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源経基 - Wikipedia

源経基

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

源経基・『前賢故実』より
源経基・『前賢故実』より

源 経基(源 經基、みなもとの つねもと、897年3月18日寛平9年2月12日〕? - 961年12月25日応和元年11月10日〕?)は平安時代中期の皇族武将清和源氏経基流の祖。

『保元物語』によれば、清和天皇の第6皇子貞純親王の子で、母は右大臣源能有の娘。生年は、皇族に籍していたとき「六孫王」と名乗ったと言い『尊卑分脈』などの諸系図でもこれを踏襲しているが、孫の頼信が永承元年(1046年)に誉田山陵に奉った告文によると、陽成天皇の皇子元平親王の子とする説もある(後述)。居館は六宮とも八条御所ともいう。位階は贈正一位。神号は六孫王大権現。弟に経生、子に満仲満政満季・満実・満快・満生・満重・満頼らがいる。

目次

[編集] 生涯

承平8年(938年武蔵となり現地に赴任する。同じく赴任した武蔵権守興世王と共に赴任早々に検注[1]を実施すると、在地の豪族である足立郡司で判代官の武蔵武芝が正任国司の赴任以前には検注が行われない慣例になっていたことから検注を拒否した為、経基らは兵を繰り出して武芝の郡家を襲い、略奪を行った[2]

この話を聞きつけた平将門が私兵を引き連れて武芝の許を訪れると、経基らは妻子を連れ、軍備を整えて比企郡の狭服山へ立て篭もる。その後、興世王は山を降りて武蔵国府にて将門・武芝らと会見するも、経基は警戒して山に留まった。武蔵国府では双方の和解が成立して和やかに酒宴が行われていたが、その最中に武芝の者達が勝手に経基の営所を包囲した為に、経基は将門らに殺害されるものと思い込んであわてて京へ逃げ帰り[3]、将門・興世王・武芝が謀反を共謀していると朝廷に誣告する。しかし将門らが承平9年5月2日付けで常陸下総下野武蔵上野5カ国の国府の「謀反は事実無根」との証明書を太政大臣藤原忠平へ送ると、将門らはその申し開きが認められ、逆に経基は讒言の罪によって左衛門府に拘禁されてしまった。

天慶2年(939年)11月、将門が常陸国府を占領、その後も次々と国府を襲撃・占領し、同年12月に上野国府にて「新皇」を僭称して勝手に坂東諸国の除目を行うと、以前の誣告が現実となった事によって経基は晴れて放免されるばかりか、それを功と見なされて従五位下に叙せられた[4]。その後、征東大将軍藤原忠文の副将の一人に任ぜられ、将門の反乱の平定に向かうが既に将門が追討された事を知り帰京。941年に追捕凶賊使となり、小野好古とともに藤原純友の乱の平定に向かうが、ここでも既に好古によって乱は鎮圧されており、純友の家来を捕らえるにとどまるが、それも武勲と見なされる。武蔵信濃筑前但馬伊予国司を歴任し、最終的には鎮守府将軍にまで上り詰めた。

晩年、経基は臣籍降下を命じられたことに憤慨していたというが、同時代の摂政太政大臣・藤原忠平の日記『貞信公記』の天慶2年(939年)3月3日付に「源経基、武蔵の事を告げ言う。」と記されているのもあり、経基が果たして皇族であった時期があったかどうか疑問視もされている。ただしこの記述については、忠平の子藤原実頼が抄録した際に源姓を書き入れたとする説もある[5]

嫡子の源満仲が建立したという六孫王神社京都市南区)に祀られている。

[編集] 生没年

尊卑分脈』では961年に45歳で卒去したとある事から、逆算して生年は917年生れとなる。また、『勅撰作者部類』には958年に同じ45歳で卒去したとある事から914年生れとされているが、いずれも長男・満仲より後に生まれた事になる。系図纂要には897年とあり、もしこの説が正しければ15歳の時に満仲を儲けた事になり妥当にも思えるが、同書は幕末期の編纂物であり単に矛盾に気づいた系図家などが手を加えた産物である可能性があるから、通常の歴史学の手法による限りこれを根拠とすることはできない。清和源氏の祖でありながら歴史の表舞台に登場したのが僅か7、8年に過ぎない事もあって正確な生没年は未詳である。

[編集] 経基の系譜についての問題

尊卑分脈』等によると経基の孫とされる源頼信誉田八幡宮に奉ったという告文(願文)の写しが石清水八幡宮田中家文書の中にある(石清水八幡宮田中家文書「源頼信告文案」古写)。それによると、源頼信は、八幡大菩薩すなわち応神天皇を自らの「二十二世の氏祖」であるとして、「先人新発、其先経基、其先元平親王、其先陽成天皇、其先清和天皇、(以下略)」と自らの祖を列記している。これに従うと、経基の父は清和天皇の王子貞純親王ではなく陽成天皇の王子元平親王となる。

この文書が明治30年代に発見されると、いわゆる「清和源氏」は実は「陽成源氏」ではないかとの説が星野恒によって唱えられた。星野説はその後黙殺に近い扱いを受けたが、昭和40年に竹内理三が支持すると復活し、今日に至るまで星野説を支持する研究者は少なくない。一方、「源頼信告文案」を偽作とする説もあるが、このような文書を積極的に偽造しなければならない必然性があるとも思われないという理由で現時点では偽作ではないと見るのが一般的である。しかしこの説を採ると、経基王が名乗った「六孫王(清和天皇第皇子の子で、皇の意)」の辻褄が合わなくなる。だがそもそも経基王・六孫王という名乗り自体が同時代史料にはみられず、これを根拠に清和源氏説を擁護するのは当たらないであろう。

[編集] 参考文献

  • 朧谷寿『清和源氏』 教育社歴史新書、1984年。
  • 元木泰雄「武門のはじまり 経基・満仲」『別冊歴史読本74 源氏 武門の覇者 - 乱世を疾駆した武士たち』 新人物往来社、2007年。
  • 野口実『源氏と坂東武士』 吉川弘文館、2007年。
    • 「武門源氏の成立」章にて、源経基を陽成天皇の孫とする説を先行研究を引用しつつ肯定している。)
  • 梶原正昭訳注『将門記 (1)』 東洋文庫、1975年、ISBN 458280280X
  • 梶原正昭訳注『将門記 (2)』 東洋文庫、1976年、ISBN 4582802915

[編集] 脚注

  1. ^ 当時の「検注」とは、国司がその任地の有力者から受け取る莫大な貢物・賄賂が目当である事が多く、経基らも正任の国司が赴任する前に自らの赴任直後に行っている事を見ても、それが目的であったと思われる。
  2. ^ 『将門記』では「箸ノ如キノ主ハ、眼ヲ合ハセテ、骨ヲ破リ膏ヲ出スノ計ヲ成ス。」と興世王と源経基それぞれを一対の「箸」に例えてその横暴振りを表現している。
  3. ^ 『将門記』では「介経基ハ未ダ兵ノ道ニ練レズ。驚キ愕イデ分散ス」と述べられており、後に武門の棟梁となる清和源氏の初代の経基は軍事の経験が浅くまだ武士とは言えない体たらくだった。
  4. ^貞信公記』『日本紀略』によると天慶3年正月9日に叙せられており、将門追討後に平貞盛藤原秀郷らと共に行賞されたのではない。
  5. ^ シンポジウム「日本歴史」5『中世社会の形成』

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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