慢性胃炎
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慢性胃炎(まんせいいえん)は、胃粘膜や胃液分泌腺の萎縮によりさまざまな不快感を伴う消化器の病気の一種であり、大きく分けて「随伴性慢性胃炎」と「特発性慢性胃炎」の二つがある。「随伴性慢性胃炎」は、胃がん、胃潰瘍などに付随し起きるもので、「特発性慢性胃炎」は他になんら病変がなく炎症だけが起きるものである。
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[編集] 概要
かつては慢性胃炎は、胃粘膜の加齢に伴う萎縮によって進行すると考えられ、老化現象の一つとして捉えられていた時期があり、医学会の常識となっていた。また、胃には、常にある規定量の胃壁細胞により作られる塩酸が存在しており、食物自体も物理化学的に胃粘膜を刺激し障害を及ぼす可能性がある。
ピロリ菌の発見 ところが1982年のピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の発見により状況は一変する。慢性胃炎の大半がピロリ菌の長期感染が原因であることが明らかされ始めた。ちなみにピロリ菌感染がなければ、60~70歳以上の高齢者でも萎縮のほとんどないきれいな胃粘膜が観察できる。
特発性慢性胃炎 また、特発性慢性胃炎の場合は、暴飲暴食や喫煙、不規則な生活、香辛料などの刺激物やカフェイン類の摂りすぎや睡眠不足、ストレスなどの生活習慣、アスピリンなどの薬物の服用などが深く影響するといわれ、若年層にも多発する。
胃炎の経過 初期の胃炎には表層性胃炎と呼ばれるリンパ球を中心とする炎症細胞浸潤が多くみられるが、長期化してゆくにつれ胃粘膜は次第に萎縮し、粘液や胃酸を分泌できない状態となり、萎縮性胃炎を引き起こすが、この状態を慢性胃炎と診断する。ただ慢性胃炎では、自覚症状と胃粘膜の萎縮の状態とが相関しないことが多い。すなわち、なぜ慢性胃炎で症状が出るのか、不明な点がまだ多い。
[編集] 症状
胃もたれ感、胸やけ、上腹部不快感、膨満感、げっぷ、胃の鈍痛、食欲不振、全身倦怠感、吐き気や嘔吐、吐血など。以上の症状は、胃粘膜が萎縮し変化していく過程において、炎症やびらんが起こるのが原因と推定されるが、全く無症状という患者もいる。また、継続して不快感に悩まされるため、精神的な不安が起こり、頭痛や不眠などの神経的症状を引き起こすこともある。一般に40~50歳代以降に多くみられる。
[編集] 検査と診断
X線撮影でも大方の診断はつくが、内視鏡検査で胃粘膜の萎縮所見が確認できれば、容易に診断がつく。さらに正確な診断には、組織検査が必要である。慢性胃炎には、その程度によりシドニー分類という国際的な胃炎分類法があり、スコア化されているので分かりやすい。
[編集] 治療
慢性胃炎は、急性胃炎のように根治することはまれであるが、胃の不定愁訴に対し制酸剤やH2ブロッカー、胃粘膜保護薬などが有効である。また、多くの慢性胃炎がピロリ菌が原因で起きるといわれることから、ピロリ菌の除菌によって、胃粘膜の萎縮の改善が期待されるが、現在のところ病院・研究施設により結果にばらつきが多く、結論が出ていない。
ピロリ菌の除菌には2~3種類の抗生物質を同時に1~2週間服用し続ける。数種類の抗生物質を用いることで単独使用より高い効果が期待でき、抗生物質が効かなくなる耐性菌の発生を防御する目的がある。 なお、ピロリ菌検査と抗生物質による治療には、現在、健康保険が適用さず、また、どこの医療機関でも受けられるわけではない。
治療薬