近南極星区
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近南極星区（きんなんきょくせいく）は、それまで中国では観測されなかった三垣二十八舎に含まれない天の南極周辺の領域のことである。『蘇頌星図』 の 「渾象南極圖」 でも、この領域は空白で何も描かれていなかった。
明末期の崇禎帝の時世にイエズス会士アダム・シャール（湯若望）が徐光啓らとともに編纂した天文書 『崇禎暦書』 には、この領域に西洋の星表に基づいた23個の星官が追加されている。ヨハン・バイエルの 『ウラノメトリア』 の影響が大きい。近南極星区にある星官は、『明史』 天文志にも見えており、また、徐光啓が作成した2番目の星図 『赤道両総星図』 のほか、南懐仁の 『霊台儀象志』 や清代になって成立した戴進賢の欽定 『儀象考成』 にも取り入れられている。
[編集] 星官
| 星官 | 現行星座 | 星数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 海山 | りゅうこつ座、ケンタウルス座、はえ座、ほ座 | 6 | 『ウラノメトリア』 ではアルゴ座の左側に大きな岩山が描かれている。 |
| 十字架 | みなみじゅうじ座 | 4 | 南十字星に該当する。 |
| 馬尾 | ケンタウルス座 | 3 | ケンタウルス座南部の後半部（尾部）のことか。 |
| 馬腹 | ケンタウルス座 | 3 | ケンタウルス座南部の前半部（腹部）のことか。 |
| 蜜蜂 | はえ座 | 4 | 『ウラノメトリア』 では Apis（蜜蜂座）と描かれている。 |
| 三角形 | みなみのさんかく座 | 3 | みなみのさんかく座のα星、β星、γ星。 |
| 異雀 | ふうちょう座、はちぶんぎ座 | 9 | エキゾチックな鳥。 |
| 孔雀 | くじゃく座 | 11 | |
| 波斯 | インディアン座、ぼうえんきょう座 | 11 | 地名。なぜかインドではなくペルシャ。 |
| 蛇尾 | はちぶんぎ座、みずへび座 | 4 | みずへび座の尾部。 |
| 蛇腹 | みずへび座 | 4 | みずへび座の胴体。 |
| 蛇首 | みずへび座、レチクル座 | 2 | みずへび座の頭部。 |
| 鳥喙 | きょしちょう座 | 7 | 鳥のくちばし。 |
| 鶴 | つる座、きょしちょう座 | 12 | |
| 火鳥 | ほうおう座、ちょうこくしつ座 | 10 | フェニックスのこと。 |
| 水委 | ほうおう座、エリダヌス座 | 3 | 「委」はエリダヌス座の初音？ |
| 附白 | みずへび座 | 2 | 小雲座（小マゼラン雲）のこと。 |
| 夾白 | かじき座、レチクル座 | 2 | 大雲座（大マゼラン雲）のこと。 |
| 金魚 | かじき座 | 5 | シイラのこと。縁日等で売られているいわゆる金魚ではない。 |
| 海石 | りゅうこつ座 | 5 | 海山に同じ。 |
| 飛魚 | とびうお座 | 6 | |
| 南船 | りゅうこつ座 | 5 | 南方にある船の星座の意味か。 |
| 小斗 | カメレオン座 | 9 | 星の並びが鉤型で北斗七星に似ているからか。 |
