蛇腹剣
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蛇腹剣(じゃばらけん)とは刀剣の一形体。鞭剣(むちけん)とも言い、英語ではSnake Swordと呼ばれる。いわゆる一般の剣としての形状と、刃の部分を蛇腹状に分割した鞭状とに変形させられる。想像上のものであり、現実には存在しない架空の武器である。
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[編集] 概説
通常、柄の部分に形状を変えるための機構があり、これを操作することで剣状と鞭状とを行き来する。刃は「折る刃」式カッターナイフのように複数に分断した構造を持ち、それぞれがワイヤーなどで連結されている。ワイヤーが巻上げられた状態では剣状を維持し、これを緩ませることで刃はばらばらになり鞭状をなす。
剣としての切れ味と鞭としての中距離攻撃性能を兼ね備えた武器であるが、これはあくまでも机上の話であり、現実にこうした構造が成功した例は歴史上これまでには存在しない。なぜならば鞭状になった刃を巻上げて素早く、かつ支障無く剣状に戻すといった仕組みは困難であることに加え、分割された刃は剣としての切れ味を維持できず、また、鞭状にすることで刃の角は複数になり、刃こぼれが著しくなり、その意味でも剣としての性能には限界があるからである。更に、仮にこれらの問題を回避できたとしても、そのような形状の鞭は到底思い通りに振り回すことはできず、武器としてはまったく扱えないであろう。これらの理由により、「蛇腹剣」は現実には実現し得ない武器なのである(刀身を持たない多節棍であれば、簡単な操作で一本の棍棒と多数の節を持つ形態に分割・結合できるものは実在する)。
[編集] 創作上での扱い
アニメ『機甲界ガリアン』で登場したものが初出であるとされる。この作品と直接の関係のない文脈上でも、蛇腹剣を指して「ガリアンソード」「ガリアン剣」といった語が使われることも少なくない。
実在しない武器であるため正式名称というものが存在せず、「蛇腹剣」以外にも、「多節剣」「ウィップソード」「連結刃」等、作品によって様々な造語による呼称が用いられる。
先述の通り物理的には実現が困難であること、形状が独特であること、使うさまに特徴があることから、基本的には特殊な武器としての位置付けが与えられやすい。作中世界での最先端技術や、何らかのオーバーテクノロジー、あるいは魔法の力が込められている等、万人に使えるものではないという設定が敷かれている作品も多く見られる。
[編集] 蛇腹剣の使い手とその登場作品
傾向としては、蛇腹剣の使い手は敵役・悪役として登場することが多い。蛇腹剣を操る姿は新体操のリボン種目を連想させるような優美さ・華麗さがあるためか、女性キャラクターも目立つ(鞭が悪役女性の定番武器であること、また蛇が女の魔性を連想させることも関連している)。
[編集] アニメ
- 夏侯惇ギロス (BB戦士三国伝)
- 蛇骨剛剣<じゃこつごうけん>を使用する。
- ガリアン(機甲界ガリアン)
- 古代のオーバーテクノロジーによって作られた機動兵器。腕に蛇腹剣が内蔵されている。
- ガンダムエピオン(新機動戦記ガンダムW)
- 左腕部に「ヒートロッド」として装備されている。刃物としての鋭さではなく刃の発する高温で対象を溶断するという設定。のちにトールギスIIIという機体において伸縮・格納機能が追加された改良型が装備されている。
- シグナム(魔法少女リリカルなのはシリーズ)
- 長剣・連結刃・弓矢の三形態に変形し、魔法の発動媒体としても使用できる剣「レヴァンティン」を持つ。蛇腹剣に該当する連結刃形態は「シュランゲフォルム」と称され、この名前は日本語に直訳すると「蛇の形」といった意味になる。シリーズ第2期『魔法少女リリカルなのはA's』のオープニング・第五話・第七話でその姿を見ることができる。
- 藤乃静留(舞-HiME)、シズル・ヴィオーラ(舞-乙HiME)
- 刀身が蛇腹化する薙刀型のエレメント(高次物質化能力によって召喚する武器)を使用する。斬ることも絞めつけることも可能。
- ミレディー(アニメ三銃士)
- 小ぶりの剣、柄をひねって剣から鞭へ状態を変えることができる。本項の一覧の中では機甲界ガリアンに次いで古い事例。
[編集] 漫画
- 阿散井恋次(BLEACH)
- 斬魄刀「蛇尾丸(ざびまる)」を持つ。蛇腹剣には珍しく、西洋風の両刃剣ではなく日本刀。
- 蛇骨(犬夜叉)
- 蛇骨刀を持つ。蛇の様にうねりながら遠くの敵を一振りで倒す。ただし敵に懐の間合いに入られると、素早く刃を戻すことが出来ない(出来ても自身を斬ってしまう恐れがある)為、接近戦には弱い。
- ジョイ(新暗行御史)
- 単行本9巻に登場。双剣の使い手で、二振りの蛇腹剣を同時に操る。
- 盗賊の頭(CLAYMORE)
- 「隼の剣」と呼ばれる蛇腹剣を得物とし、一般人には全く見えない速度で剣を振り下ろすことができる。
- ヒュンケル(DRAGON QUEST -ダイの大冒険-)
- アバンの使徒の1人で剣の達人。「鎧の魔剣」という鞘が鎧に変形する魔剣を所有しており、兜に剣を装着すると柄が口元を覆うマスクとなり、刀身が鎖状の剣となって持ち運べる。蛇腹剣としての使用も可能だが、兜に装着しているため、頭を振るいながら操る事になる。
- マカパイン・トーニ・シュトラウス(BASTARD!! -暗黒の破壊神-)
- 彼の持つ剣「罪人の剣」は「ガリアン・ソード」とルビが振られ、『機甲界ガリアン』を意識したパロディになっている。
- 圓円(天上天下)
- 剣士の頂点に立つといわれる一族の当主であり、単行本11巻収録の68話と69話で蛇腹剣を用いた戦闘を行っている。彼女が使用した蛇腹剣は、両手剣並みに幅広で長大な刀身と、分裂した刃を繋ぐワイヤーが二本通されている構造が特徴。鞭状態にした剣を脚に巻きつけるという工夫により、スカートの下に大型の武器を隠して持ち歩くことを可能にしている。
- レクリモーザ聖騎士団の団長(ゾンビ屋れい子)
- 主人公・姫園れい子の前世である女騎士団長が、蛇腹剣を武器としていた。劇中では鞭らしい動きはあまりなく、敵に突き刺してから遠心力で振り回す使い方をされている。
[編集] ゲーム
- アイヴィー(ソウルシリーズ)
- 機械仕掛けの剣に、魔術で命を吹き込んだ武器「ヴァレンタイン」(アイヴィーブレード)を操る。
- 使いこなすには複雑な操作を要求されるテクニカルキャラクターであり、一部の技は驚異的な射程を備え、他に類を見ない奇抜な技も見せる。
- 彼女を代表するコマンド技「収束する世界(マイトアトラス)」は、剣のワイヤーがすべて外れ、分離状態になった全ての刃が宙を舞い次々に敵を攻撃するというもの。ゲーム中で最高クラスの威力を誇る投げ技だが、同時に1,2を争うほど難解なコマンドを必要とする。
- イグニス(ザ・キング・オブ・ファイターズ)
- 剣ではないが、彼が持つワイヤー状の武器。
- 蛇腹剣としては不明瞭だが、名前が「ガーリアンソード」であり、刃物のような性質を持つものとしてここで挙げる
- ジャック・ブラン(鬼武者3)
- 剣の名前は「炎蛇剣」。炎の力を宿している鬼の武器。
- S・ガイスト(アシュラブレード)
- 一人プレイ時の最終ステージでラスボスとして登場。蛇腹剣による攻撃は非常に攻撃範囲が広く、その技性能は圧倒的だが、対人戦では使用できない。
- ジャンヌ・ダルク(ワールドヒーローズ)
- 剣の名前は「バスタードバスター」。「フラッシュソード」「ジャスティスソード」「スラッシュウィップ」等の技で鞭状態に変形する。
- 竹中半兵衛(戦国BASARA2)
- 作中では「関節剣」の名称で登場。武器によっては万国旗や円錐形のものもある。
- ディー(ブランディッシュ4)
- プレイヤーキャラクタの一人。鞭で攻撃、篭手で防御、胸当てを装備する。魔法は使えないものの、通常攻撃の射程の点で大きなアドバンテージを持つ。
- プレイ終盤、条件を満たすことで最強武器「ガリアンソード」を入手できる。
- リース・アルジェント(英雄伝説「空の軌跡 the 3rd」)
- 七耀教会騎士団の武器の一つとして「法剣(テンプルソード)」という名で登場。上記のアイヴィー同様に、刃が分裂して飛び回る範囲攻撃技「インフィニティ・スパロー」を発動できる。
[編集] 小説
- クオ・ヴァディス・パテル(魔術士オーフェン)
- 刃が破片状に散り太刀筋を延長する短剣「星の紋章の剣」を持つ。魔術の力をもった武器であり、連結を必要とせず攻撃範囲は限りなく広いが、破片の絶対数が限られているため、範囲を広げると攻撃精度が落ちてしまうという欠点もある。
- コンヴィクト(スクラップド・プリンセス)
- 蛇腹剣を二刀流で使う邪剣使い。ただし同時には使わず、右手の蛇腹剣を使用不能にされるまで左手は隠していた。右が使えなくなった後で、不意打ちの形で左手の剣を使用。
- ジェイス(ラグナロク)
- 「切り裂くもの(ツェアライセン)」という名の蛇腹剣を持つ。蛇腹剣を使うようになる以前は、モーニングスターを武器としていた。シリーズ第7巻『ラグナロク7 灰色の使者』では、表紙と挿絵で刀身を分裂させている姿がイラスト化されている。
[編集] 映画
- ジャン=フランソワ・モラジアス(ジェヴォーダンの獣)