学校裏サイト
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学校裏サイト(がっこううらサイト)とは、ある特定の学校の話題のみを扱う非公式の匿名掲示板である。
ほとんどが部外者が入れないようパスワードを設定されていたり、携帯電話からのアクセスしか出来ない(PCからのアクセスはIPアドレスで判断され拒否される)・学校名で検索してもヒットしないようになっており、そのため検索などで探し出すのは容易ではない。日本国内の学校を扱う学校裏サイトは、2008年3月に発表された文部科学省による調査では3万8000サイト以上あるとされ、うち2割で特定の個人を対象とした中傷が確認出来たとのことである。その多くがスレッドフロート型掲示板を導入している[1]。なお、日本以外の文化圏に同様のものが存在しているかどうかははっきりしない。
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[編集] 概要
情報社会論を専門とする下田博次・群馬大学大学院社会情報学部教授によると、こうした匿名掲示板は少なくとも2005年頃から存在していたとされるが、いつ頃から一般的になったのかは不明。学校裏サイトの存在は近年、いじめ関連の一連の報道の中で取り上げられるようになり、2007年4月に大阪府警がある中学校の学校裏サイトの管理者を書類送検したことで学校裏サイトの存在は広く知られるようになった。共同通信の報道によると、この事件の際には書き込んだ内容が名誉棄損的な内容ではなく、侮辱的書き込みであったために、書き込んだ者のみが処罰され、管理人側には幇助罪が適用されることはなく嫌疑不十分で不起訴処分となっている。これは、刑法が規定する幇助罪は名誉毀損罪に対してのみであり、侮辱罪について幇助罪が適用された判例が無かったためである。一方、民事では2008年5月に、管理人の責任を認めて55万円の損害賠償の支払いを命じる判決が出されている。[2]
この一件でわかるように、学校裏サイトは決して「完全な匿名」ではなく、警察などの機関が動けば個人の特定は不可能ではないし、民事上の責任を科される場合もある。またこの事件で明らかになったように、学校裏サイトの開設者は現役の在校生に限られるわけではなく、学校の卒業者や保護者、それ以外の第三者による場合もある。
同じく下田によると、ブラウザ機能付き携帯電話を子供が持つことが一般的ではない日本以外の国では、こうした匿名掲示板の問題は顕在化していないとされる。
また、携帯電話からの書き込みでは携帯電話会社が問い合わせに応じないため、なかなか特定されにくいという問題もある。そのため、携帯電話から利用できる学校裏サイトは無法状態になる傾向が強いとされる[要出典]。学校裏サイトは主に全国の中学校や一部の高等学校(偏差値の低い、いわゆる教育困難校に多い傾向がある)に多く見られる[要出典]。 現在、全国の小中高校の39000校のうち38000校の裏サイトがあるとされている。
[編集] 問題点
下田によると、こうした匿名掲示板には、実名を挙げての誹謗中傷や猥褻画像が大量に書き込まれているとされる。このうち、誹謗中傷については、大阪での事件でも問題になったように、在校生などが標的になる他、都児童相談センター児童心理司・山脇由貴子の『教室の悪魔:見えない「いじめ」を解決するために』では、在校生の保護者に関するデマがサイト内で流されて、最終的に被害者が転校を余儀無くされるという事例も紹介されている。
またイニシャルや伏字などでの誹謗・中傷が行われることもあるため、特定の個人ではなく該当のイニシャルを持つ全員が被害に遭う事もある[要出典]。
2008年に横浜市が行った調査では、市内にある145の中学校のうち68の中学校で学校裏サイトへの削除依頼を行ったことがあるとされるが、この際、削除依頼を担当した教職員も誹謗中傷の標的となるケースが少なくないという[3]。[4]
[編集] 対策
現在の法制度では、こうした匿名掲示板の開設者を刑事的に処罰することは出来ず、決定的な対策は存在しない。下田はブラウザ機能付き携帯電話を安易に子供に与えている日本の現状が最大の問題であるとしており、フィルタリング機能の充実やブラウザ機能付き携帯電話を子供に与えることのリスクの周知(ペアレンタルロックはアダルトや出会い系など成年者対象サイトにしか有効ではない)、インターネットリテラシー教育などの対策を組み合わせてゆくしかないと指摘している。
同時に、携帯電話からの書き込みは、書き込む度にホスト名やIPアドレスが間に介在するプロキシサーバによって変化するため、特定されにくいという要因も指摘されている[要出典]。また、携帯電話の個別識別情報についても個人情報の範疇に該当する可能性があるため、掲示板サービスを利用している管理者が直接その番号を知ることができるケースはほとんど無く、実質、携帯電話からの生徒による書き込みを制止するための手段は現状では存在しない。そのため、携帯電話会社に対しても何らかの対策を講じることが求められている[要出典]。
また、管理者が管理自体を放棄しているケースでは、削除を求めることも困難である。管理が放棄されている掲示板において、検索エンジンで実名での誹謗中傷が検索出来るケースでは、何十年という将来に渡っても被害を受け続けることも想定される。また、管理者が削除依頼を掲載することも多々あり、削除を依頼するという行為自体が被害を拡大させるケースもある[要出典]。
そのため、掲示板サービスを運営する業者については、管理人が削除しない場合には代理で削除するべきではないかという議論が行われているが[要出典]、利用者自身のプログラムを使い構築した掲示板サイトの場合は運営するホスティングプロバイダでさえ特定の書き込みのみを削除をすることは技術的に難しい。したがって、削除する場合はホスティングの利用を停止させるという方法以外に取り得ないと言える[要出典]。また、利用者が独自ドメインを使用している場合は仮に特定のホスティングプロバイダが契約を解除しても、利用者が新たなホスティングプロバイダと契約すれば引き続き以前と全く同じ状態でサイトを公開できる為、実効性の高さには疑問が付いて回る[要出典]。
現時点でのインターネットに関する法規制はプロバイダ責任制限法以外に無いことから、被害者の対応は非常に限られたものとなっている。また、海外のホスティングプロバイダを使った場合は日本の法令が適用されないケースもあることから違法性の高い掲示板を海外のサーバーに置くことにより管理人の責任を免れようとする者も多く、管理人が誰なのかすら判明しないこともある[要出典]。さらに、検索エンジンに対する規制も存在しないことから、検索結果に表示される内容についても検索エンジン運営会社に対応を求めることは難しい[要出典]。なお、ヤフーをはじめとする検索エンジン運営会社の多くは、検索結果に表示される内容についての削除依頼は、依頼内容の正当性や削除権限の有無を確かめることができないとして、削除依頼自体を受け付けていない会社も多い。
2007年12月13日、PC版の学校裏サイトの一覧表を掲載したサイトが閉鎖したため、アクセスが以降不可となったとされている。
[編集] 参考文献
山脇由貴子『教室の悪魔:見えない「いじめ」を解決するために』(ポプラ社、2006年)
[編集] 注
- ^ 学校裏サイト、3万8千に 2割に中傷、文科省初調査
- ^ 学校裏サイト、管理人に賠償命令…大阪地裁
- ^ 学校裏サイト、先生も標的 横浜市教委が調査
- ^ 「学校裏サイト」削除依頼し、休職に追い込まれる
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 学校裏サイトで、今何が行われているのか~子どもとケータイの闇(日経BP)
- 学校裏サイト問題関連記事(Tomiichi.com)