華流
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華流(ホアリョウ、ファーリュー)とは、香港、中華民国、中華人民共和国などをはじめとする中国語文化圏における大衆娯楽文化の流行を指すための言葉。日本のメディアが、韓国の大衆娯楽文化の流行を指す「韓流」に対応する語として作り出した。
華流の英語表記は“hua liu”で、中国語での発音は“ホアリョウ”だが、日本では“ファーリュー”が一般的に浸透している。
[編集] 概要
「華流」に含まれるのは、中華民国、香港、中華人民共和国、更にシンガポールやマレーシアなども含んだアジアの中国語文化圏全体である。範囲が広いだけに、その内容は非常に多彩と言える。
中華民国(台湾)に限定して「台流」、香港に限定して「港流」と言う場合もあるが、例えば中華民国の俳優が中華人民共和国制作のドラマに出演したり、その逆があるなど、中華民国と中華人民共和国のように、政治的、外交的には対立関係にあるものの、芸能分野においては中国語文化圏の各国間での交流が非常に頻繁であり、区別するのが難しいという現状がある。そのため、大きな括りとしての「華流」が主に使われている。
「華流」は中華民国、香港、中華人民共和国など、それぞれの国や地域ごとに特色を持ち、恋愛を中心とした青春群像ドラマ以外にも、武侠ドラマや歴史ドラマ、そしてドラマ以外の映画や音楽なども支持を受けているのが特徴となっている。
ただ、文化コンテンツを基幹産業として育成しようという国策に基づき、韓国政府の後押しの下に推進された側面を持つ韓流とは異なり、華流はそれぞれの特定の政府の後押しを受けてはおらず、各種メディアで取り上げられる度合いも小さなものに留まっている。
[編集] 日本における華流
日本では、従来から香港や中華民国など、中国語文化圏の芸能には一定の人気があり、李小龍(ブルース・リー)や成龍(ジャッキー・チェン)などのカンフー映画やアクション映画、ジュディ・オング、欧陽菲菲、アグネス・チャン、テレサ・テンらの人気女性歌手たち、霊幻道士や幽幻道士(テンテン役:劉致妤)などのキョンシー作品が流行したこともあった。
2000年以降では、周星馳(チャウ・シンチー)の『少林サッカー』や『カンフーハッスル』、梁朝偉(トニー・レオン)と劉徳華(アンディ・ラウ)が共演した三部作『インファナル・アフェア』など香港映画が日本でも話題になると、それに合わせて香港のコメディー映画や、ジャッキー・チェンの昔の映画などがテレビで放映されたこともあった。
「華流」という言葉が使われ始めたのは、2005年の初め頃からである。メディア関係者が、韓国の韓流に対応する言葉として作った言葉と見られる。その先駆けとなったのが中華民国で製作された、いわゆる「台湾ドラマ」であったため、当初は「台流」も使われていたが、中華人民共和国の武侠ドラマも人気を博するなど、他国の要素も出てきたために次第に「華流」に集約されつつある。
「華流」が生み出された背景には、日本のBSデジタル放送の開始に伴うコンテンツ不足にあったとされる。今では中華民国や香港、中華人民共和国の数多くのドラマがBSデジタル放送で放映されており、地上波での放送も行なわれるようになりつつある。
華流という言葉は、従来から知られていた芸能人に対しても使われているが、「華流」と共に新しく有名になった芸能人としては、中華民国のアイドルグループであるF4などがいる。ただ、各種メディアには単発的に紹介されるに留まっているのが現状である。
2006年現在、各種ドラマがBSデジタルやCSでの放送、インターネット配信へ続々と進出しており、また中華民国や香港、中華人民共和国の芸能人で、日本市場への進出を計画している者が少なくないことから、今後大きな流行に発展する可能性を残している。
目下、華流を牽引しているのは、F4が主演した『流星花園』を皮切りに、ロイ・チウ主演の『星が輝く夜に』や、鄭元暢主演の『薔薇之恋』、『イタズラなKiss~惡作劇之吻~』などに代表される中華民国の青春恋愛ドラマと、『天龍八部』など不思議な物語と多彩なアクションを特徴とする中華人民共和国の武侠ドラマである。