ユビキタスコンピューティング
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ユビキタスコンピューティング(英 ubiquitous computing、ubicompと略されることもある)は、コンピュータを実世界中にあまねく存在させるというコンセプトを示した用語である。パーベイシブ コンピューティング(英 pervasive computing)と呼ばれることもある。
アメリカのマーク・ワイザー(Mark Weiser ゼロックスパロ・アルト研究所)によって1991年に提唱された概念である。当初は、タブ、パッド、ボードという異なる大きさのデバイスを組み合わせて用いるというアイディアであった。しかし、現在はさまざまなコンピュータを、その用途に応じて実世界中において普遍的に用いるという概念のみを指して用いられることが多い。
日本の坂村健(東京大学)が1980年代にTRONを中心とした「どこでもコンピュータ」の概念を提唱し、その概念が、ユビキタスコンピューティングのコンセプトに大きく影響を及ぼしたとの指摘もある。
ユビキタスコンピューティングに対し、「あらゆる場所であらゆるモノがネットワークにつながる」ことをさしてユビキタスと称されることもあるが、このような考え方は正確にはユビキタスネットワークと呼ばれる。
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[編集] ユビキタスIDによるユビキタスコンピューティング
ワイザーの提唱するユビキタスコンピューティングでは、1990年代半ばから、アメリカを始め多くの国で爆発的な普及を見せたワールド・ワイド・ウェブが、基本的には家庭内のパーソナルコンピュータによる利用を想定していたことに対し、ユビキタスコンピューティングにおいては、ワイヤレスネットワークなどに支えられ、携帯電話端末やPDAなど様々なデバイスが接続されることが想定されている。
対して、坂村の考えでは、あらゆるモノ(携帯電話やPDAなどの情報端末に留まらない)にコンピュータが組み込まれ、コンピュータ同士が協調動作するという事に力点が置かれている。それにより、人間はコンピュータの存在を意識することなく、高い利便性を得ることが出来る。具体的には、以下のような例が挙げられている。
- 薬ビン自体にコンピュータを内蔵させ、併用すると著しい副作用のある薬を一緒に飲もうとすると、薬ビンから携帯電話に電話がかかってきて警告を発してくれる
- ゴミになるモノにコンピュータを取り付けておき、焼却炉と交信を行い処理方法を決定する
- 衣服にコンピュータを取り付け、体温を測定することで、空調を調節する
これらは、一般の携帯デバイスのように、人間の道具として従属(他律動作)するものではなく、自律動作をする一種のロボットであるとも言える。自律動作の側面を強調する場合や、高度な自律動作に関して、「ユビキタスロボット」と言うタームが使われる事もある。
なお坂村は、ユビキタスコンピューティングに対し、「どこでもコンピュータ」という用語を用いていたが、現在は併用している(あまりにもそのままのネーミングで予算が下りないという理由らしい[要出典])
[編集] ユビキタスコンピューティングをテーマに関連したプロジェクト
- 電脳住宅など、ユビキタス社会につながる実証実験がなされた 。
[編集] 参考文献
- 坂村 健著『ユビキタス・コンピュータ革命』株式会社角川書店、2002年6月、ISBN 4-04-704088-6