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高坂昌信 - Wikipedia

高坂昌信

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

高坂昌信 凡例
時代 戦国時代
生誕 大永7年(1527年
死没 天正6年5月7日1578年6月12日
改名 春日源助、源五郎、昌信、香坂虎綱、
春日虎綱
別名 逃げ弾正、昌宣、昌忠、高坂昌信
戒名 保雲椿公禅定門
憲徳院玄菴道忠居士
墓所 明徳寺(長野県長野市
恵林寺山梨県甲州市
主君 武田信玄武田勝頼
氏族 春日氏香坂氏高坂氏
父母 父:春日大隈、養父:香坂宗重
兄弟 春日熊麿、高坂昌信
正室:香坂宗重の娘
昌澄昌元、昌定

高坂 昌信(こうさか まさのぶ)は、戦国時代武将武田氏の家臣。正しくは、春日虎綱(かすが とらつな)。また、元服直後の名前は春日源助という。武田信玄、武田勝頼の2代に仕え、武田四名臣の一人として数えられる。

こうさか」の正しい漢字は「高坂」ではなく「香坂」であるが、同姓を称したのは永禄年間の短期間で、まもなく春日姓に復している。一生の殆どを「春日虎綱」でありながら「高坂昌信」の方が有名な点について、晩年出家した際の法号が伝わっていないことから、虎綱の法号が「昌信」であって、それが後世に伝わっているのではないかと言われている。

目次

[編集] 生涯

[編集] 仕官

大永7年(1527年)、甲斐石和の豪農・春日大隅の子として生まれる。天文11年(1542年)に父大隅が死去した後、姉夫婦との遺産を巡る裁判で敗訴して身寄りが無くなった折、武田信玄の奥近習として召抱えられた。

[編集] 信玄時代

信玄のもと、当初は使番(単なる伝令役ではなく、側近・幹部候補生的存在)として仕えるが、やがて戦功をあげて信玄の信頼を得る。信濃平定戦における小岩岳城攻略戦では一番乗りの功績を挙げ、天文20年(1551年)に騎馬100騎持の侍大将に任じられた。天文21年(1552年)には150騎持に加増され、春日弾正忠と名乗った。天文22年(1553年)に小諸城代、永禄3年(1560年)には海津城代となり、越後上杉氏に対する最前線の守将を任されると同時に新領地の安定に尽力した。

永禄4年(1561年)の第4次川中島の戦いでは、妻女山攻撃の別働隊として戦功を挙げ、引き続き北信濃の治世にあたった。なお、この戦功により、信玄から信濃の名族・香坂(高坂)氏の名跡継承を許されて香坂姓を称した。その後も元亀3年(1572年)の三方ヶ原の戦いなど、武田氏の主だった戦いに参戦している。

[編集] 勝頼時代

元亀4年(1573年)4月の信玄死後も海津城代として北信濃と上杉謙信の抑えを担当したが、他の老臣たちと同じように武田勝頼からは疎まれていたとされる。天正3年(1575年)の長篠の戦いには参戦せずに海津城を守備していたが、敗報を聞くや兵を率いて伊奈にて勝頼を出迎え、衣服・武具などを替えさせる等、敗軍の見苦しさを感じさせないように体面に配慮したと伝わる。なお、この戦いで嫡男昌澄が戦死している。

この戦いによって、信玄以来の老臣で生き残ったのは昌信のみとなった。昌信は勝頼を補佐して武田氏の再建に努めたが、特に織田信長の脅威に対抗するため、宿敵であった上杉謙信との同盟を模索したと言われている。

天正6年(1578年)5月7日、海津城にて病死した。享年52。

[編集] 子孫

家督は次男昌元が継いだ。天正10年(1582年)の武田氏滅亡後、海津城を守っていた昌元は上杉景勝を頼ったが、本能寺の変直後に北信濃での自立を画策する真田昌幸との内通が発覚して景勝に処刑された(内通に激怒した景勝によって斬殺されたともいわれる)。

その結果、高坂氏の嫡流は滅亡した。

甥に春日惣次郎がいる。

子孫に格闘家の高阪剛がいる。

[編集] 人物・逸話

  • 美貌であった昌信は若き信玄の衆道の相手も務め、信玄が昌信宛に送った浮気の弁明状が現存している。昌信が異例の出世を遂げたのも、信玄の愛情ゆえとの説がある。
  • 武勇に秀でる武田諸将の中において、昌信は治世面に高い手腕を有すると共に、非常に慎重な采配と見事な退却戦指揮能力で『逃げ弾正』の異名を取った。三方ヶ原の戦いでは大勝に急いて追撃を主張する家臣団の中、状況を冷静に分析して深追いは避けるよう進言するなど、抑え役の面を持っている。このため、家臣団の中では随一の智将と評されている。
  • 細かい気配りの出来る仁者であり、川中島では敵味方問わず手厚く葬り、上杉方への死者の引渡しも礼を尽くして協力したと言う。
  • 江戸時代に編纂された甲州流軍学の教書『甲陽軍鑑』は、高坂弾正が著者という体裁をとっている。甲陽軍鑑において、高坂の功績・活躍は他の武将たちと較べて控えめに書かれていることが多いが、昌信に関する記述は脚色の可能性が高いので注意が必要とする人もいる(但し、これは甲陽軍鑑全体にいえることであり、昌信に限ったことではない。一般的に甲陽軍鑑は史料性が低いといわれるが、箇所によっては当時の書状などの一次史料と照合した結果、かなり正確な部分もある。しかし、一次史料と照合した結果、明らかな間違いな部分も含んでおり、何れにしろ読み進めるには注意が必要である)。
  • 甲陽軍鑑については、昌信が原本を作成した後、彼の死後に甥の春日惣次郎らが書き継ぎ、さらに江戸時代になってから軍学者小幡景憲によって現在の形に編纂されたという説、小幡景憲自身が箔をつけるために、高坂弾正に仮託して執筆を行ったとする説がある(但し、甲陽軍鑑には甲斐独特の表現が含まれており、なんらかの原本があったことが示唆されている)。また、世に出た時期が徳川時代であったことから、徳川家を始め、武田遺臣で幕臣の有力者の先祖等に関する記述が多い。
  • 「虎綱」という名から、昌信の仕官は武田信虎治世の時期であった可能性も高い。
  • 余談だが、武田家が凋落していく原因になった長篠の戦いにて、真っ先に戦場を離脱した穴山信君武田信豊に関し、主君勝頼に提出した意見書で両者に切腹させるように申し立てるほど、冷静沈着とされる昌信が怒りを露わにした非常に希有なこともあった。


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