異類婚姻譚
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異類婚姻譚(いるいこんいんたん)とは、人間と違った種類の存在と人間とが結婚する説話の総称。世界的に分布し、日本においても多く見られる説話類型である。なお、神婚と異類(神以外)婚姻とに分離できるとする見方や、逆に異常誕生譚をも広く同類型としてとらえる考え方もある。
よく知られている例としては、ギリシア神話ではキューピッドとプシケーの物語やゼウスが乙女の元に白鳥や水滴と化して訪れる話、グリム童話では『かえるの王さま (KHM001)』、日本でいうと鶴女房などが挙げられる。 これらは古代の族外結婚による信仰、生活様式の違いに起源を求める説がある。
子孫が残る伝承のものには、子孫にとって都合の良いもの(統治の根拠とする始祖伝説等)が多い。例_天人女房系 羽衣伝説や清王朝始祖、女真族のプフリヨンスの伝説等。日本神話におけるホオリとトヨタマヒメの結婚もまた異類婚姻譚であり、2人の子孫が初代天皇となっている。
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[編集] 日本での異種婚説話
関敬吾をはじめ、異類婚姻をテーマとした研究は多くなされており、様々な角度から分析されている。分析の仕方により、分類の仕方も変わってくるが、ここでは、例として関敬吾による分類を挙げる。なお、この分類上で言う「動物」には、慣例的に、架空の山姥、鬼、河童、天人等も含まれる。
大まかに六つの要素で構成されている。
- 援助 - 例:動物を助ける。
- 来訪 - 例:動物が人間に化けて訪れる。
- 共棲 - 例:守るべき契約や規則がある
- 労働 - 例:富をもたらす。
- 破局 - 例:正体を知ってしまう。(見るなのタブー)
- 別離
[編集] 異類婿
人間の女と動物の婚姻。何かと引き替えに、女性が一種の人身御供として異類と結婚することになり、女性自らが婚姻が破綻するように画策することも多く、結局は破局で終わることが多い。
- 蛇婿 - 水の世界に関わる。例:あかまたー
- 猿婿 - 労働力をもたらす。
- 犬婿 - 儒教系の思想が底にある。例:南総里見八犬伝。
- 河童婿 - 干ばつに困り果てた百姓が、河童のおかげで田に水が入り、その礼に娘を嫁にやる約束を守らなくてはならないが、娘はひょうたんを持って行ったおかげで河童の嫁にならずにすむという話が有名。全国にさまざまなバリエーションがある。
[編集] 異類女房
人間の男と動物の婚姻。異類婿よりは比較的悲惨でないものが多い。見るなのタブーを犯すことで最後には離別する話になっているものも多い。
- 蛇女房
- 正体がばれ別離の際に男との間に出来た子供に乳代わりにしゃぶらせるように自分の片方の眼を与えが、その眼をなくしてしまい妻はもう片方の眼も与えて盲目となってしまう。そしてその眼を床の間に飾ったことから男の家は栄える。
- その後のバリエーションとして眼を盗んだ相手への復讐として洪水、地震を起こすものと、目が見えなくなったから代わりに鐘を鳴らしてほしいというものがある。
- 竜宮女房
- 竜宮の姫との婚姻。その後殿様(庄屋)により突きつけられた無理難題を妻に頼って解決する。
- 亀、魚など海洋系の動物が変身したものを含んで言う場合もある。
- 魚女房
- 蛤女房 - 蛤女房、蛤の草紙(『御伽草子』所収)
- 亀女房 - 例:浦島太郎(明治時代になるまで、乙姫は亀であった。)
- 鶴女房 - 例:鶴の恩返し、木下順二の『夕鶴』
- 天人女房 - 白鳥処女説話(子供が残る。)
- 狐女房
[編集] 他界との関わり
日本には、他界(死後の世界、神の世界等)と関わると何事か幸を得るという感覚が古来あったようで、神話を始め様々な説話にその思想的痕跡が見られる。異界と関わり幸を得る方法としては
- 相手を屈服させる
- 相手と婚姻する
- 他界に行く
- 他界からものを持ち帰る
などがあり、異類婚姻譚は文字通り婚姻により幸を得る部類である。
[編集] 中国
日本同様狐女房を始めとして多数存在し、日本での説話の元になったと思われるものが多数ある。
[編集] ヨーロッパ
ヨーロッパでの異類婚姻譚に登場する動物は、元が魔法や呪いで姿を変えられた人間とされるものが多く、(ギリシャ神話等では神の化身も又多い。)異類の本質が動物そのものであることは少ないという指摘もある。
- キューピッドとプシケー型 - 男神が女性の元に通う。好奇心などに負けて、女性が男性の正体を調べてしまい(顔を見る、灯りを付けるなども含めて)、破局を迎える
- 白鳥処女(スワンメイデン型)- ゼウスなどの男神が動物などに化して、乙女の元へ
- 美女と野獣
- かえるの王さま
- メリュジーヌ
- セルキー - 天人女房系
- フルドラ
[編集] 参考文献
- 高橋康夫 『結婚の原型 異類婚譚の起源』北栄社 ISBN 4-89463-045-1