戦え!!イクサー1
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『戦え!!イクサー1』(たたかえ!!イクサーワン)は、阿乱霊がレモンピープルに描いた短編漫画。及び、それを原案として1985年から1987年にかけて制作、発売されたOVA作品。全3巻。
本項では、主にOVAを中心として記述する。
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[編集] ストーリー
真夜中の都会の片隅で、静寂を破る一人の男が逃げ惑っていた。
懸命に走るも躓いて転倒した男の顔には、尋常ならざる焦りが浮かんでいる。顔を上げた男の目に映ったのは、レオタード調の戦闘服を着け、尖った耳と長くウェーブの掛かった金髪が目立つ少女。男は獣のような唸り声で少女への怒りを露にすると、その顔を崩れさせた。瞬時に原型を留めないまで崩れ落ちた男の顔の下からは、タコともイカとも似付かない軟体の身体を持つ怪物が出現し、少女に襲い掛かる。しかし少女は少しも恐れず腕を振り構えると、その拳から眩しい光線を放ち、怪物を跡形も無く消滅させた。その途端、辺りには再び静寂が訪れる。少女の姿も、いつの間にか消えていた。
一方、視界に地球を望む宇宙空間には、半球に傘を被せたような形状の巨大な隕石型宇宙船が留まっていた。その中にある一室では、二人の少女が全裸のままベッドでお互いの四肢を絡め合い、快楽を貪っている。組み敷いている方はコバルト、組み敷かれている方はセピア。やがて行為を終えた後、地球を眺めながら談笑していた二人の元に、コバルトへの呼び出しが掛かる。
身繕いを整えて宇宙船の中枢部を訪れたコバルトの前で、数人もの従者の真ん中に立つ一人の人物が降り返った。その名はサー・バイオレット。コバルトの上司であり、この宇宙船の長である。サー・バイオレットは巨大ロボット・ディロスθの操縦者にコバルトが選ばれたことと、先んじて地球に派遣した寄生怪物達が妨害を受けていることを彼女に伝える。
怪物達を妨害しているのは、真夜中の都会に現れたあの少女であった。サー・バイオレット達からイクサー1の名で呼ばれている彼女は怪物達と戦う一方、自分とシンクロすることで能力を完全に覚醒させてくれる、一人の地球人少女を探していた。その少女の名は、加納渚。ごく平凡な家庭で幸せに生きる、普通の女子高生である。
サー・バイオレットは、渚の元へも怪物を向かわせていた。最初は単なる悪夢にしか思えなかった状態から、一気に級友も父母も怪物化されてしまった渚は、自分にも寄生の為の触手を伸ばしてくる彼らに恐怖と絶望を覚える。イクサー1が駆け付けてその窮地を救うが、あまりにも過酷な現実に直面した渚はパニック状態に陥り、彼女の言うことに耳を貸さない。一方、宇宙船からは使命に燃えるコバルトが、ディロスθに搭乗して地上に降り立つ。
地球は狙われていたのだ。宇宙の彼方からやってきた放浪の民・クトゥルフによって…。
[編集] スタッフ
- 原案 - 平野俊弘、阿乱霊
- 監督、脚本、キャラクターデザイン - 平野俊弘
- 絵コンテ - 平野俊弘、西森明良 (Act.I)
- 演出 - 西森明良(Act.I)、岡本達也(Act.II)
- メカニックデザイン - 本猪木浩明、荒牧伸志(Act.II、III)、大張正己(Act.II、III)
- モンスターデザイン - わたなべぢゅんいち
- 作画監督 - 平野俊弘(Act.I)、大上浩明(Act.I)、垣野内成美(Act.II、III)、大張正己(Act.II、III)
- 色指定 - 金丸ゆう子
- 美術監督 - 中村靖(Act.I)、荒井和浩(Act.II、III)
- 音響監督 - 本田保則
- 音楽 - 渡辺宙明
- プロデューサー - 三浦亨
- 制作 - AIC
- 製作 - L・Pビデオ
[編集] シリーズ各巻タイトル・主題歌
- 戦え!!イクサー1 Act.I
- 「戦え!!イクサー1」(作詞 - 岡田冨美子 / 作曲、編曲 - 渡辺宙明 / 歌 - 柿沢美貴)
- 戦え!!イクサー1 Act.II イクサーΣの挑戦
- 「NEVER RUN AWAY」(作詞 - 岡田冨美子 / 作曲、編曲 - 渡辺宙明 / 歌 - 楠木勇有行)
- 戦え!!イクサー1 Act.III 完結編
- 「永遠のイクサー1」(作詞 - 岡田冨美子 / 作曲、編曲 - 渡辺宙明 / 歌 - 柿沢美貴)
[編集] 登場人物
- イクサー1(- ワン)
- 声 - 山本百合子
- 主人公。宇宙を放浪する民・クトゥルフが、かつて彼らを守る戦士として作った、善なる心を持つ人造人間。それゆえビッグゴールドに支配されて他の星へ侵略活動を行うクトゥルフに対し、反旗を翻す。
- 戦闘時は両腕から放つエネルギー弾、宇宙刑事ばりのレーザービームソードなどを駆使して戦う。
- 自身だけの力で空を飛行するのは序の口で、宇宙空間を飛行し恒星間航行も出来、更には亜空間の出入りも自由自在と、行動範囲は無限。
- 戦闘ロボットなどの巨大な敵に対しては、自らの分身とも言える巨大ロボ・イクサーロボを自分専用の異空間から出現させ、搭乗して戦う。
- 加納 渚(かのう なぎさ)
- 声 - 荘真由美
- ヒロイン。イクサー1にパートナーとして選ばれた少女。渚の力を得ることにより、イクサー1とイクサーロボは桁外れの戦闘力を発揮する。それ故クトゥルフに狙われて友人や両親を失ったことから、イクサー1を恨むこともあった。
- サー・バイオレット
- 声 - 島本須美、塩沢兼人
- クトゥルフの指導者。本来は心優しい理想的指導者だったが、ふと生じた心の隙間をビッグゴールドに侵け込まれて以降、操り人形になってしまう(島本が本来の人格、塩沢が操られてからの声を担当)。
- イクサー2(- ツー)
- 声 - 戸田恵子
- イクサー1を倒すべくビッグゴールドによって作られた、邪悪な心を持つ人造人間。「イクサー1の妹」を自称し、イクサー1を上回る戦闘力と自信、そして彼女と同様に分身とも言える巨大ロボ・イクサーΣ(シグマ)を持つ。
- なお、平野曰くイクサー1はキカイダー、イクサー2はそのライバルであるハカイダーをイメージしてデザインされている。
- コバルト
- 声 - 江森浩子
- クトゥルフの戦士。巨大ロボ・ディロスθ(シータ)で地球侵略作戦を行うが、怒りを爆発させた渚に呼応してパワーを開放させたイクサーロボの前に散る。
- セピア
- 声 - 安藤ありさ
- コバルトの恋人(クトゥルフには「男性」という性別が無い)。コバルトを失った後、その復讐を遂げる為にイクサー2のパートナーとなるが…。
- ビッグゴールド
- 声 - 塩沢兼人
- 金色の光を放つ以外は全てが謎の生命体。イクサー1とは対極の「悪」である。サー・バイオレットを操り人形と化してクトゥルフを支配した後、彼らの愛玩生物をクトゥルフ神話ばりの奇怪な姿と凶暴な性格を持つ怪物と化して尖兵とし、他の星を侵略しようと企む。
[編集] 登場メカ
- イクサーロボ
- イクサー1の分身とも言える巨大ロボット。普段は自分専用の亜空間に留まっているが、イクサー1や渚の呼び掛けに応じてどこにでも出現する。イクサー1が搭乗して無数のコードに繋がれるだけでも強大な力を発揮するが、渚が羊水を思わせる液体に満たされている胸部に全裸で乗り込む(取り込まれる)ことによって、その力は何倍にも増幅される。
- 装甲の下は生体メカで構成されており、大きく傷付けば血液らしき液体も流れ出る。
- イクサーΣ(- シグマ)
- イクサー2の分身とも言える巨大ロボット。イクサーロボよりも鋭角的かつ攻撃的なフォルムをしており、その能力も遥かに上。こちらもセピアが乗り込むことによって、そのパワーが倍増するようになってはいるが…。
- ディロスθ(- シータ)
- コバルトが地球侵略作戦の際に乗り込んだ巨大ロボット。地球防衛軍の兵器相手には無敵の強さを誇るが、渚を得たイクサーロボには敵わず、怒りの拳でコクピットを破壊されて敗れる。
- 富士壱號(ふじいちごう)
- 富士弐號(ふじにごう)
- FJ-III(エフジェイスリー)
- 以上3機は地球防衛軍の戦艦。いずれも相当な戦闘力を持つが、クトゥルフの前にはひとたまりもない。
- ちなみに地球防衛軍はこの他にも色々な各種兵器を有しているが、その殆どが往年の日本特撮映画へのオマージュである。また、このパターンは、「未来戦隊タイムレンジャー」で使われた。所謂、オマージュ返しである。
[編集] 関連商品
- 戦え!!イクサー1 ACT.I(1985年10月19日発売)
- 戦え!!イクサー1 ACT.II イクサーΣの挑戦(1986年7月23日発売)
- 戦え!!イクサー1 ACT.III 完結編(1987年3月4日発売)
- 後に各巻の廉価版が発売された。
- デイドリーム
- ACT.IIとIIIの間に作られたメイキングビデオ。
- 戦え!イクサー1 特別編(1987年9月25日発売)
- ACT.I、II、IIIを1本に繋げた完全版。再編集ではなく、完全新作シーンや描き変えられたカットもある。台詞は全て再アフレコされ、音楽の使い方も変更されている。
- サントラ
- LPレコードアルバムとして4枚発売された。後に2枚のCDで発売され、1992年にはその廉価版が再販されている。さらに1998年には2枚組CD『戦え!!イクサー1 バトル・ミュージック・コレクション』として発売された。
- 書籍
- 漫画『黄金の戦士』
- 著:平野俊弘。イクサー1が戦士として覚醒した頃の物語。
- カセット文庫『黄金の戦士』
- 上記のカセット文庫版。
- フィギュア
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 戦え!!イクサー1
- 戦え!!イクサー1/竜世紀 コンプリート・コレクション<ツイン・パック>(邦画には極めて珍しい両面1層)