模型飛行機
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模型飛行機(もけいひこうき)とは飛行機を縮尺どおりに縮小したものだけではなく、飛行する模型を総称する。バルサなどの木材、樹脂、繊維強化プラスチック (FRP) 等で出来た飛行可能な物や、博物館等に展示されるような実物を忠実に再現した精密な模型がある。
模型は通常は飛行可能な物と展示用に分類される。2者の間では工法は大きく異なる。
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[編集] 展示用模型飛行機
展示用飛行機模型は飛行を考慮されていない物で、通常、樹脂や木、金属や紙で作られるスケールモデルである。いくつかの物は風洞実験で実物の航空機を開発する過程で試験に使用される。
収集家は既に組み立てられた物を買ったり、未完成の物を買って製作過程そのものを楽しむ者もいる。大半のエアラインではヘルパやドラゴンモデルズ等で模型化されている。初期の頃は大型の飛行機や船舶の模型は旅行社の宣伝に用いる為に注文された。それらの模型は現在では収集の対象となっており、オークション等で高値で取引されている。最も高価な模型飛行機は1/10スケールのボーイング707で18000$である。
[編集] 製造会社
最も一般的な素材である樹脂で出来た射出成型のプラモデルの飛行機キットを供給している会社はハセガワ、田宮模型、フジミ、日本模型、童友社、バンダイ、アオシマ、レベルモノグラム、エアフィックス、エレール、イタレリ等である。
1970年代は趣味としてのプラモデルの絶頂期で、1980年代に入るとコンピューターゲームの普及により模型は徐々に下火になった。
[編集] 縮尺
1/72が最も多く、1/144や1/48もある。1/48はフランクリンミントからのダイキャスト製品が多くみられる。他に1/32や1/24もある。
旅客機の縮尺は1/200、1/400、1/500、1/1000等がある。オーロラ社から販売されていたいくつかの第2次世界大戦時の模型は1/28であった。他に1/64、1/96や1/128という縮尺もあった。
多くのプラモデルでは伝統的な縮尺が採用されているが伝統的ではない縮尺の物も存在する。それらは標準的な箱に合わせた大きさであり、それらはしばしば“ボックススケール”と呼ばれる。一例としてレベルの1/39スケールのライトフライヤーがある。ヘリコプターの模型は1/32が採用されている。最近はミリタリーモデルに合わせた1/35スケールが流行りつつある。
[編集] 小規模な生産者
初期投資のかかる射出成型は少数の会社であるが、小規模の会社はしばしばこの方法を使用することが出来ない。生産数量が期待できない機種の場合も射出成型は使用できない。いくつかの小規模な生産者はコストを抑える為、真空成型やレジンキャスト等の手法を用いる。この分野で世界的に高い評価を得ている会社もある。しかし、近年、後発のトランペッター等からこれまで射出成型で模型化されてこなかった機種が比較的、安価に模型化されるようになり、真空成型、レジンキャストは徐々に押されつつある。
Koster Aero Enterprises,Welsh Models,DynaVector,AirModel等の小規模な製造者による真空成型によるキットは製作者に高度の技能を要求する。 Anigrand,Collect Aire,CMK,Unicraft等はレジン製品を供給する会社である。
[編集] 飛行する模型飛行機
飛行する為の模型飛行機はいくつかのグループに分類できる。
- フリーフライト
- 飛ばした後、着陸するまで一切制御しない事を前提として作られた模型である。ライト兄弟も飛ばした。[1]
- Uコン
- ケーブルで操縦する模型飛行機である。
- 無線操縦(ラジコン)
- 地上の操縦者による送信機からの指令を機上の受信機で受信する事により操縦する。無線操縦ヘリコプターは航空写真撮影や農薬散布に用いられる。
いくつかの模型飛行機では実物同様に精密に出来たものもある。鳥や翼竜を模した物もある。
[編集] 製作
飛行用と展示用では制作方法が大きく異なる。飛行用は昔の実物の制作方法に近い物である。金属の使用は稀である。近年では繊維強化プラスチック (FRP) の使用も増えつつある。
[編集] グライダー
グライダーとは推進力を持たない航空機である。手投げ式や射出式がある。
[編集] 動力
動力模型は空気中を飛行する場合、不可欠である。模型では一般的に電気モーターや小型のピストンエンジンが使用されるが、他の形式も推進に使用される。ロケットや小型のタービンやパルスジェットや圧縮ガスエンジンやゴム動力等がある。
[編集] 昔
アルフォンス・ペノーに代表される昔、動力にはゴムを初めとする弾性材料が使用されていた。他に容易に入手できる軽量で強力な動力源が無かった事もあり、長い間使用された。競技用の模型では15分から1時間近く飛行する物もある。[2]
二酸化炭素を動力とする物もある。大口径でピッチの大きなプロペラを回転させる。ユニフロー式のエンジンで今日ではGasparinとModella社から供給されている。内燃機関(エンジン)や電池は作動するにつれて熱くなるのに対して、ゴム動力と同様作動するにつれて冷たくなってゆく動力として知られる。これは熱力学的に考えると、はじめに負のエントロピーを蓄積していて、作動するにつれて周囲から熱を吸収してゆくことを意味する。
ゴム動力と同じくらいかより古い形式に蒸気機関があり、航空史の初期に用いられていた。1848年、英国のジョン・ストリングフェローが蒸気動力の模型飛行機を飛行させた。ハイラム・マキシムは後に飛行機が蒸気エンジンにより人を空中に飛ばせる事を示した。サミュエル・ラングレーは内燃式の模型飛行機を造り、長時間の飛行を行った。
1807年、1819年、1850年にジョージ・ケイリーは火薬を燃料とする模型飛行機を造った。それらは羽ばたき式飛行機(オーニソプター)であった。彼は火薬を燃料として使用する事は、有人飛行には危険であると結論づけた。
[編集] 内燃機関
より大きく、重たい模型には内燃機関の一種であるグローエンジンが使用される。グローエンジンは自動二輪に使用される小型のガソリンエンジンに似ているが、異なる物である。単純で廉価なグローエンジンは2ストロークで燃料着火にグロープラグを使用する。燃料にはメタノールとニトロメタンの混合燃料にオイルを混ぜた物を使用する。始動時には外部から点火栓に通電する。加熱されると白金の触媒作用により継続して点火される。回転数が一定になったら通電を止める。ガソリンエンジンに必要とされるマグネトは必要ない。4ストロークエンジンも同様である。模型用エンジンの排気量は最小の排気量である0.01立方インチから1立方インチ以上まである。
単純な模型飛行機用のエンジンはグロウプラグを使用しないディーゼル式の物もある。ヨーロッパでは人気がある。
[編集] ジェットエンジンとロケットエンジン
近年、愛好家の間では模型用のジェットエンジンが普及しつつある。模型用ターボジェットエンジンは実物のターボジェットエンジンを単純化、小型化したものではなく、模型用に開発された物である。最初に模型用に開発されたタービンは1980年代に英国のGerald Jackmanによって開発された。愛好家によりGTBA(ガスタービン製造者協会)が組織されている。
パルスジェットエンジンは第2次世界大戦においてV-1飛行爆弾によって使用された。グローエンジンより小型だったがうるさいので普及しなかった。"Dynajet"社の物が多く使用された。
ロケットエンジンは1950年代に滑空機の加速に用いられた。JETEXとして知られる形式が一般的である。モデルロケットエンジンは単段式で10秒くらいの燃焼時間である。A,B,C等のカテゴリーに分類される。
[編集] 電動
電動機は蓄電池から供給される電気でモーターを回転させる。初期の電動模型は直流モーターとニッケル・カドミウム蓄電池を使用していた。後により高効率なブラシレスモータを使用した物が普及した。蓄電池もニッケル・水素蓄電池や近年ではより高容量のリチウムイオンポリマー二次電池が使用されつつある。それにより飛行時間は大幅に増え、飛行性能もグローエンジンと遜色ないものになりつつある。更に、先進的な無線操縦愛好家により太陽電池を用いる物も開発され、2005年にはカリフォルニア州で48時間16分の記録が樹立された。
[編集] コントロール ライン
Uコンとして一般的に扱われる。1940年代初頭にテキサス州でStanzel兄弟によって導入された。
[編集] 推進器の種類
大半の模型飛行機ではプロペラの回転によって推進力を得る。
[編集] プロペラ
通常、直径Xピッチをインチで表す。例えば5X3だと直径5インチ、ピッチは3インチという意味である。ピッチとは固体の中をプロペラが回転した時に進む距離である。
動力源から回転力をプロペラに伝達する手段として2つの異なる方法が用いられる。
- 直結式
- 最も一般的な方法である。
- 減速式
- 減速ギアを介する事により、回転数を下げる。それにより、直径の大きなプロペラを回すことが出来る為、推進効率が上がる。通常は高回転だがトルクの小さい電動モーターに使用されるが、稀に内燃機関にも使用される。
[編集] ダクテッドファン
ダクテッドファンは筒状のダクト内にプロペラとモーター或いはエンジンを設置する事によりジェットエンジンよりも安い費用でジェット機を再現する物である。
[編集] その他
羽ばたき機(オーニソプター)はプロペラを持たない。鳥の様に翼を羽ばたく事により浮揚力と推進力を得る。
[編集] 関連項目
[編集] 参考
- The Great International Paper Airplane Book, by Jerry Mander, George Dippel and Howard Gossage, Simon and Schuster, New York, 1967
- Model Aircraft Aerodynamics, by Martin Simons, Argus, Watford, Herts, England, 1978
- How to Design and Build Flying Model Airplanes, by Keith Laumer, Harper, New York, 1960
- The Middle Ages of the Internal-Combustion Engine, by Horst O. Hardenberg, SAE, 1999
[編集] 外部リンク
- AeroScale a scale modeling community
- Academy of Model Aeronautics
- RCU Videos Radio control videos of airplanes, cars, boats, helis
- The Society of Antique Modelers, dedicated to antique and vintage flying models.
- エアロベース組立て体験
- 模型飛行機を使用した映画撮影