ヨハン・バイエル
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ヨハン・バイエル(バイヤー、Johann Bayer、1572年 - 1625年)はドイツの天文学者。1603年にアウクスブルクで全天恒星図『ウラノメトリア』Uranometriaを発刊したことで知られる。
ウラノメトリアがそれ以前の恒星図と異なっていたのは、北半球で見ることのできない南天の星座を収録してあったこと、そして、可能な限り恒星に名をつけたことである。この命名法は、バイエル符号と呼ばれ、現在でも使われている。
ふうちょう座、カメレオン座、かじき座、つる座、みずへび座、インディアン座、くじゃく座、ほうおう座、みなみのさんかく座、きょしちょう座、とびうお座の11星座を決定した。このほか、はえ座にはち座と名づけた者をバイエルとする説もある。
バイエルは南洋航海の経験がない。このことから、これらの星座は、バイエル以前から広く使われていたと考えられている。真の設定者は1596年に没したオランダの船員ペトルス・テオドルス(Petrus Theodorus)だと言われる。
[編集] バイエル符号
バイエルは、ある規則をもとに恒星を命名した。この命名法による名をバイエル符号、バイエル記号、バイヤー記号)などと呼ぶ。この命名法は現在も使われている。命名法は下記のとおり。
星座ごとに、明るい順にギリシャ文字で順にα星、β星、と順に名づける。例えば、おうし座で一番明るい星は、おうし座α星(α Tauri)というようになる。ギリシャ文字は24文字なので、25番目に明るい星は、ローマ文字のA、以下b,c,d,eと順に命名した。a星をとばしたのは、α星との混同を防ぐためと考えられている。50番目の星はz星となり、次はローマ文字の大文字でB,C,Dと名づけた。ただし、バイエルが命名したのは最高でQ星までで、それ以上この命名法で名づけられる星はなかった。R以降の文字は、変光星の命名に使われる。のちにジョン・フラムスティードが、バイエルが命名しなかった暗い星も含めて、フラムスティード名と呼ばれる名前を付けた。
バイエル符号以外の恒星の命名法については、恒星の項目をも参考のこと。
バイエルの時代、星座の境目ははっきりと決まっていなかった。のちに星座同士の境界線が厳格に決定されたときに、隣の星座に移された星も若干ある。このため、バイエル符号がαから順ではなく、飛び飛びになった星座も存在する。また、必ずしも明るい順になっていない例もある。