鰍沢河岸

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鰍沢河岸（かじかざわかし）は、山梨県南巨摩郡鰍沢町にあった河岸。黒沢河岸（市河三郷町、旧東八代郡市川大門町）や青柳河岸（南巨摩郡増穂町）とともに甲州三河岸と呼ばれ、近世に開発され甲斐国と駿河国間の物流を結ぶ富士川水運の拠点。三河岸の主力として江戸時代初期から明治30年代を盛期に昭和初期まで機能した。

鰍沢は甲府盆地の南西端に位置し、国中地方と河内地方の境に近い。盆地を南流する釜無川と笛吹川の2大河川をはじめとする中小河川が合流し富士川となる地点で、東西を巨摩山地と御坂山地に挟まれ、鰍沢以南は川幅が狭くなり富士川谷を形成している。鰍沢河岸は富士川右岸の柵に囲まれた一角で、同じ左岸上流に青柳河岸、対岸の右岸上流に黒沢河岸が位置する。山側には陸路で甲駿を結ぶ駿州往還（河内路）が平行して通り、鰍沢は陸上交通とも関係した要衝になっている。

[編集] 富士川水運と鰍沢河岸の盛衰

富士川水運は年貢米の江戸廻送を目的に、角倉了以が富士川を開削して開始された（開始時期は慶長12年～19年まで諸説）。寛永9年（1632年）には一般物資に加えて御廻米が開始され、国中三郡からの年貢米を集積して江戸へ向けて廻送される（年代は青山靖による）。甲斐一国が幕府直轄領として四代官の分割支配になると、鰍沢河岸には甲府代官所管轄下の北山筋・逸見筋地域の年貢米が集積されていた。集積された年貢米は岩淵河岸（静岡県庵原郡富士川町）、蒲原（同郡蒲原町）を経て清水港（静岡市）から江戸へ送られ、最終的には浅草蔵前に集積された。

帰り船では商人荷の積載が許され、塩や海産物など甲州にとっての重要物産はじめ米穀や身延参詣客などの人員や物資を輸送した。国中地方が徳川家の直轄領になると、寛永9年（1632年）には一般物資に加えて御廻米が開始され、後に信濃国の諏訪藩、松本藩、高遠藩の年貢米も集積され広域流通圏の拠点となり、河岸の北側には鰍沢宿が発達し問屋街が立ち並んでいた。河岸には御米蔵のほか検査所や詰所などの施設で構成される御蔵台があり、南端には口留番所が設置されており、ｌ出向した代官が人や物資の往来を監視していた。

明治以降は廻米の回送が行われなくなったが、1875年（明治8年）には富士川運輸会社が創立され明治30年代まで盛期は続いた。その後、中央本線や富士身延鉄道（身延線）などの近代的な鉄道整備の影響を受け、水運は衰微する。

[編集] 河岸跡の発掘調査

鰍沢河岸跡は富士川の護岸工事や堤防工事などの水防対策事業、国道整備や国土交通省関東地方整備局による甲西道路建設（国道52号改修工事）に際して山梨県埋蔵文化財センターによる発掘調査が行われており、1996年（平成8年）の白子明神護岸工事、平成12年～15年、平成16年の調査を経て主要施設である御蔵台や問屋街の様相が判明している。

中核施設である御蔵台は矢来で区画された南北40間、東西30間の敷地に諸施設が配置されており、柵に囲まれていたことを示す杭列が検出されている。石積台で周辺より一段高く、水害のたびに嵩上げされていた。前庭跡からは荷積台跡が検出され、周辺からは陶磁器などの遺物が出土しているが、赤瓦が出土しており「甲州鰍沢河岸御蔵台之図」など文献上の記述と符合している。また、出土陶磁器は大半が江戸後期のものであることから、江戸前期の御蔵台が別所にあり移転された可能性も指摘されている。

ほか、問屋街や河岸へ至る道路跡や水路跡、明治期の運送会社建物跡なども検出されている。

出土遺物では江戸時代から明治大正期に至る陶磁器やガラス製品、寛永通宝や文永通宝、天保銭などの銭貨類や甲州金、家内安全を祈願した泥面子などが出土した。また、問屋街の大半を消失したという文政4年（1821年）の鰍沢大火は陶磁器の焼け跡から確認され、砂の堆積した層から数次の洪水があったことも確認されている。

また、2007年には元禄一分判金が出土し、県内では甲府城跡の慶長一部判金に続く一分金の出土例となった。

現在は甲西道路が建設されているが、出土遺物や石垣を再現したレプリカが山梨県立博物館において常設展示されている。