春雨 (料理)
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春雨(はるさめ)は、緑豆(りょくとう)または ジャガイモやサツマイモのでんぷんから作られる乾麺のひとつ。中国から伝わったもので、中国語では「粉絲」(フェンスー、fěnsī)または「粉条」(フェンティアオ、fěntiáo)という。台湾では「冬粉」(北京語:ドンフェン dōngfěn、台湾語:タンフン tanghun)という。
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[編集] 歴史
日本には禅宗の精進料理である普茶料理の材料として、中国から鎌倉時代に伝来したといわれる。
[編集] 製法
緑豆、ジャガイモ、サツマイモなどのでんぷんを熱湯で練った糊に、でんぷんと湯を加えながら練り上げて生地をつくる。この生地を1mmほどの穴の開いた容器から熱湯中に押し出して煮沸し、水冷後に凍結させ、さらに天日乾燥して作られる。
[編集] 産地
中国においては、山東省龍口市が産地として有名であるが、実際の産地は招遠市の方が主である。龍口ブランドの商品は日本にも輸入されている。
日本においては、奈良県が主産地で、桜井市と御所市で全国の生産の約6割を占めている。中国では緑豆のものが主流で、日本においては緑豆でんぷんが入手しにくかったため、ジャガイモなどの芋でんぷんに変えられている。緑豆でつくった春雨はジャガイモやサツマイモのものよりも強く、煮くずれしない。
[編集] 食べ方
水か湯で少し戻してから、煮物や炒め物にする。鍋物の具のひとつとして使われたり、煮戻してチャプチェや春雨サラダのような和え物料理にしたりする。春雨をごま油や少量の唐辛子などで中華風に味付けしたサラダは、「中華サラダ」と呼ばれる。また、中華料理では、麻婆春雨などのように炒め物の主役になるほか、春巻きなどの具にしたり、麺料理として使われる。水で戻さずに、乾燥した状態のまま油で揚げると数倍のかさに白く膨れる特性があるため、皿と料理の間に敷き付け合わせにするなどの調理法がある。春雨を揚げて唐辛子で味付けた挽肉をかけた中華料理に「螞蟻上樹」(マーイーシャンシュー)がある。短く切った春雨を揚げ物の衣にしたものを、日本では春雨揚げと呼ぶ。
タイでは「ウンセン」と呼び、和え物や鍋物にされる。トムヤムクンなどのスープ料理に春雨を入れることもある。
熊本県の料理である「太平燕」(たいぴーえん)は、本来ワンタンスープのような中国料理であったが、日本で変化して春雨を主体にした一種の麺料理となった。それまで、春雨をあまり麺類と認識していなかった日本では珍しい料理である。
近年の日本では、中華料理や東南アジア料理の、麺として春雨を使った商品も数多く販売されているが、麺料理の一種というよりは、緑豆で作る春雨のカロリーが小麦粉の麺類よりも低めであることから、ダイエット志向のインスタント食品として扱われている場合が多い。