大崎支線
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大崎支線(おおさきしせん)とは、JR東日本の東海道貨物支線(横須賀線)品川駅~西大井駅間にある蛇窪(へびくぼ)信号場と山手線大崎駅とを結ぶ線路の通称。横浜駅方面から大崎駅へ直通するルートを構成する。全長は約2kmに及び、複線電化の立派な設備を有しているが、全区間が大崎駅構内となるため、正式な路線とはみなされていない。「蛇窪支線」とも呼ばれる。
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[編集] ルート概要
起点は蛇窪信号場(分岐点の通称であり建物があるわけではない。大崎駅構内扱い)である。横浜方面から品川方面へ向かう列車が西大井駅を出発し、しばらく進むと、東急大井町線下神明駅の高架をくぐったあたりに右側への分岐箇所が見えてくる。これが蛇窪信号場で、直進すれば品川駅へ、右に分岐すれば大崎支線に入る。大崎支線に入ってまもなくすると左カーブとなり、右側に大きな建物群が寄せてくる。これはJR東日本の東京総合車両センター(旧大井工場)である。センターの敷地に沿って左へ急カーブを曲がり続けると、上下線間の地下から複線の線路が上がってくる。これが平成14年(2002年)12月に開業したりんかい線(東京臨海高速鉄道)である。やがてりんかい線と平行して、先ほど別れた東海道貨物線と東海道新幹線のガードをくぐり、りんかい線と相互に合流しながら大崎駅に進入する。
[編集] 沿革
大崎支線は、東海道貨物線と山手貨物線を短絡するために建設された。東海道貨物線と山手貨物線の通し運転をするのに、品川駅でスイッチバックが必要になるのを防ぐためで、起点が東海道貨物線側であることから、東海道貨物線の支線として位置づけられたと思われる。ただし、JR東日本発足後は、正式に大崎駅構内(山手線)扱いとなったため、現在は山手線に含まれている(JR東日本社員による学術論文中にも、山手貨物線に含むとする内容が散見される)。
建設当初から貨物輸送の大動脈としての役割を担い、旅客列車はスーパービュー踊り子号、通勤ライナーや臨時列車などが運転されるにとどまっていたが、平成13年(2001年)12月からは湘南新宿ラインのルートとなり、旅客列車本数が大幅に増加した。また、りんかい線大崎駅乗入れ工事の際には、大崎支線の上下線の間にりんかい線トンネルの出口を設ける形としたため、大規模な線路切換工事を行い、線形を改修した。
[編集] 短絡線構想
湘南新宿ラインの大増発に伴い、品鶴線との合流点である蛇窪信号場の平面交差がダイヤ上のボトルネックになっており、2015年に予定する相模鉄道との直通が始まれば対応し切れなくなる恐れがある。このため大崎駅との間に旅客列車専用の短絡線を新設して平面交差を解消する構想が持ち上がった。短絡線は急勾配が発生するため、上り「電車」専用となる見込みで、大崎支線の複線は貨物列車の運行のために維持されることになる。
しかし、実現には以下の課題もある。
- 付近は住宅密集地であり、用地捻出・取得に困難を伴うことが容易に予想できる(すでに地元説明会を開催しているが、難色を示す勢力がある)。
- この短絡線は非常に短距離であるがために、急カーブ(半径160m)かつ下り急勾配(最大35‰)が形成されてしまい、運転時の徐行は避けられない。双方の分岐点前後でも徐行すれば、結局ダイヤのボトルネックになってしまう。また福知山線脱線事故により、急カーブ路線の新設を避けるべきとの意見もある。
- 構想の短絡線の距離では、ダイヤが乱れた際、15両編成の列車がホームに入れないとき、安全に待避する距離がない。このため、大崎駅の上り線ホームを少々北へ移設することが望ましいが、北側の線路配線をいじる必要がある。
- 分岐点周辺では品鶴線の直上を走る東海道新幹線の橋脚を移設する必要がある。
[編集] 運賃計算の“特例”
実は、大崎支線は専用の管理キロを持っており、大崎駅6, 7番線の真ん中あたりに「2km018m大崎支線」の標識がある。ただし、前述したとおり大崎支線は営業線とみなされていない(時刻表の地図にも載っていない)。よって、湘南新宿ライン等大崎支線を通る列車の運賃は、実際には経由しない品川経由の営業キロに基づき計算されている。