軍属
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軍属(ぐんぞく)とは、軍人(武官または徴集された兵)以外で軍隊に所属する者のことをいう。
一般に、以下に例示するような職務に従事する者が軍属であるとされるが、国や時代、政治体制などによる差異が非常に 大きく、一概にその職務内容を定義することは困難である。
- 軍事行政や主計・法務などの事務的業務(軍隊の重要事務であり、軍人が中心となって行うことも非常に多い)
- 国際公法関係の法務業務
- 通訳
- 技術部門の研究・開発
- 軍の学校・教育機関等の教官で一般教養科目や語学等を担当する者(軍事関係科目の教官は武官であることがほとんどであるので混同の無いよう注意が必要である)
- 車両・航空機や機械・資機材類の保守点検・整備
- 軍需物資の輸送業務(実際は軍隊の最重要課題であり、軍人による輸送部隊が中心となって行うことも非常に多い)
- 軍事施設の建設や維持管理
- 基地・駐屯地や艦艇内の売店や食堂等の営業
- その他様々な後方支援業務
ただし、職務内容で軍人、軍属を分ける方法はもはや時代に適合していない。例えば、ベトナム戦争における直接戦闘に関わる兵員はアメリカ軍の中の約3割に過ぎず、現在のイラク戦争においても大体同じくらいの割合であり、戦闘に直接関わらない兵員のほうが圧倒的に多い。軍隊という巨大組織の運用にかかること、および軍事技術が軍事衛星の運用やロジスティクスなどを含め極めて高度に先端化していることを鑑みると、組織運用及び専門知識にかかる兵員の比率は不可避的に高まっていくであろう。すなわち、現在の軍隊において勝敗を決するのは、もはや戦闘部隊の勇猛さなどではなく、官僚制機構及び専門家集団としての間接部門の兵員の優劣にかかっているのである。つまりかつての「軍属」的内容を職務とする兵員が「軍人」の中核をなしているのである。
また軍人であって技術部門の研究・開発に従事する者(技術士官)や輸送(輜重兵)、事務(主計官)、法務(法務官)、車両・航空機や機械・資機材類の保守点検・整備を任務とする者(整備兵)等も存在する事に留意しなければならない。軍人である技術士官と軍属の技官が同時に存在するような場合も珍しくない。
軍属には軍法(旧陸軍刑法・旧海軍刑法・その他外国における同様のもの)が適用された(あるいは、「される」)。また国や時代によっては軍服に相当する制服や階級章類を着用する場合もある。
[編集] 参考例・大日本帝国海軍の軍属
大日本帝国海軍では、軍艦には、雇人(ようにん)と総称される理髪師や洗濯夫が搭乗していた。 (ただし、厳密には雇人は正規の軍属ではない。食堂の営業のような場合、概ね責任者のみが軍属であり一般従業員は雇人となる。) 彼らは艦内編制上「運用科」に所属し戦闘時は応急処置に動員された。 その他「歯科担当艦」とよばれた軍艦には歯科医が搭乗しており、「奏任官扱い」つまり士官に準じる身分・待遇で勤務していた。 なお、彼らは文官もしくは嘱託職員の身分であった。 その後太平洋戦争の激化に伴い、一部の軍属の文官から武官への転官が行われた。 法務官→法務士官、歯科医→歯科医官、技手(読み方は「ぎて」、技官・技術者のこと)→技術士官などである。
また軍属は戦闘には積極的には関与しないが、戦闘によって死亡すると戦死とされ靖国神社に合祀されるのは軍人と同様であり、特に著しい功績があった際には軍人と同様に金鵄勲章が授与されることもあった。 その他、軍人の物とは異なる独自の制服・制帽・階級章が制定されていた(これらの点は旧陸軍の軍属も同様である)。
徴用を受けた商船の船員の場合、海軍と船会社の契約にもとづいて派遣された関係であり、太平洋戦争中期までは非軍属の民間人という取り扱いがされていた。しかし、1943年(昭和18年)1月に行われた閣議決定により、陸海軍の徴用船員は、原則として軍属とすることに変更された。戦時中にこのような変更がされたため、恩給などの待遇に隔たりが生じた。なお、戦後の戦傷病者戦没者遺族等援護法においては、1953年の改正により、民需船舶船員も含め船舶運営会船員は一律に「軍属」として支給対象に含まれることとなった。
(従軍)慰安婦問題等に関連し、従軍看護婦等の従軍とは軍属の身分を表すものであるとの風評が一部にあるがこれは誤りである。 従軍看護婦は婦長等の管理職を除いて軍属ではない。また、従軍記者が軍属でないことも同様である。 (一定期間以上の軍歴がある軍属に対しては、恩給が支給される。しかし、通常の従軍看護婦はその対象外であるため、従軍看護婦への援護措置が立法化され、一定年数在職した旧陸海軍従軍看護婦に対しては、国が出資し赤十字社を通して慰労給付金(年金)が支給されている。)
[編集] 現在の日本の自衛隊の場合
自衛隊では、「制服組」と一般的に呼ばれる自衛官とは別に、「背広組」と呼ばれる防衛省の職員がいる。身分はあくまで防衛省に所属する公務員(文官)であり、いわゆる「軍属」に単純に比定する事はできない。現行制度上は「軍属」身分は存在しない。シビリアンコントロールを前提とする日本では、国家安全保障の計画立案における中心は「国民の代表者」たる「政治家」(文民)であり、「背広組・官僚」(文官)と「制服組」(自衛官)は専門家として助言等を行うにとどまる。 (→詳細は防衛省、自衛隊、自衛隊員、自衛官 の項目を参照のこと。)
なお現在の日本の自衛隊においては、旧日本軍と異なり自衛官以外の防衛省・自衛隊職員に制服・階級章類は制定されていない。ただし職務の内容によっては自衛官の被服に準拠した作業服およびこれに類する被服が着用されることはある。