電気分解
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電気分解(でんきぶんかい, electrolysis)は、化合物に十分に高い電圧をかけることで電気化学的に酸化還元反応を引き起こし、化学分解することである。その結果電流が流れる。略して電解ともいう。全く同じ原理であるが、分解ではなく、合成を意図した場合には電解合成と言われる。
例えば、イオン性化合物(電解質)を溶解した水溶液に十分に高い電圧をかけることで、水中の物質と電極との電子のやり取りが一方的に有意な速度で進行するようになり、電極上に金属として析出したり、あるいは気体として発生したりという現象が起こる。有意な反応速度を得るためや、選択的な反応を起こすためにはしばしば電極触媒が必要となる。
電気分解の解説では、しばしば「電流が流れるために分解が起こる」といった文章が見受けられるが、誤りである。電気分解が起こるために電流が流れる。従って、電気分解に必要な電圧(例えば水の電気分解であれば理論的には1.23V以上、実際には1.5V以上)が掛けられていない時は電気二重層を形成するため以外の電流は流れない。 電気二重層コンデンサはこの性質を利用したものである。
一般に溶媒は水以外の物質も多く用いられ、アセトニトリルなどの有機溶媒から、さらにはアルミニウムの精錬であるホール・エルー法やナトリウムの生産でみられるように、常温では固体の物質を加熱し融解したもの(融解塩)の中で電気分解を行うこともある。これを融解塩電解という。
電気分解をするときに必要なものは、直流電源、電気分解させたい物質を含む溶液、電源に接続する電極である。電源の負極と接続した電極を陰極(カソード、cathode)と呼び、正極と接続した電極を陽極(アノード、anode)と呼ぶ。また、電気分解を行う反応槽を電解セルという。ちなみに、電池では負極がアノードと呼ばれ、正極がカソードと呼ばれる。
また、電気分解する水溶液を入れるものには、ホフマン型のものや塩類の電気分解に使われるU字管がある。
[編集] 水の電気分解の例
以下に中性での水の電気分解の例を示す。水素の単体と酸素の単体(どちらも気体)が発生し、水が分解される。
アノード(陽極)では
カソード(陰極)では
この2式をまとめた電気分解の全反応は
これからわかるように、アノード(陽極)では電子を放出する反応(酸化)が、カソード(陰極)では電子を受け取る反応(還元)が進行する。