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尺貫法 - Wikipedia

尺貫法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

尺貫法(しゃっかんほう)は、長さ面積などの単位系の一つ。東アジアで広く使用されている。尺貫法という名称は、長さの単位に、重さの単位にを基本の単位とすることによる。ただし、「貫」は日本独自の単位であり、従って尺貫法という名称も日本のみのものである。尺貫法と言った場合、狭義には日本固有の単位系のみを指す。尺貫法に対し、中国固有の単位系は貫ではなく斤であるので尺斤法という。本項では、広義の尺貫法として、中国を発祥として東アジア一円で使われている、あるいは使われていた単位系について説明する。

目次

[編集] 概要

尺貫法は中国が起源である。西洋のヤード・ポンド法などと同様、当初は身体の一部の長さや、穀物の重さなどが単位として使われていたが、次第に明確な定義が定められるようになった。その最たるものが前漢末、劉歆三統暦にある黄鍾秬黍説であり、長さは秬黍(きょしょ。クロキビ)の1粒の幅を1分(0.1寸)、黄鍾と呼ばれる音律を出す笛の管の長さを90分(9寸)とし、さらに黄鍾の管の容積(810立方分)を1龠(0.5合)、黄鍾の管に入る秬黍1,200粒の重さを12銖(0.5両)とした。この黄鍾秬黍説が後の度量衡制の基準となった。歴代の王朝が法令によって度量衡を定めたが、特に長さの単位は時代とともに長くなり、代以降は1寸が3cm程度でほぼ一定した。中国のほか、中国の影響を受けた東アジア一円(日本朝鮮など)で、その文化とともに取り入れられた。その後各地で独自の進化を遂げているが、値は中国の唐代のものからそれほど変化しておらず、元の値をほぼ保存している。

現在は、尺貫法を使用していた国はすべて国際単位系に移行しており、尺貫法を公式の単位としている国は存在しない。ただし、中国、韓国では民間レベルでは尺貫法の単位が使われ続けており、日本では国際単位系の単位を使用しているが、日本の住環境に適した尺度として、日本家屋の設計基準としては、尺を基準として使われることが一般的である。しかし、設計時の寸法基準はあくまでメートルである。

例外的に、真珠の取引単位は直径はセンチメートル、ネックレス等の長さはインチとされ、重量はグラム表記したことで混乱を招いた歴史があることから、世界的に「匁(もんめ、momme)」が国際単位として使われている。建築不動産関係では土地や床面積の面積として、2帖の面積に相当する「坪」が非公式ながら常用されている。不動産取引自体に直接「坪」という単位は使えないため、例えば住宅の建設費で、坪当たりの単価を示す場合には「坪あたり○万円」を使わず「3.3平方メートルあたり○万円」の形で表記される。

[編集] 単位

[編集] 長さ・距離(度)

長さ・距離の単位(度量衡の「度」)は、を基本の単位とする。他の単位は尺と独立に発生したと考えられるが、後に尺と関連づけられ、その整数倍または整数分の一となった。

1 = 36         ≒3.927キロメートル
  1町 = 60 = 360     ≒109.09メートル
    1間 = 6尺     ≒1.818メートル
    1 = 10尺     ≒3.03メートル
      1尺 = 10 = 10/33メートル ≒0.303メートル

尺は時代や地域によってその長さが異なる。また、同じ時代でも目的などによって複数の尺が使い分けられてきた。今日の日本では曲尺(かねじゃく。単に「尺」と言えばこちらを指す)とその1.25倍の長さの鯨尺(くじらしゃく)が残っている。詳細はを参照のこと。

高さについては尺のみを用いる。例えば「日本アルプスは約一万尺」のようにいう。深さについては(= 6尺)が用いられる。

間については、1間が6尺と明確に定められたのは明治の度量衡法においてである。それまでは、間は建築の際のモジュールを規定するだけで、「およそ6尺」という以外は特に定めはなく、「間」を用いる際はそれが何尺何寸であるかを示す必要があった。

尺の系統とは別に、通貨(一文銭)の直径を基準とする「」(もん)という単位があった。一文銭の直径は時代により若干の誤差があるが、おおよそ25ミリメートルであった。文は足や靴の単位として用いられた。十文(ともん)は約25センチメートルである。

[編集] 面積・地積

面積の単位には、メートル法と同じく長さの単位を組み立てて「方寸(平方寸)」「方尺(平方尺)」「方丈(平方丈)」のように言う。

ただし、土地の面積(地積)については特別の単位が用いられる。地積の基本の単位は坪または歩である。坪または歩は一辺が6尺の正方形の面積で、すなわち36平方尺となる。

1 = 10           ≒9917平方メートル
  1反(段) = 10         ≒991.7平方メートル
    1畝 = 30       ≒99.17平方メートル
      1坪(歩) = 10   = 400/121平方メートル ≒3.3058平方メートル
        1合 = 10   ≒0.33058平方メートル

平方メートルへの換算は、度量衡法での尺の定義より導かれたものである。

田畑や山林の地積には町、反、畝、歩を用い、宅地や家屋の地積には坪、合、勺を用いる。なお、合・勺は、体積の単位を流用したものである。

町・反・畝については、その値が1ヘクタール、10アール、1アールに非常に近い(実用上は等しいと言っても良い)ため、西洋の諸国では困難を極めた地積単位のメートル法への移行は、日本ではスムーズに行われた。ただし、坪だけはメートル法の単位できりの良い値にならないため、現在でも使用されている。合・勺は用いられず、坪に小数の値をつけて表される。歩も用いられることはなく、田畑・山林の地積についてはアールや平方メートルが用いられている。

田畑や山林について、面積の値が町・反・畝で終わるときに、通常、その後に「歩」をつけてちょうどの値であることを明示する。例えば、「3町」ではなく「3町歩」のように、また、2町4反歩、6反8畝歩のように言う。町よりも大きな面積については、一辺1里の正方形の面積を示す「方里」( = 1555.2町≒15.423平方キロメートル)を用いる。

[編集] 体積(量)

体積・容積の単位(度量衡の「量」)は、升を基本の単位とする。升の大きさは時代や地域によって大きく異なる(詳細はを参照のこと)が、升と他の単位との関係はほとんど古代から変わっていない。日本で升が現在の大きさになったのは江戸時代のことである。

1 = 10         ≒180.39リットル
  1斗 = 10       ≒18.039リットル
    1升 = 10   = 2401/1331リットル ≒1.8039リットル
      1合 = 10   ≒0.18039リットル

リットルへの換算は、度量衡法での尺の定義より導かれたものである。

土砂などについては、6尺立方に相当する立坪(単にとも)が用いられる。また、1立方尺をとも言う。

[編集] 重さ(衡)

重さ(度量衡の「衡」)は、貫を基本の単位とする。度量衡法において、貫は国際キログラム原器の4分の15の重さ(すなわち15/4キログラム = 3.75キログラム)と定められた。

江戸時代以前は匁を基本の単位としていた。匁は元々の名称を「銭」と言い、銭貨(日本では一文銭)の重さを単位としたものであった。一文銭1000枚分の重さとして定められたのが貫である。貫は通貨の単位(1000文。江戸時代には960文。明治時代には10銭)としても用いられるので、区別のために重さの方は貫目、通貨の方は貫文と呼んだ。

1 = 1000 = 3.75キログラム
  1匁 = 3.75グラム

度量衡法における元々の重さの単位の基準は、黍の重さであった。黍1200粒を12銖(後に「」と略記された)とし、6銖を1、4分を1、16両と1とした。重さの単位の銭は、この系統とは独立して発生したものである。1両は3.8銭(匁)程度であったが、唐代にこれの3倍を大両とする制度ができ、そこから1両は10銭(匁)とされるようになった。よって、1斤は160匁(600グラム)ということになる。

金貨・銀貨はその重さによって価値が定められ、当初は額面の重さと実際の重さが一致していたが、後に含有率や重量の劣る金貨が発行されるようになり、重量単位と通貨単位とが乖離することとなった。

[編集] 分量単位

長さ・重さの分量単位については、小数を表す文字をそのまま単位として使用している。例えば「」(ぶ)は、数としては10分の1を示すが、長さの単位としては10分の1寸、重さの単位としては10分の1匁となる。

  • 分 -- 10分の1
  • -- 100分の1
  • (毫) -- 1000分の1
  • -- 10000分の1

[編集] その他

建築関係などにおいて、ベニヤ板などの板材の大きさを表すのに「3×6版(さぶろくばん)」「4×8版(よんぱちばん、しはちばん)」などといった呼称が用いられることがある。これらは長さを尺(曲尺)で表したもので、前者は3尺×6尺(= 90.9cm×181.8cm)、後者は4尺×8尺(= 121.2cm×242.4cm)の大きさの板材を指すことが多いが、いわゆるコンパネと呼ばれるコンポジットパネルでは同一の呼称を用いても 91cm×182cm や 90cm×180cm の製品が存在する。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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