QF 25ポンド砲
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QF 25ポンド砲(Ordnance QF 25 pounder)とは、第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期にイギリスが開発した野砲/榴弾砲兼用の野戦砲であり、榴弾以外にも対戦車用の徹甲弾が用意されている。なお、第二次世界大戦終結以前のイギリス軍には、主に直接照準で運用する対戦車砲や野砲の口径をその大砲用の標準榴弾の重量(単位はポンド)で表す習慣があり、一般的な砲弾の直径で表記する表記法では87.6mmとなる。
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[編集] 開発と運用
第一次世界大戦終結後、イギリス軍は18ポンド(84mm)野砲と4.5インチ(114mm)榴弾砲を更新・統合する目的でこの砲を開発したが、世界恐慌による財政難や第一次大戦以来の厭戦気分による軍縮により配備が進まなかった。その後、アドルフ・ヒトラー率いるナチスがドイツの政権を握り、オーストリアやチェコスロバキアの併合などのあからさまな領土拡大を行うようになるとイギリスも軍備の拡大を図り25ポンド砲の量産と配備が進められたが、安価にかつ早急に大量配備させるために初期型は18ポンド野砲用の砲架を流用したが、安定性に劣るために射程距離や連射速度などの性能低下を招いたため、後には25ポンド砲専用の砲架と組み合わされるようになった。
第二次世界大戦が始まると、25ポンド砲はイギリス以外にもカナダやオーストラリアでもライセンス生産され、イギリス連邦加盟国の主力野戦砲として生産配備された。装薬量を増量して初速を向上させること射程距離の延長や対戦車戦闘時に徹甲弾の威力を向上させることができるが、反動も強力なためにマズルブレーキを装着する必要がある。後の型では、固定式のマズルブレーキが標準装備となった。
イギリス軍では戦後も朝鮮戦争や第二次中東戦争などでも使用され、1960年代にL5(イタリア製のオート・メラーラMod56 105mm榴弾砲)に更新されるまで現役であった。アイルランドやキプロス、インド、スリランカ、ローデシア(ジンバブエ)、南アフリカなどで印パ戦争やトルコのキプロス侵攻、ローデシア内戦、南アフリカのアンゴラ侵攻などで実戦投入され、1980年代まで現役であった。現在でもアイルランドなどでは予備兵器として保管されているほか、各種儀式時の礼砲用に少数が運用されている。
[編集] 砲弾
25ポンド砲は金属製の薬莢を使用する薬莢砲であるが弾頭と薬莢は分離されており、射程に応じた量の装薬を薬莢に詰めてから弾頭をはめ込む半分離式の火砲である。
一般的な榴弾以外にも徹甲弾や煙幕弾、毒ガス弾などが用意されていたが、毒ガス弾は同砲において一度も使用されることはなかった。徹甲弾による対戦車戦闘任務はより装甲貫徹能力の高い17ポンド対戦車砲に譲られ、大戦後は25ポンド砲用の徹甲弾は粘着榴弾に更新された。
[編集] 派生形
- Mark.I
25ポンド砲の砲身と駐退複座機を、18ポンド野砲用のMk.V砲架に搭載した型。専用の砲架に搭載された後の型と比較して射撃時の安定性に欠けるため、射程距離や発射速度が劣る。ノルウェーにおける戦いや西方電撃戦、初期の北アフリカ戦線、マレー攻防戦などで運用された。1944年6月のノルマンディー上陸作戦では、ドイツ軍はノルウェーやフランスで鹵獲した25ポンド砲Mk.Iを上陸を敢行するイギリス軍の迎撃に使用したため、25ポンド砲同士の戦闘が行われた。
- Mark.II
25ポンド砲を同砲専用のMk.1砲架に搭載した型で、第二次世界大戦を通じて使用されたほか、カナダやオーストラリアでライセンス生産も行われた。装薬量を最大にして、野砲としての直接照準や対戦車戦闘を行う際にはオプションのマズルブレーキを取り付ける必要がある。
- Mark.III
Mark.IIの改良型で、高仰角時の砲弾装填を行いやすくしたほか、固定式のマズルブレーキを取り付けている。既存のMark.IIを改修したMark.IIIと、新規に製造されたMark.IVに分けられる。
- Short Mark.I
オーストラリアが独自に製造した派生形で、Mark.IIを短砲身化させてジャングルでの機動性を向上させた型。1943年に製造が開始され、ニューギニアなどの東南アジア、太平洋戦線における日本軍との戦闘に投入された。
- ビショップ自走砲
バレンタイン歩兵戦車の車体に25ポンド砲を搭載した自走砲。
- セクストン自走砲
カナダ製のラム巡航戦車の車体に25ポンド砲を搭載した自走砲。大まかな形状やレイアウトはアメリカ製のM7プリースト 105mm自走榴弾砲によく似ている。
[編集] 要目(Mark.II)
- 全長:5.53m
- 重量:1.8t
- 口径:87.6mm
- 砲身長:2.7156m(31口径)
- 仰俯角:-5°~45°
- 左右射角:4°
- 砲口初速:1,700フィート(518.16m)/秒
- 最大射程距離:13,400ヤード(12,252.96m)
- 発射速度:6~8発/分
[編集] 関連項目
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