退学
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退学(たいがく)とは、児童・生徒・学生が、卒業・修了を待たずに学校を辞めること(自主退学)、あるいは辞めさせられること(懲戒退学、退学処分)をいう。
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[編集] 日本
以下の種類がある。いずれの場合も、学生証の返納など幾つかの手続きを必要とする。
[編集] 退学の種類
[編集] 自主退学と懲戒退学
自主退学(じしゅたいがく)は、児童・生徒・学生及びその保護者の意思で退学することである。児童・生徒・学生と場合によってその保護者の連名により退学願が出され、それぞれ各学校での規定による審議、承認を得て許可される。
懲戒退学(ちょうかいたいがく)とは、性行不良で改善の見込がないと認められる者、学力劣等で成業の見込がないと認められる者、正当の理由がなくて出席常でない者、学校の秩序を乱しその他学生又は生徒としての本分に反した者、のいづれかに該当する者に対する懲戒処分で、校長、学長(あるいは学部長、研究科長)がこれを行う。学校教育法施行規則には懲戒退学理由として学費未納は列挙されていないが学費未納は学則によって除籍事由となる。一般に「学校をクビにされる」とはこのことを指す。学校教育法第11条に基づき発動される懲戒権の一つ。学校によっては、退学処分や放学と称することもある。
[編集] 中途退学と満期退学
中途退学(ちゅうとたいがく)とは、修業年限として定められている期間を在学せずに退学することである。中退(ちゅうたい)と略されることもある。「中途に学校を辞めた」ことを強調するニュアンスで用いられることが多い。
満期退学(まんきたいがく)とは、修業年限として定められている期間以上を在学したものの卒業または修了に至らないまま退学することである。特に大学院の博士後期課程・後期3年博士課程、一貫制博士課程などを退学した際に用いられることがあり、「単位取得退学」などのように、修了に必要な単位を修得していることも付記することが多い。1980年代以前は、博士学位請求論文を提出しても博士論文として認められない場合がそれなりにあり、学生は、論文を提出した後に、博士の学位が授与されるという修了を迎えないまま退学した。このような時、大学院の博士後期課程・後期3年博士課程、一貫制博士課程などに在学し、研究指導を受けていたことを表すために満期退学と表記されることがある。
中途退学は、自主退学・懲戒退学のいずれの場合でも用いられ、満期退学は、通例、自主退学の場合のみ用いられる。
[編集] 退学をめぐる背景
[編集] 教育段階と退学の状況
- 義務教育の公立学校(公立の中高一貫校の場合は不明)においては、外国の学校へ移る場合や学齢(満15歳に達した日の属する学年の終わり)を超過し本人の希望がある場合などに退学の扱いとなることがある。このような事由以外では、一般に退学処分を行うことはできない(学校教育法施行規則第13条第3項)。主に校則の厳しい私立中学校などにおいては、「転校勧奨」などの名称で、退学に等しい処分が行われる場合もある。
- 高等学校の場合だと、退学の例も見られる。現在の日本においては、いじめや各種の学校不適応などの問題から高等学校を退学することも生じやすく、1990年代以降は、退学後に学校で再度学ぶこともなく就職も行わない者(=ニート)が増加しているともいわれる。この場合だと、就職や進学に不利となるのが一般的である。また、就職の際に提出する履歴書にも、退学の学歴を記載しなければならない場合もある。近年では学歴や大学ブランドよりも個人の素質や実力を重視した募集を行う企業が増えている。なお、高等学校を卒業する前に退学した者が大学に入学しようとする際は、通例、高等学校卒業程度認定試験(高認。旧「大検」こと大学入学資格検定)に合格する必要がある。この認定試験に合格すると、大学に入学できる資格を得ることができる。2006年度の文部科学省の調査では合格者の約半数が大学、短大、専門学校に進学したという結果も出ている。(2007年05月15日発表 [1])
- 学校サイドによる退学処分とすると、当該の学生または生徒の将来の進路を阻むことになってしまう。また学校側のイメージが下がるということもあり、進路変更による退学や自主退学、または転校と処理することがある。各種統計における退学者の人数は氷山の一角に過ぎない。時にはそれが自主退学や転校の強要、無期限停学にして出席日数が足らずに留年、退学させるケースにつながることもある。強要罪が適用されたり、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められることもあるので、注意が必要である。この場合、子ども専門の相談窓口を設けている弁護士会や法務局で相談することができる。
- 一部の大学では、優秀な学生が、通常の課程では3年以上、医学・歯学・獣医学・臨床に関わる薬学を履修する課程では4年以上在学することで、大学院に、1年または2年早い段階で進学できる場合がある。このとき、早期卒業制度がある場合は、卒業することができるが、早期卒業制度がない場合は、大学を退学しなければならない。
- バブル崩壊後の1990年代以降では、高等学校や大学などの区別なく特に私立学校においては、倒産や失業、リストラなどで親が学費が払えずにやむなく退学するケースが増えている。2007年の高校野球の特待生問題では、奨学金の廃止により学費や部費、活動費が払えずに退学者が増えてしまうのではという懸念の声が上がった。
[編集] 退学に対する評価
退学をした場合、企業を初めとする社会などから「目標を達成できない者」という評価を受ける場合が比較的多いといわれる。日本の場合、初等教育の課程(小学校の課程など)や前期中等教育の課程(中学校の課程、中等教育学校の前期課程など)では、義務教育が行われているため、退学の例はめずらしい。ただし、現代と義務教育年限が異なり複線教育制が行なわれていた第二次世界大戦前の教育制度においては、退学も相応に見られた。
大学を中退した場合も、社会的には大学卒業者よりも下位に見られる傾向にある。しかし、「日本の大学は、入るのが難しく、出るのは易しい」とも言われていることもあり、いわゆる一流大学に入学した時点で、ある程度の評価を受けることもある。
大学在学中に、司法試験や国家公務員試験(従来の外交官試験を含む)に合格し、卒業を待たずに司法職や公務員職に就く場合がかつては、まま見られた。こうした場合にも大学は中退となる。
大学教員などの研究職に進む場合にも、大学院博士課程を修了する前に、職に就く場合があり、大学院中退が特に修了者に比べて下位に置かれることはない。
[編集] 中国
中国では、出産を理由とした退学処分が行われていた(学生の結婚、出産が2003年まで禁止されていたため)。政府は2007年8月に、既婚学生の出産を理由とした退学はしてはならないと規定し、併せて出産前後の休学を勧告した[1]。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ 『出産理由の退学処分を禁止=既婚学生の権利認める』2007年8月4日付配信 時事通信