機動捜査隊
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機動捜査隊(きどうそうさたい)とは、各都道府県警察本部刑事部に所属する「執行隊」であり、通称、機捜隊(きそうたい)、機捜(きそう)と呼ばれている。小規模な警察本部では刑事部捜査第一課内の隊として活動している。
通常は捜査車両に2名で乗車し、担当管轄内の密行警ら(パトロール)に従事するが、重要事件発生の際は、犯罪現場に急行し、事件の初動捜査に当たる。
テレビドラマ「特別機動捜査隊」に登場した同名の隊をヒントに設置されたといわれている。
当初は捜査第一課の初動捜査班として創設された。
[編集] 任務
刑事事件、特に捜査第一課が担当する事件(強盗、傷害、殺人等)の初動捜査を担当する。初動捜査は、警察署の刑事課や鑑識係なども担当するので、機動捜査隊が専門に行っているわけではないが、各警察本部の管内全域では、機動捜査隊が中心となって行っている。
機動捜査隊は、捜査車両で警ら(パトロール)活動中に、隊員が事件や事故を目撃するか、110番通報入電の無線指令を傍受すると、捜査車両の機動力を以ってただちに現場へ急行し、初動捜査を行う。しかし被疑者が確保されず、事件が長期化する場合は、各警察署の刑事課や、本部の捜査第一課などの担当課に捜査を引き継ぎ、再び警ら活動を続ける。
重大事件であれば、事件発生後、捜査本部が設置されるが、基本的に捜査本部に機動捜査隊は参加しない(機動捜査隊から応援派遣、という形で捜査員が派遣されることはある)。
機動捜査隊は警察署の刑事のように、一つの事件をじっくり扱ったり、地域社会に溶け込んだ捜査活動はあまり行わない。
いわゆる裏づけ捜査や、被疑者の内偵捜査なども、初動捜査を担当する機動捜査隊では、通常は行わない。
逮捕状執行や捜索・差押えなどの検挙活動に際して、各警察署等から要請があれば、その応援に従事することもある。
また近年、一部の県警察では立て籠もり事件に対処するため、捜査第一課特殊犯捜査係に機動捜査隊の捜査員を加えて、突入班を編成している。
なお栃木県警では、機動捜査隊の捜査員が管区機動隊を兼務している(栃木県管区機動隊運用規定)。
[編集] 装備
各都道府県警察で詳細は異なるが、通常の装備は以下のような物である。
- 日本警察の標準的な物(ニューナンブ、S&Wエアーウェイト、P230等)を使用。
- 警棒
- 手錠
- 対刃防護衣(防刃ベストのこと。私服捜査員用に、防護衣には見えないようなカジュアル仕様のベストが配備されている)
- 警笛
- 警察手帳
- 携帯無線機
- 携帯受令機(警察無線専用の受信機)
- 略帽(主に機動隊で使用する略帽だが、関西方面の警察では捜査員が頻繁に使用する。殺人事件の現場などに、自分の毛髪を落とさないためだと言われている)
- 警杖、防弾盾、防弾チョッキ、防弾ヘルメット等(捜査車両に積載)
また、捜査員の服装は私服である。関西方面は一般用作業服に、装備を収納したベストやウエストポーチの着用が多いが、警視庁はスーツが多い様である。
勤務の際は警察官である事を周知する為「機捜」の文字が入った腕章を着ける警察本部が多く、各所属ごとに作成したベースボールキャップ型帽子を被る場合もある。なお初動捜査が秘匿を必要とする場合は、腕章や帽子は使用されない。
腕章については警視庁の場合、あずき色地に黄色文字で所属部署名が記されている。かつては「機捜」と表記されていたが、現在は「警視庁 ○機捜」(○には第一機動捜査隊なら「一」)と2行で表記されている。なお上部に黄色線が入っている場合は、警部補の階級を表しており、上下に黄色線が入っている場合は警部及び警視の階級を表している。この腕章の規定は、警視庁刑事部と所轄署刑事課では共通となっている。