絡新婦の理
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『絡新婦の理』(じょろうぐものことわり)は、京極夏彦の長編推理小説・妖怪小説。京極堂シリーズ第五弾である。
目次 |
[編集] 出版経緯
[編集] 書籍情報
- 新書版 ISBN 4-06-181932-1
- 文庫版 ISBN 4-06-273535-0
- 分冊文庫版
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
刑事、木場修太郎は、近頃世間を騒がせている「目潰し魔」の捜査に奔走するうち、榎木津との共通の友人で映画会社を経営する川島新造が何らかの手がかりを持っているのではないかと踏む。しかし彼は「蜘蛛に訊け」との謎の言葉を残して行方をくらませる。
聖ベルナール女学院の生徒、呉美由紀と渡辺小夜子は、学院内に飛び交う噂話を追ううちに、望めば人殺しさえ行う悪魔「蜘蛛」と、それを崇拝する「蜘蛛の僕」の存在を知る。教師、本田幸三から数々の性的暴行を受けていた小夜子は半ば勢いに任せ、「本田を殺してくれ」と「蜘蛛」へ叫ぶ。そんな時、美由紀らはかつて「蜘蛛の僕」の一員であった麻田夕子と接触する。彼女は「蜘蛛」が本当に居ること「蜘蛛の僕」とは売春をはじめとした神への冒涜行為に手を染めた生徒たちだということ、そして「蜘蛛」に願ってしまったのならもう後戻りは出来ないということを語る。彼女の言葉に激昂した小夜子は暗闇の校舎へと飛び出してしまった。彼女を追いかけて、校舎の屋上へとたどり着いた美由紀らは、そこで本田の無残な絞殺体を目撃する。それを見た小夜子は精神の均衡を失い、屋上から空中へと身を躍らせる。
伊佐間一成は、釣りに訪れた房総半島の興津町で呉仁吉という老人と意気投合する。漁師であった彼の「収集物」の価値を精算すべく伊佐間は、旧知の間柄である今川雅澄を招請する。折りしも近在の旧家、織作家の大黒柱、雄之助の葬儀の最中であり、織作家の使用人である出門耕作から「ついでに、残った骨董品の精算もしてもらいたい」と請われ、今川と伊佐間は連れ立って「蜘蛛の巣屋敷」と渾名される織作の屋敷へと赴く。そこで彼らは織作家の次女、織作茜の夫で、出門の一人息子でもある織作是亮が、着物をかぶった謎の人物に縊り殺されるのを目撃する。
[編集] 登場人物
主要登場人物は京極堂シリーズを参照。
[編集] 聖ベルナール女学院
- 呉 美由紀(くれ みゆき)
- 2年生。水産会社社長令嬢。親友の渡辺小夜子の身を案じて行動するうち、学院内で起こった事件の容疑者に仕立てあげられてしまう。
- 渡辺 小夜子(わたなべ さよこ)
- 2年生。網元の娘だが家が傾き、本田幸三に暴行されるようになる。本田を酷く憎み、噂に聞いた呪いを掛けて殺したいと願い、実行する。
- 麻田 夕子(あさだ ゆうこ)
- 2年生。代議士の娘だが 、売春をしていた。
- 坂本 百合子(さかもとゆりこ)
- 1年生。聖ベルナール女学院に伝わるという、「黒い聖母の呪い」を美由紀と小夜子に教える。
- 本田 幸三(ほんだ こうぞう)
- 聖ベルナール女学院の教師。渡辺小夜子に暴行をしていたが、満月の晩に学院の屋上で絞殺体で発見される。
- 柴田 勇治(しばた ゆうじ)
- 柴田家の養子で柴田財閥総帥。前は聖ベルナール女学院で理事長を勤めていた。物腰柔らかな好青年。
[編集] 織作(おりさく)家
- 織作 真佐子(おりさく まさこ)
- 雄之助の妻で、紫・茜・葵・碧ら四姉妹の母親。
- 織作 紫(おりさく ゆかり)
- 織作家の長女。生まれつき病弱で、物語開始時点で既に故人。
- 織作 茜(おりさく あかね)
- 織作家の次女。夫である是亮の乱暴な態度と雑言に耐える貞淑な妻。
- 織作 葵(おりさく あおい)
- 織作家の三女。女性の権利向上の為の活動をしており、発言は常に論理的で厳しい。
- 織作 碧(おりさく みどり)
- 織作家の四女。聖ベルナール女学院2年生。天使のような風貌と振る舞いで、他の者の尊敬を集めている。
- 織作 雄之助(おりさく ゆうのすけ)
- 織作家の当主で真佐子の婿。突然の病で亡くなったため、毒殺の噂も流れている。
- 織作 是亮(おりさく これあき)
- 茜の婿で聖ベルナール女学院の理事長。織作家の次期当主と目されていたが、無能な人物で、今は一族中から冷ややかな目で見られている。そんな境遇から自暴自棄になり、茜に辛く当たっている。
- 織作 五百子(おりさく いおこ)
- 織作家の最古老にして四姉妹の曾祖母に当たる。高齢のためほぼ寝たきり状態。茜に世話されている。
- 出門 耕作(でもん こうさく)
- 織作家に古くから仕える、朴訥で忠実な使用人。是亮の父親でもある。
- 奈美木 セツ(なみき セツ)
- 織作家の若い家政婦。織作家に来たのは一昨年まで勤めていた睦子(むつこ)が辞職してしまった為。そそっかしくお喋り。それゆえか、出会って間もない伊佐間に「セッちゃん」という愛称で呼ばれている。
- 続編の『百器徒然袋――風』にも登場。
[編集] 左門町婦女目潰し殺人事件関係者
- 矢野 妙子(やの たえこ)
- 第一の被害者。犯人が借りていた家の大家の娘。何かと犯人を気に掛けていた。
- 川野 弓栄(かわの ゆみえ)
- 第二の被害者。房総にあるクラブ『渚』のママ。売春組織とも繋がりがある。
- 山本 純子(やまもと すみこ)
- 第三の被害者。聖ベルナール学院の教師。厳格で生徒から嫌われていた。婚約者がいたらしい。
- 前島 八千代(まえしま やちよ)
- 第四の被害者。呉服屋の女将。過去に売春をしていた。
- 前島 貞輔(まえしま さだすけ)
- 前島八千代の夫。妻の浮気を疑い尾行する。
- 多田 マキ(ただ マキ)
- 前島八千代の遺体発見現場だった連込宿の女主人。したたかな老婆。
- 高橋 志摩子(たかはし しまこ)
- 第五の被害者。米兵に暴行された事により離婚され、街娼になり今に至る。
- 平野 祐吉(ひらの ゆうきち)
- 元彫金工。精神科医時代の降旗の患者。仕事道具のノミで次々と女性の目を潰す目潰し魔として指名手配されている。
[編集] その他
- 杉浦 美江(すぎうら みえ)
- 杉浦隆夫の妻。旧姓は伊藤。腑抜けた夫に愛想がつき、別居中。織作葵に感化されて離婚を考えるようになり、失踪中の夫を探すため薔薇十字探偵社を訪れる。
- 杉浦 隆夫(すぎうら たかお)
- 元小学校教師。ふとした事がきっかけで子供が怖くなり、職を辞して引きこもるようになる。妻が家を出た後もそのまま暮らしていたが、失踪してしまう。
- 川島 新造(かわしま しんぞう)
- 木場修太郎の悪友。池袋で「騎兵隊映画社」という会社を興している。丸坊主に兵隊服、黒眼鏡と外見はかなりの強面。前島八千代が最後に会った人物とされ、殺害容疑が掛けられるが、他に目的があり逃亡する。
- 川島 喜市(かわしま きいち)
- 平野祐吉の友人という男。
- 呉 仁吉(くれ にきち)
- 呉美由紀の祖父。息子夫婦と折り合いが悪く、今も房総の漁師小屋で一人で暮らしている。出門耕作の知り合い。
- 竹宮 潤子(たけみや じゅんこ)
- 池袋にある場末の酒場『猫目洞(ねこめどう)』を営んでいる気風のいい女主人。通称『猫目のお潤』。京極堂たちの馴染みで、降旗曰く学歴が高いらしい。
- 徳田 里美(とくた さとみ)
- 元従軍看護婦。現在は娼婦。狭い長屋の路地を抜けた古いアパートに降旗と同棲している。
- 降旗 弘(ふるはた ひろむ)
- 元精神科医。『狂骨の夢』で居候していた教会を出て、徳田里美の収入に頼って生活している。
[編集] 警察
- 長門 五十次(ながと いそじ)
- 木下 圀治(きのした くにはる)