発破
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発破(はっぱ)とは、爆薬やダイナマイトなどを使って古くなった建築物や船舶など人の手による構造物を破壊したり、山(岩)を切り崩したり、地質調査のために広範囲にわたって地面を振動させること。また、比喩的に物事の進行を早めるために関係者に強めの励まし(脅かし要素を含め)をすることを「発破をかける」ということもある。
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[編集] 概要
発破という行為自体は爆破と基本的に同じだが、爆破は火薬類を使って「物体を破壊する行為」全体を指しており、発破は建築業や鉱業の分野のみに限定して使われる言葉である点が異なる。すなわち発破とは爆破の中の特定産業分野に限定された一行為である。
発破する際は、発破する対象は確実に破壊しつつ、周囲への破片の飛散や振動、騒音はなるべく低く抑える必要がある。特に市街地においてビル等建造物を破壊する場合(→爆破解体)は、振動や騒音で周辺住民に不安感を持たせたり、破片の飛散によって被害が出る可能性もある。そのために爆薬を仕掛ける時は計算した上で建築物や土砂がなるべく内側に崩れるようにし、騒音や振動も低減させる。また発破による直接的な衝撃波等により破壊するのではなく、必要なところを発破により破壊する事により自重を支えられなくなって崩れていくようにすれば、周囲への破片の飛散が小さく、かつ徐々に崩れていくために振動や騒音も抑えられる。
このような違いは発破の場合に必要以上の圧力を加えないことで行われる。これは鉱山の採掘現場やダム建設現場などでも見られるところであるが、対象物(この場合は岩石)を「跡形もなく吹き飛ばす」のではなく、対象物に穿った穴に爆薬を設置し、この圧力を利用して「割る」ことにも現れている。このような目的では、一つの大型爆薬で「一点よりの圧力で破壊する」よりも、「点と点で結んだ線で破壊する」方が効率がよい。このため複数の爆薬を同時に作動させ、全体の力で対象物を割る必要からタイムラグの小さい電気雷管が利用される。
なお従来は大きな圧力を発生させるのに爆薬のほうが便利が良かったため広く用いられてきたが、建設機械の技術的進歩から時間を掛けて大きな圧力を発生させる装置も出ているほか、化学分野でも静的破砕剤と呼ばれる膨張剤なども利用されるようになってきており、状況に応じて使い分けられるようになってきている。
[編集] 火薬と爆薬
一般に火薬と爆薬の意味は混同されて使われるが、火薬類取締法では「推進的爆発の用途に供せられるもの」を火薬、「破壊的爆発の用途に供せられるもの」を爆薬、火薬や爆薬を加工したもの(雷管、導爆線、導火線、花火、銃砲弾、爆弾など)を火工品(かこうひん)と区別している。
発破の際も火薬類取締法に従ってそれぞれが区別される。法に書かれている通り発破に使われるのはもっぱら爆薬であり、発破に火薬が用いられることは稀である。
また火薬全般と爆薬では、燃焼の性質や速度の面でも違いが顕著である。火薬では衝撃で反応が始まり難いよう比較的安定した性質を持ち、一定以上の熱を加えることで燃焼という酸化反応が連鎖的に発生するが、爆薬では設定された種類のエネルギーを加えた場合に反応が始まり、より速やかに全体へと反応が進むようになっている。こと爆薬では安全性の面から単にマッチなどの火であぶった位では反応を起こして爆発を起こさないものもあり、この辺りも火薬と爆薬の性質的な違いである。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- あんな発破 こんな発破(日本火薬工業会による発破事例の情報と歴史をまとめたPDF小冊子)
- 発破について