく、生きた菌糸体の繁茂した部分が食い尽くされた段階で、新しい菌糸ビンに移さなければならない。
他にもビンではなくプリンカップを使ったものや、中身のみを取り替える菌糸ブロックも市販されている。この菌糸ブロックはキノコ栽培において、菌床栽培法と呼ばれているものに他ならない。
[編集] ブーム
[編集] 歴史
クワガタムシは、カブトムシと共に最も人気のある昆虫のひとつである。一昔前には、定期的に手入れされた里山の雑木林には普通に見られた。木を蹴ると、クワガタムシが驚いて脚をちぢこませて大量に落ちてくる性質を利用して採集をしていたというのは有名な話である。子供たちはクワガタムシに指を大アゴで挟ませて我慢比べをしたり、昆虫相撲をさせたりと、親しんでいた。成虫の飼育は行われていたものの、幼虫時の生態はあまり解明されておらず、意外にも累代飼育がなされることは殆どなかった。
こうして最近までクワガタムシはアマチュアの収集家や研究家は多かったものの、プロの研究者はほとんどおらず、十分マニュアル化された飼育繁殖技術はほとんどない状態であった。
クワガタムシのブームは、1986年に月間むしの「オオクワガタ特集号」に、詳しい採集方法や、累代飼育法が公開された事から始まったと言える。それまで一般には謎の昆虫だったオオクワガタは、生息地に行けば採れる可能性の高い昆虫になったが、同時に商業目的による乱獲も進んだ。当時公的機関の研究者は、害虫でも益虫でもなかったクワガタの飼育方法を知るものはほとんどいなかったが、オオクワガタの累代飼育技術を、アマチュア研究家の小島啓史が月間むしで公開し続け、1996年に著書「クワガタムシ飼育のスーパーテクニック」で日本産の主な種の繁殖飼育技術を公開したため、子供の頃クワガタムシに親しんだ世代を中心にオオクワガタのみならずクワガタ全体の飼育ブームが起きた。
特にオオクワガタは成虫の見栄えがよい大型種であるが、乱獲により野外での採集が困難になっており希少性が高かったこと、飼育技法の公開により、簡単に飼育下で繁殖可能であることが明らかになったこと、さらに成虫の寿命が長く数年に及び、ペットとしての愛着を持ちやすかったことなどがブームの背景となった。となってさらに飼育下でいかに見栄えよく大きな成虫を育てるかという競争が起き、ブームをより加熱させた。
こうして加熱したブームはより広がりを見せるようになり、様々な種の飼育繁殖を試みる愛好家も増えてより多様な飼育技術が考案され、また当初は愛好家自ら自作していた飼育資材を製造販売する専門業者も増加するに至って、日本における安定した趣味の一角を成すようになった。
こうして、以前はハイレベルのアマチュア研究家でなければ出来なかった累代飼育が初心者でも簡単に楽しめるような環境が形成され現在に至っている。
[編集] 問題点
こうした飼育ブームの過熱により、一部愛好家の圧力などによってそれまで植物防疫法によって生体での輸入が禁止されていた海外産のクワガタムシやカブトムシの輸入が解禁され、今日では数多くの海外産のクワガタムシやカブトムシが国内で飼育、繁殖されるに至っている。しかし、問題も多い。
様々な政治的判断や妥協(複数の昆虫学会で関係者によって述べられた例によると、WTOにおいて中国が日本の植物防疫法を非関税障壁と非難する事態を避けるために、生体植物を加害しなければ、植食性昆虫でも生体の輸入を許可するほど植物防疫法は寛容である、と言う言い訳のためにクワガタとカブトの輸入が許可されたとする説がもっとも有力)で解禁リストに加えられた種の中には、農作物に対する害虫となりうる危険が非常に高い種(パプアキンイロクワガタなどは、あらゆる草本・木本の花穂や頂芽を5分に1本の比率で切るため、モルジブに侵入した例では大害虫となっている)が含まれてしまっており、また金目のものなどに比べて国内への持ち込みに際して監視の目も弱いこともあり、解禁リストにない種でも平然と店頭で売られている実態もある。
また、飼育繁殖された海外産、或いは国内の他地域産のクワガタムシ、カブトムシが野外放虫されることにより、日本国内の生物群集、ひいては生態系の攪乱(遺伝子汚染)も懸念されている。実際に、東南アジアから大量に輸入されるオオヒラタクワガタは、日本在来のヒラタクワガタと亜種レベルでの相違しかなく、これらの交配個体と見られるクワガタムシが幾多も見つかっている。これは、モラルの低い愛好家の存在はもちろんのこと、全くの素人であっても海外種をデパートなどで簡単に入手し、飼育できてしまうがために、このような問題に関する知識に乏しい者が悪意なく「自然に返してやる」といった実情も指摘されている。
その他にも、海外産の輸入個体に伴って侵入したダニなどのクワガタムシの海外産寄生虫の国内進入が確認されていること、海外で保護生物とされて持ち出しが規制されている種の密輸出の問題が生じ、海外での逮捕者もでていることなどの様々な問題が引き起こされている。
一方で、生き物であるクワガタムシ、カブトムシを売買し、大きく見栄えある成虫を育て上げるべく競争が過熱していること、更にそれが小中学生の間でも広まっていることについて、生き物に対して間違った意識が広まってしまうのではないかとして、倫理上、教育上の観点からの批判も少なくない。最近ではムシキングの流行も話題になったが、同様に子供たちに生き物に対する間違った意識を植え付けることになるではないかと危惧する声が多く発せられた。
[編集] 俗語
通常海外産のクワガタムシの名前は、例えばフェモラリスツヤクワガタであった場合、後のほうの属名を省略し、単にフェモラリスと呼称することが多いが、有名であったり、属名を省略しても十分長いと感じられる名前を持つクワガタムシには、愛好家の間でのみ通じる略語が作られることがある。
- アンタエウスオオクワガタ→アンテ
- クルビデンスオオクワガタ→クルビ
- グランディスオオクワガタ→グラン
- パプアキンイロクワガタ→パプキン
- ローゼンベルギーオウゴンオニクワガタ→ローゼン
- マンディブラリスフタマタクワガタ→マンディ、マンディブ
- パラレリピペドゥスオオクワガタ→パラレリ
オオクワガタ属、ネブトクワガタ属などの黒っぽいクワガタムシを黒虫(くろむし)、ニジイロクワガタ、キンイロクワガタ属、ホソアカクワガタ属などの色彩が派手なクワガタムシを色虫(彩虫、いろむし)と呼ぶことがある。厳密な定義はないため、各人によってどのグループまで入れるかの考え方が異なる。
遺伝学で雑種のn代目を指すFnは、繁殖個体n代目という意味になる。繁殖個体はブリード物や新成虫などと呼び、それに対して採集された個体はワイルドなどと呼ぶが、時々F0とすることもある。ワイルドから繁殖させた個体はWF1と表記する。ワイルドではメスの場合自然下で既に交尾を済ませていることがおおいため、改めてペアリングをする手間が省けるが、羽化してからどのくらい経ったのかがわからないため、買ってすぐに死んでしまう可能性があるという欠点もあり、専門店ではブリード物かワイルドかの表示をするところが多い。
ハイブリッドは通常は雑種という意味であるが、同種、同亜種であっても他産地を掛け合わせた個体に用いられることがある。
普段別々に飼育している雌雄を同じケースに入れ、交尾をさせることをペアリングやカップリングという。雌雄セットで販売されている商品は「○○クワガタペア」などの表示がつく。
蛹室の欠陥などで羽化に失敗した個体は羽化不全と呼ばれ、翅がぐちゃぐちゃになった状態になる。羽化してすぐ死んでしまう新成虫も多いが、特に外傷がなければ通常の個体と変わらず生活をするものも少なくない。蛹室が狭く、大アゴが曲がってしまうこともある。これらは成長時の外的な影響によるものであるから奇形ではない。そのほかにも羽化不全ほどではないが、前翅に皺ができたり、ディンプルと呼ばれる小さな凹み、窪みができることがある。これらの羽化時の事故は大型個体ほど顕著であり、愛好家が大型個体の作出に血眼になるオオクワガタ類にも多く、よく彼らを落胆させる。
大アゴが太くなったクワガタムシ(主にオオクワガタ)は重量感があるとされ、極太と呼ばれる。こうした人気のある形状をしたクワガタムシは良形とされる。クワガタムシを大量に飼育し、形のよい成虫のみを選抜して血統管理をする飼育家も存在し、こうして作られた血統のものは高値で取引される。元木弘英の元木スペシャルや森田紳平の森田ゴールドがその例である。また、元木弘英は複眼が白化する現象ホワイトアイの血統を作ることに成功したと公言している。
ギネスブックとは直接の関係はないが、記録上大アゴの先端から尻までの体長が最大であった場合、ギネス個体という。死後は体長が1,2mm減少することが知られていることから、生体は体長に2mm引くなどと決められることもある。尚、記録を統一する機関は存在しないため、公式の記録ではない。専門雑誌や個人サイトの企画として行われることが多い。
[編集] 関連企業
[編集] 専門雑誌
- 月刊むし(むし社)
- 1971年3月に創刊。以後毎月20日毎に発売されている。掲載内容はクワガタムシに限らないが、新種、新亜種などの発表も多い学術的な雑誌である。クワガタ特集号が年に1回、オオクワガタ特集号が不定期に出ることがある。
- BE・KUWA(むし社)
- 2001年創刊。2,5,8,11月の25日に発売されている。
- KUWATA(ワイルドプライド)
- 1998年6月に創刊。年に3回発売されている他、1年毎に別冊が出されており、CLUB KUWATA会員用の会報誌「KIYORA」もある。寄稿による採集記、飼育記、飼育・採集・種の解説などが中心となる。
- ARMA(ピーシーズ)
- アルマと読む。2000年創刊。A4サイズに大きく載せられた美しい写真には定評がある。
- 昆虫フィールド(くぬぎ出版)
- 偶数の月の27日に発売されている。一部水生昆虫の記事もある。
- くわがたマガジン(東海メディア)
- 奇数の月の30日に発売されている。
- 趣味の昆虫(枻出版)
- 略称「趣味昆」。2001年11月20日創刊。一般書店にて購入できる数少ない専門雑誌だったが、既に廃刊している。
- KUGAMU(虫研)
- 1989年6月創刊。当初は年に4回発売されていた。今では殆どが絶版になり、虫研での入手となるが、総集復刻版とするものが1999年に出されている。
- ルカヌスワールド(環境調査研究所)
- 1997年4月創刊。偶数の月に販売していたが、2002年から頻度を減らして1,4,7,10月の発売となり、37号で休刊に至った。
- Breeder's(グッドコミュニケ-ションズ)
- 2002年3月創刊。奇数の月に発売されている。
[編集] 分類
[編集] クワガタムシ亜科 Lucaninae
- ミヤマクワガタ属 Lucanus - ミヤマクワガタ・ヨーロッパミヤマクワガタ・カンターミヤマクワガタ ミクラミヤマクワガタ オーベルチュールミヤマクワガタ ミヤマクワガタ アマミミヤマクワガタ
- オオクワガタ属 Dorcus - オオクワガタ・ヒメオオクワガタ・ヒラタクワガタ・コクワガタ・アンタエウスオオクワガタ・オオヒラタクワガタ・アルキデスヒラタクワガタ アカアシクワガタ サワイコクワガタ ネパレンシス
- ノコギリクワガタ属 Prosopocoilus - ノコギリクワガタ・ギラファノコギリクワガタ・アスタコイデスノコギリクワガタ・ゼブラノコギリクワガタ トレスノコギリクワガタ ウォーレスノコギリクワガタ タカサゴノコギリクワガタ ハチジョウノコギリクワガタ
- コツノノコギリクワガタ属 Aphanognathus
- オニクワガタ属 Prismognathus - オニクワガタ・キンオニクワガタ
- ヒメオニクワガタ属 Cladophyllus
- カンギアヌスオニクワガタ属 Eligmodontus
- トリアピカルスオニクワガタ属 Gonometops
- シカツノオニクワガタ属 Capreolucanus - シカツノオニクワガタ
- オウゴンオニクワガタ属 Allotopus
- ツヤクワガタ属 Odontolabis - アルケスツヤクワガタ・ラコダールツヤクワガタ・フェモラリスツヤクワガタ
- ホソクワガタ属 Leptinopterus
- クビホソツヤクワガタ属 Cantharolethrus
- ホソアカクワガタ属 Cyclommathus - メタリフェルホソアカクワガタ・ギラファホソアカクワガタ
- マルバネクワガタ属 Neolucanus - アマミマルバネクワガタ・チャイロマルバネクワガタ・マキシムマルバネクワガタ
- フタマタクワガタ属 Hexarthrius - パリーフタマタクワガタ・ブケットフタマタクワガタ・マンディブラリスフタマタクワガタ
- シカクワガタ属 Rhaetulus - ディディエールシカクワガタ・スペキオススシカクワガタ
- オオシカクワガタ属 Rhaetus - ウェストウッディーオオシカクワガタ
- クロツヤシカクワガタ属 Pseudorhaetusチュウゴククロツヤシカクワガタ
- ベトナムシカクワガタ属 Weinreichiusペロティシカクワガタ
- メンガタクワガタ属 Homoderus - メンガタクワガタ・グラディアトールメンガタクワガタ
- ヌエクワガタ属 Katsuraius
- オオツヤクワガタ属 Mesotopus - タランドゥスオオツヤクワガタ・レギウスオオツヤクワガタ
- チリクワガタ属 Chiasognathus - チリクワガタ
- シワバネクワガタ属 Sphaenognathus
- ハイイロクワガタ属 Cacostomus - ハイイロクワガタ
- コフキクワガタ属Casignetus - フンボルトコフキクワガタ
- ハワイハネナシクワガタ属 Apterocyclus - ハワイハネナシクワガタ
- チリハネナシクワガタ属 Apterodorcus - チリハネナシクワガタ
- ネブトクワガタ属 Aegus - ネブトクワガタ・アンプルスネブトクワガタ
- ニセネブトクワガタ属 Aegognathus
- ヒサゴネブトクワガタ属 Aegotypus
- サビクワガタ属 Gnaphaloryx
- キバサビクワガタ属 Eulepidius
- ヒサゴサビクワガタ属 Bartolozziolucanus
- インフラトゥスサビクワガタ属 Cherasphorus
- パリオロススサビクワガタ属 Tumidaegus
- ヒョウモンクワガタ属 Scortizus
- インカクワガタ属 Auxicerus
- サメハダクワガタ属 Pycnosiphorus
- ムネツノクワガタ属 Sclerostomus
- オノレクワガタ属 Onorelucanus
- ギアナクワガタ属 Charagmophorus
- コツノクワガタ属 Lissotes
- オオコツノクワガタ属 Lissapterus
- ヒメコツノクワガタ属 Paralissotes
- オオズコツノクワガ属 Geodorcus
- カギツノクワガタ属 Heterochthes - カギツノクワガタ・アンダマンカギツノクワガタ
- カタハリクワガタ属 Hoplogonus
- マルガタクワガタ属 Colophon - プリモスマルガタクワガタ
- コツメクワガタ属 Chewlucanus
[編集] ルリクワガタ亜科 Platycerinae
- ルリクワガタ属 Platycerus - ルリクワガタ・コルリクワガタ・ヨーロッパコルリクワガタ
- ニセルリクワガタ属 Platyceroides
- ムカシルリクワガタ属 Platyceropsis - ムカシルリクワガタ
- ツヤハダクワガタ属 Ceruchus - ツヤハダクワガタ
[編集] キンイロクワガタ亜科 Lampriminae
- ニジイロクワガタ属 Phalacrognathus - ニジイロクワガタ
- キンイロクワガタ属 Lamprima - パプアキンイロクワガタ・アウラタキンイロクワガタ
- ニセキンイロクワガタ属 Homolamprima
- ヒメキンイロクワガタ属 Eucarteria - ヒメキンイロクワガタ・ニセヒメキンイロクワガタ
- ムナコブクワガタ属 Rhyssonotus - ムナコブクワガタ
- ムカシクワガタ属 Dendroblax
[編集] イッカククワガタ亜科 Sinodendrinae
- イッカククワガタ属 Sinodendron - イッカククワガタ
[編集] マダラクワガタ亜科 Aesalinae
- マダラクワガタ属 Aesalus - マダラクワガタ
- ナンヨウマダラクワガタ属 Lucanobium
- ネッタイマダラクワガタ属 Echinoaesalus
- マグソクワガタ属 Nicagus - マグソクワガタ
- クシヒゲマグソクワガタ属 Ceratognathus
[編集] ツメカクシクワガタ亜科 Penichrolucaninae
- ツメカクシクワガタ属 Penichrolucanus
- ナンベイツメカクシクワガタ属 Brasilucanus
[編集] ツツクワガタ亜科 Syndesinae
- ツツクワガタ属 Syndesus - ツツクワガタ
[編集] チビクワガタ亜科 Figulinae
- チビクワガタ属 Figulus - チビクワガタ・マメクワガタ
- サメハダチビクワガタ属 Cardanus
- ユミアシチビクワガタ属 Amneidus - ユミアシチビクワガタ
- ヒョウタンクワガタ属 Nigidionus - ヒョウタンクワガタ
- ツノヒョウタンクワガタ属 Nigidius - ルイスツノヒョウタンクワガタ・グランディスツノヒョウタンクワガタ
- ニセツノヒョウタンクワガタ属 Novonigidius
- シシガシラヒョウタンクワガタ属 Dinonigidius - シシガシラヒョウタンクワガタ
- サソリクワガタ属 Platyfigulus - サソリクワガタ
- オオツツクワガタ属 Xiphodontus
[編集] 日本のクワガタムシ一覧
- オオクワガタ属 : オオクワガタ・ヒメオオクワガタ・ヒラタクワガタ・スジブトヒラタクワガタ・チョウセンヒラタクワガタ・コクワガタ・リュウキュウコクワガタ・アカアシクワガタ・スジクワガタ・ヤマトサビクワガタ
- ノコギリクワガタ属 : ノコギリクワガタ・ハチジョウノコギリクワガタ・リュウキュウノコギリクワガタ・ヤエヤマノコギリクワガタ
- ミヤマクワガタ属 : ミヤマクワガタ・ミクラミヤマクワガタ・アマミミヤマクワガタ
- ネブトクワガタ属 : ネブトクワガタ・オガサワラネブトクワガタ
- オニクワガタ属 : オニクワガタ・(ヤクシマオニクワガタ)・キンオニクワガタ
- マルバネクワガタ属 : アマミマルバネクワガタ・オキナワマルバネクワガタ・ヤエヤママルバネクワガタ・チャイロマルバネクワガタ
- シカクワガタ属 : アマミシカクワガタ
- ルリクワガタ属 : ルリクワガタ・コルリクワガタ・ニセコルリクワガタ・ホソツヤルリクワガタ
- チビクワガタ属 : チビクワガタ・オガサワラチビクワガタ・マメクワガタ・ダイトウマメクワガタ
- ツヤハダクワガタ属 : ツヤハダクワガタ
- ツノヒョウタンクワガタ属 : ルイスツノヒョウタンクワガタ
- マダラクワガタ属 : マダラクワガタ
- マグソクワガタ属 : マグソクワガタ
[編集] 参考文献
- 『検索入門 クワガタムシ』 岡本修治・山口進 保育社 ISBN 4586310324
- 『世界のクワガタギネス』 西山保典 木曜社 ISBN 4944207026
- 『世界のクワガタムシ大図鑑』 水沼哲郎・永井信二 むし社 ISBN 4943955010
- 『クワガタ飼育読本』 エイムック ISBN 4870994917
- 『世界のクワガタムシ 生態と飼育』 鈴木知之・福家武晃 株式会社環境調査研究所 ISBN 4998089242