3DCGソフトウェア
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3DCGソフトウェアとは、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を制作するためのソフトウェアである。
3DCGソフトウェアの分類は大まかに、形状の制作を行う工程(モデリング)に用いる「モデラー」と、画像を生成する工程(レンダリング)に用いる「レンダラー」に大別されるが、両方の機能を備えている統合型ソフトウェアも多い。また、アニメーションの動きを付ける為の補助ソフトウェアとして、Motion Builderのようなモーションキャプチャ用のソフトウェアもある。
3次元CADソフトウェアについては「CAD」を参照。
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[編集] 概要
3DCGが発案された当初は、3DCGは特殊用途にのみ用いられる技術であり、制作用のソフトウェアは数十万、または数百万と非常に高価で、一般人が手を出せるような物ではなかった。また、大量の計算処理を行う為、動作させるには非常に高価な高性能ワークステーションや専用のハードウェアが必要であった。しかし、時代が進むにつれコンピュータの性能が向上し、高性能なコンピュータが一般に普及する事により、3DCGの市場が拡大し、ソフトウェアの低価格化および高性能化が進んだ。
現在でも業務用途でのワークステーションや専用ハードウェアの需要がない訳ではないが、一般人でも芸術的素養と訓練次第で高品質な作品を制作出来る3DCGソフトウェアが、手に届く範囲の価格で入手出来るようになっている。さらに、高機能なソフトウェアだけでなく、ホビー用途として機能に制限を持たせ低価格化した物や、特定の用途に機能を特化させた物、個人によって開発された物、無料で利用可能な物など、多様な物が登場している。
[編集] 統合型製品の例
統合型はモデリング機能とレンダリング機能の両方を備えた物である。機能の片方もしくは両方の乏しいホビー向けの物もあるが、単体のモデラーやレンダラーとして専門的でない物はここに含めた。
並びは順不同である。Category:3DCGソフトウェアも参照のこと。
[編集] 商用製品
- 3ds Max(オートデスク社)
- Windows専用のハイエンド3DCGソフトウェア。
- 3Dアトリエ(マイクロネット)
- 国産による統合型ソフトウェア。初代はX68000版で、当初はモデラーであった。バージョンを重ねる度に機能が追加され、統合型ソフトウェアとして確立した。特長は、低価格ながらモデラー・レンダラー(SSE)・モーション・アニメーション機能などが、一通り用意されていること。国産なので、日本語がしっかりとサポートされている。また同社製品のWEB3Dである、3DXとの連携も可能である。
そもそもはゲーム製作会社であるマイクロネットが、自社製品のゲーム製作のために作ったツールという背景を持っているため、ゲーム用3Dキャラクタを作るのに向いているソフトであるとも言える。また、代表的なソフトで使われているファイル形式への変換可能なデータコンバーターを装備している。最新バージョンは3Dアトリエ4である。 - Hash Animation:Master
- 1987年にAmigasのために制作された(当時はPlaymationと称されていた)。現在はWindows用およびMac用。A:Mは非常によく考え抜かれたアニメーションワークフローの中で重要。2007年10月時点での現行版は14.0。「アニマス」などの略称で呼ばれる。
- Carrara
- 低額なのに高能力。おもに地形や風景・環境の作成に適したソフト。大気や樹林の設定も容易である。
- Cheetah3D
- 独Martin Wengenmayerが開発したMac OS X専用の3DCGソフト。一通りのモデリング、レンダリング、アニメーションが可能。
- Cinema 4D(MAXON Computer社)
- 高速なレンダリングエンジンを特色とする3Dアニメーションプラットフォーム。ラジオシティ、柔軟な剛体力学、3Dペイント/テクスチャマッピング、文字アニメーションツールおよびNPRレンダリングを持っている。基礎パッケージがほとんど中央の範囲特徴を含んでいる一方、高度なレンダリング、力学、文字アニメーションなどの機能を備えている。発売当初からレンダリングの速さが定評のソフトウェアである。
- Adobe Dimensions
- PostScript形式のベクトルデータをレンダリング出来る特徴を持つ。販売終了製品。
- Houdini(フーディーニ)Side Effects Software社のソフトウェア
- 現在主流の3Dソフトウェアと比較して、モデリング機能は劣るものの、高度なパーティクル生成機能があるため、現在の映画のVFXでも使用される。
- Lightwave 3D(Newtek社。日本での販売はディ・ストーム)
- 現在でもかなりの愛好者が居る。もとはAmigaのおまけソフトであったが、コモドール倒産以後は他のOSプラットフォームに移植されてきた歴史を持つ、老舗ソフト。
- Maya(オートデスク社)
- クロスプラットフォームのハイエンド3DCGソフトウェア。
- modo(Luxology)(日本の正規代理店は有限会社マーズ)
- Luxology社が開発。 開発は、Light wave 3Dの初期開発者が中心となって行っている
- 以前はモデリングに特化していたが,modo201からペイントとレンダリングが、2007年9月に発売されたmodo301では、3Dスカルプティング、アニメーションなどの機能が追加された。
- 2008年4月に発売されたmodo302では、modo301の機能強化とバグフィックスが、Physical Sun(Physical Sky)などの機能が追加された。
- PiXELS3D
- PiXELS Digital, Inc.によるMac OS X専用の3DCGソフト。モデリング、レンダリング、アニメーションが可能。
- RealSoft3D(Realsoft Graphics社)
- LinuxおよびWindows用およびMac OS X用モデラ及びレンダラ(SGI/IRIX用のβ版も発売されている)。アニメーション作成も可能。本ソフトウェアも元はAmiga向けであった。
- Shade(イーフロンティア)
- ベジェ曲線による「自由曲面」を用いるのが特徴的。日本産のソフトウェアと言うこともあり、おもに日本で支持を得ている。静止画の美しさには定評がある反面、高度なアニメーションを製作するには不向きとされる。
- Softimage XSI(avid社)
- ハイエンド3DCGソフトウェア。
- Strata
- Corastar社が開発。操作が簡単なわりに高能力なのが大きな特徴。また、Adobe製品との連携性が非常によい。
- Caligari trueSpace
- 直感的なインターフェースを備えた、統合型3DCGソフトウェア。3Dグラフィックス生成がすべて単一のプログラム内に実行される点が特徴的。物理シミュレーション(例えば風、重力、身体衝突)を提供する。日本版はかつて住友金属システムソリューションズ(SMI)が提供していたが、現在は英語版のみ。本ソフトウェアも元はAmiga向けであった。
- Electric Image Universe
- Electric Imageが開発した高速な3Dレンダラの1つを備えたモデラ。アニメーション作成も可能。
- 六角大王Super
- 純日本産による、モデリングソフトウェアおよびレンダラ。個性的なインターフェースであるが、比較的わかりやすく、トゥーンレンダリング機能とアニメーション機能が搭載されており、それなりの支持を得ている。機能が限定されたフリーウェア版がある。
[編集] 非営利または個人による物
- Steve Glanville Anim8or
- 基本的なモデリングおよびアニメーションを実行することができるフリーウェア。基本的なレイアウト機能も持っているが、Anim8orの長所はアニメーションのためのボーンを使用できるところにある。
- Blender
- 現在では無料のソフトウェアだが、高性能である。かつては商用ソフトであったが、紆余曲折を経てフリーソフトとなった。
- DoGA CGA system
- 民間の非営利団体PROJECT TEAM DoGA(ドーガ)によって開発・提供されている、アマチュア・教育現場向けのモデリング・レンダリングソフトウェア。CGアニメーションを広く一般に普及させることを目標に、当初はX68000用として開発され、後にWindows用に変更された。2005年現在、一般向けのDoGA-Lシリーズ、教育現場向けのDoGA-Eシリーズがリリースされている。Lシリーズ及びEシリーズでは、用意された多数のパーツをプラモデルのように組み立てていくスタイルであるが、上位のL3などではメタセコイアなど外部モデラーでモデリングした物体もインポート可能。
- Moonlight
- Blenderと双璧と言われた時期もあるLinux用のフリーモデリングソフトウェアおよびレンダラ。Windows + Cygwin上で稼動すると言われている。開発は中断しているものの配布は継続している。
- Rios
- 国産のレンダリングソフトウェア。上記のモデリングソフトであるMetasequoiaとの互換性を維持し、基本的なモデリング機能も備える。レンダリングに関しては、フォトンマップ法、間接光フォトンマップ法、ファイナルギャザリング、パストレーシングなど豊富な技法を取り揃えている。また背景にHDRI(High Dynamic Range Image)が利用でき、フリーソフトでありながら非常にリアルな結果を得ることができる。
[編集] モデラー製品の例
モデラーはモデリング機能に特化した物である。簡易的なレンダリング機能を持つ物や、プラグインモジュール等により高度なレンダリングが可能になる物もある。
[編集] 商用製品
- Amapi
- NURBSモデリングツールを備えたモデラー。
- Form-Z
- 幾何学の位相幾何学の操作を提供する。
- Hexagon
- スカルプトモデリングや3Dペイントを備えたポリゴンモデラー。
- Moray
- 後述のPOV-Ray用モデラ。
- MudBox
- ペイント感覚でモデリング可能である。
- Rhinoceros 3D
- NURBSモデリング機能を備えたモデラ。
- Silo[1]
- 米Nevercenter社が開発。モデリングに特化したアプリケーション。レンダリング機能は搭載されていない。トポロジーブラシを使ったモデリングが特徴的。
- ZBrush
- Pixologic社が開発。本来は2Dに3DのZ値や法線・マテリアル・レンダリングなどの概念を持ち込んだ2.5Dペインティングソフトウェアという位置づけであったが、画材生成用として備えられた3Dモデリングの機能性からモデリングソフトウェアとしても用いられている。勿論単体でも高度なペイント処理が可能。映画『ロード・オブ・ザ・リング』を制作したWeta デジタルスタッフとの共同開発によって進歩しており、ハイエンドな3Dモデルを短時間で作成することが可能になっている。
[編集] 非営利または個人による物
- Metasequoia(メタセコイア)
- 日本人のプログラマが個人開発している、無料またはシェアウェアのモデリングソフトウェア。シェアウェア版向けには、多数の造型用プラグインが発表されている。地味ながら、プロにも愛好家が多いソフトとして知られている。
- Wings 3D
- Bjorn Gustavssonが開発した、プラットフォームとOS非依存であるオープンソースモデリングプログラム。またErlangオペレーティング環境の下で実行される。このプログラムは、様々な一般に用いられているフォーマットでモデルをエクスポートすることができる。
- 六角大王(フリーウェア版)
- 左右対称に描かれたラインから三次元形状を生成する機能を持つ、モデリングソフトウェア。市販バージョンの六角大王Superがある。
[編集] レンダラー製品の例
レンダラーはレンダリング機能を提供する物である。単体動作可能なアプリケーションではなく、プラグインモジュールとして提供されている物も多くある。
[編集] 商用製品
- Electric Image Animation System(EIAS)
- Mac OS XおよびWindowsで動作するアニメーションレンダリング用ソフトウェア。
- Brazil Rendering System
- SplutterFish社が開発したレンダラー。
- Callisto
- 主にShadeで利用される高速レンダラー。Shade内蔵のレンダラーよりも詳細な設定が可能。
- Gelato
- NVIDIA社が開発した、GPUの処理能力を利用したレンダラー。無料版と有料のGelato Proがある。
- Maxwell Render
- 正確な光のシミュレーションを指向したレンダラー。光エネルギーをスペクトルによって扱う。
- mental ray
- ハイエンド(high-end)クラスのソフトウェアにはあらかじめ入っていることが多いレンダラーである。
- RenderMan(ピクサー社)
- 最先端の現場で使われることが多いレンダラーのひとつ。
- V-Ray
- 3ds MaxとMayaに使えるサードパーティのプラグインでこれも最先端の現場で使われることが多いレンダラーのひとつ。2007年9月現在trueSpace(7.5以後)でも使用可能な製品が販売されている他、 Cinema 4Dへの対応製品(「V-Ray for CINEMA 4D」)の発売が予定されている。
[編集] 非営利または個人による物
- lucille
- Mac OS X、Linux、Windowsで動作する、オープンソースの国産レンダラー。
- Parthenon Renderer
- GPUの処理能力を利用した無料の国産レンダラー。
- POV-Ray
- 先進的レイトレーシングソフトウェア。マクロ、ループおよび条件付きのステートメントのような特徴を備えた、独自の場面記述言語を使用する。オープンソース。内蔵のモデラを含んでいない。
- Warabi
- 国産のトゥーンレンダラー。Metasequoia用のプラグインがある。
- Yafray
- LGPLライセンスに準拠したオープンソースのレンダラー。BlenderやWings 3D等から利用出来る。
[編集] 特定用途特化・その他製品の例
このセクションにある物は、特定用途での利用に特化された物である。
[編集] 商用製品
- DAZ Bryce 6
- 3D景観生成向けソフトウェア。GUI、3Dテクスチャの自動生成機能、基礎的なブーリアンモデリング、メッシュモデルインポート機能および基本的なアニメーションを特色とする。
- Poser
- 人体や動物の静止画・動画を作成することに特化した、低額の商用ソフトウェア。人物・動物のモデルが標準で付属している。Alias WavefrontのObJectファイル(拡張子はOBJ)・他をインポートすることができる。
Poserはオリジナルのメッシュオブジェクトの生成機能を備えていないが、ホビー用に多数の素材を無料・ないし有料で提供している大規模なオンラインコミュニティーが多数存在している。 - Vue(e-on Software社)
- 3D景観作成向けソフトウェア。フォトリアリスティックな景観を作成するために特化した高度な機能と、レンダリング品質を特色とする。
- 造型王
- モデリングと言う概念を完全に廃し、関節を含む体の各部位のパーツと髪、服、アイテムを組み合わせることで人形を作成する、純日本産ソフトウェア。Poserをさらに単純、抽象化したものと言えよう。販売元はメディアギャロップ社。
[編集] 非営利または個人による物
- UVMapper
- テクスチャマッピングに用いるUV座標の編集を行うソフトウェア。
- Terragen
- 3D景観ソフトウェア。空気感を再現した非常にリアルな画像が作成可能。
- 2007年1月Terragen 2が発表された。無償であるが、機能制限がない商用版もある静止画像のみ$199 アニメーション機能付$299。