行政対象暴力
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行政対象暴力(ぎょうせいたいしょうぼうりょく)とは、暴力団その他の反社会的勢力が、金銭や各種の利権その他の経済的利益を供与させるために、地方公共団体その他の行政機関又はその職員などを対象として、威力等を背景に違法又は不当な要求を行う行為一般のことで、対行政暴力(たいぎょうせいぼうりょく)ともいう。
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[編集] 概説
大まかに言えば民事介入暴力の類型の一つであり、脅迫によって義務のないことを行わされる点では同一のものであると言える。大きく異なるのは、行政機関に対して金品の直接的な要求だけではなく、不適切な公権力の行使(行政指導あるいは許認可)を求めるケースが多い[1]点にあり、その結果的、被害者たる行政機関(あるいは行政機関の職員)が不適切な公権力の行使により新たな不法行為を犯すおそれがある。その後さらに、このことを理由にしてさらなる不当要求をされるおそれもある。そのようなことが起これば、一般的に行政に求められる無謬性、効率性、公平性等が損なわれ、行政機関の統治機構としての正統性が低下することになる。
また、行政対象暴力は、民事介入暴力に比べて新たに発生した問題[2]であるため、比較的対策が遅れていたが、企業対象暴力への対応を参考とし、弁護士会等と連携して講習を行い、さらに、不当要求への組織的な対応を規定したコンプライアンス(法令遵守)条例や要綱を制定する動きが見られ[3]、対策が進められている。
一般には暴力団などが実体のない政治団体(右翼標榜暴力団)などの肩書きを隠れ蓑に要求を通そうとするケースが多く、これらについては基本的には暴力団対策法により対処が行われることになる。
[編集] 具体的な手口
- 同和団体などを装い、機関紙、雑誌その他の出版物の購入を強要する。
- 許認可、行政指導、監督その他の権限などを自己又は第三者に有利な形で行使するように強要する。市民活動団体・政治団体などを装う場合もある。
- 公共工事現場や公道の管理瑕疵により発生したトラブルなどに対し、必要以上の補償を求める。
[編集] テロリズムとの類似及び差異
テロリズムとは、暴力等による恐怖又は不安によって目的を達成しようとする点で類似しているが、テロリズムは、「広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」[4]とされているように、思想的あるいは政治的目的の達成のためになされるのに対して、行政対象暴力は、経済的利益を供与させることが目的である点で、テロリズムと行政対象暴力は異なっている。
しかし、最終的な目的が経済的利益を供与させることであっても、その目的を達するために首長や上級公務員等の政策立案過程や行政裁量に暴力で介入するような場合(例えば、緊縮財政実現のために公共事業を削減しようとしている市長に、その政策実現によって利益が損なわれる者が、暴力団等に依頼して政策の実施中止を目的として暴力の行使に及んだような場合)、首長や上級公務員等の政治的思想信条等を暴力によって不当に抑圧することで経済的利益を供与させることを実現しようとすることになるため、このような事例では経済的利益を目的としていても単なる行政対象暴力の枠のみならず、広義のテロリズムということができるとの意見もある。
[編集] 脚注
- ^ 平成15年警察白書には、行政が受けた不当な要求行為の形態として、行政指導等の要求が14.6%、許認可等の決定に関する要求が13.8%(複数回答)との調査結果があり、不適切な公権力の行使を促す要求が少なくないことが分かる。
- ^ 警察白書において「民事介入暴力」の語は昭和54年から確認できるが、「行政対象暴力」の語は比較的最近の平成12年から確認できる。平成11年以前の警察白書において行政は主にフロント企業の公共事業からの排除に関して触れられている。
- ^ 平成18年警察白書第三章第二節によると平成17年末で87.9%の地方公共団体がコンプライアンス条例又は要綱を制定している
- ^ 警察庁組織令第三十八条第四号 法令データ提供システム
[編集] 参考文献
- 警察白書 警察庁 昭和48年版から平成18年版までの暴力団関係の項目
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 行政対象暴力の現状 - 北海道警察
- 暴力団ミニ講座その42 - 松江八束建設業暴力追放対策協議会