Wikipedia:外来語表記法/ロシア語
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この文書は、ロシア語由来の外来語について、表記を決めるための参考資料を提示するものです。特定の表記を強制するものではありません。もちろん、編集は大胆に。
この文書を利用する際には、Wikipedia:外来語表記法も参照してください。
目次 |
[編集] 文字
現在のロシア語で使われるキリル文字の読み方は以下の通りである。
アー | ベー | ヴェー | ゲー | デー | イェー | ヨー | ジェー | ゼー | イー | イー クラートカイェ |
カー | エル | エム | エヌ | オー | ペー |
А | Б | В | Г | Д | Е | Ё | Ж | З | И | Й | К | Л | М | Н | О | П |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
エル | エス | テー | ウー | エフ | ハー | ツェー | チェー | シャー | シシャー (シチャー) |
トゥヴョールドゥィ ズナーク |
ウィー | ミャーフキィ ズナーク |
エー | ユー | ヤー | |
Р | С | Т | У | Ф | Х | Ц | Ч | Ш | Щ | Ъ | Ы | Ь | Э | Ю | Я |
また以下のキリル文字の表には上記の他のキリル文字も含まれている。
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一部の文字は環境によって表示されないことがある(詳細) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
А | Б | В | Г | Ґ | Д | Ѓ | Ђ | Е | Є | Ѐ | Ё | Ж | З | Ѕ | И | І | Ї | Й | Ѝ | Ј | К | Л | Љ | М | Н | Њ | О | Ө | П | Р | С | Т |
а | б | в | г | ґ | д | ѓ | ђ | е | є | ѐ | ё | ж | з | ѕ | и | і | ї | й | ѝ | ј | к | л | љ | м | н | њ | о | ө | п | р | с | т |
Ћ | Ќ | Ѹ | У | Ү | Ў | Ф | Х | Ѡ | Ц | Ч | Џ | Ш | Щ | Ъ | Ы | Ь | Ѣ | Э | Ю | Я | ІА | Ѥ | Ѧ | Ѫ | Ѩ | Ѭ | Ѯ | Ѱ | Ѳ | Ѵ | Ѷ | |
ћ | ќ | ѹ | у | ү | ў | ф | х | ѡ | ц | ч | џ | ш | щ | ъ | ы | ь | ѣ | э | ю | я | іа | ѥ | ѧ | ѫ | ѩ | ѭ | ѯ | ѱ | ѳ | ѵ | ѷ |
[編集] アクセント・発音
- а, о, у, э, ы は硬母音、я, ё, ю, е, и は軟母音に分類されている。また й は子音である。
- ё には必ずアクセントがある。
- у 以外の母音は、そこにアクセントがない場合は音が変化する。アクセントの前後など、位置によって変化の仕方が違うが、ここでは詳細には触れない。(例):а, о は[ъ]、и, э は [иэ](и склонно к э)
- 子音 й は通常は母音の後に置かれる。例外として外来語の Йокогама(横浜)などがある。
- /zn/ や /nr/ といった、西欧語に比較的見られない子音連続が存在する。
- 例: знание /zna-/(知識)
- 語頭に現れるもの
- zv, zd, zn, zl, zm, zr, mgl, mgn, ml, mn, nr... など
- 一部の子音は、派生語などにおいて、規則的に別の子音に変化することがある。
[編集] 基本原則
- “ロシア語の日本語への転写”と“ロシア語の標準的な発音”とは異なる場合があります。日本語へ転写する際には、基本的にはロシア語表記を文字通りに転写します。
- 例: Москва → モスクワ
-
- ロシア語の発音では「マスクヴァー」に近い。だが、文字上ではモスクヴァと書かれている。ヴの文字を使用しない方法で、モスクワとされている。
- ヴの文字を含む部分は他の表記に置き換えられる場合もあります。例として、ヴァの部分を、バまたはワで表記する場合もあります。(ロシア人名においては、一般的に女性の姓の最後の部分のヴァがワに置き換えられる習慣があります。)
- ロシア語を日本語に転写する場合は、カタカナで記述するようにしてください。必要に応じてロシア語のキリル文字表記を、括弧でくくるなどの方法で追加してください。 Москва のように表示させるには、例として {{lang|ru|Москва}} と記述します。
- 必要に応じて、ロシア語の標準的な発音に近いと思われるカタカナ表記を併記してください。
- 例:モスクワ (ロシア語:Москва マスクヴァー)
- アクセント位置に使用されるカタカナの長音記号「ー」は、用いても用いなくても構いません。ただし、間違った位置に長音記号を入れないようにしてください。逆に、長音記号を用いた場合には、その位置がアクセントの位置だと判断される場合がありますので、使用の際には間違いがないか十分に確認してからご使用ください。
- ラテン文字への転写については、転写の方法が数多く存在し、中立性を尊重してすべてを書こうとすると煩雑になるので、必ずしもラテン文字への転写の必要はありません。
- ロシア語には、方言が存在し、また標準的な発音とは異なる発音がされる場合があります。基本的に、それらの方言や発音は考慮に入れなくても良いです。ペテルブルクであっても、ペテルブルクでの発音にする必要はありません。現在のロシア語の標準的な言葉や発音に沿うようにしてください。
[編集] 人名
- 日本で一般に利用されている表記を尊重してください。表記が統一されていない場合は、個別に判断することが必要です。
- 「名・姓」の順に記載してください。ロシア語圏では慣習として、公的な文面や手紙の宛名書きなどの他、事典類において「<姓>,<名> <父称>」の順で記述されている場合がありますので注意してください。
- 名と姓の間は「・(全角中黒)」で区切ってください。
- 父称は記事名へは入れず、記事本文の冒頭で記述するようにしてください。これは父称を「ミドルネーム」として扱う場合の、一般的なミドルネームの扱いに準じています。ただし姓を記事名に入れられない場合などで、記事名が「名・父称・姓」という構造にならない場合は、その限りではありません。
[編集] 地名
- 日本で発行されている地図で一般的に用いられている表記を尊重してください。表記が統一されていない場合や、地名が地図にない場合は、転写の原則に沿って個別に判断することが必要です。
[編集] 企業名
- 企業が日本において使用している日本語の表記が存在すればそれを使用してください。その他の場合は、転写の原則に沿うようにしてください。
[編集] その他
- 人名・地名が元になっている名称(航空機名、艦船名など)は、それらの人名・地名を考慮し、なるべく関連が分かるような表記を選んでください。
[編集] 日本語表記の例
(<キリル文字表記> : <(慣用的な)日本語表記> ; <ロシア語の標準的な発音に沿った表記>)
なお、カタカナの長音記号は記載する必要がない場合もあるが、標準的な発音に沿った表記の部分では、アクセントの位置を明示するためここではすべて長音記号が記載されている。
[編集] ロシア
- Россия:ロシア、ロシヤ;ラスィーヤ、ラシーヤ
- Россиянин:ロシア連邦国民(男性);ラスィヤーニン、ラシヤーニン
- Русский:ロシア民族(男性);ルースキイ
- Казак:コサック、カサーク、コザーク、カザーク、コザックなど;カザーク
[編集] 人名
- Екатерина:エカチェリーナ;イカチリーナ
- Анна:アンナ;アーンナ
- Чехов:チェーホフ、チェホフ;チェーハフ
- Ленин:レーニン;リェーニン
- Толстой:トルストイ;タルストーイ
- Достоевский:ドストエフスキー、ドストエーフスキイ、ドストイェーフスキイ;ダスタイェーフスキイ
- Чайковский:チャイコフスキー;チイコーフスキイ
- Маяковский:マヤコフスキー;マイコーフスキイ
- -ия:(イア);(イヤ)
[編集] 地名
- Москва:モスクワ;マスクヴァー
- Владивосток:ウラジオストク、ウラジオストック、ヴラジヴォストーク;ヴラヂヴァストーク
- Кавказ:カフカース、カフカス、コーカサス;カフカース
- Находка:ナホトカ;ナホートカ
[編集] 飲食物
[編集] ロシア語由来の外来語
()内は、ロシア語での本来の意味である。
- アジト - агитпункт(扇動本部)
- イクラ - икра(魚卵)
- インテリゲンチヤ(インテリゲンチャ、インテリゲンツィヤ、インテリゲンツィアとも) - интеллигенция(知識人)
- ウォツカ - водка(水 + 指小辞)
- オホーツク海 - Охотское море
- カンパ - кампания(キャンペーン)
- コミンテルン - Коминтерн ← Коммунистический интернационал
- コルホーズ - колхоз ← коллектив хозяйство(集団農場)
- コンビナート - комбинат
- サハリン - Сахалин
- セイウチ - сивуч(トド)
- ソビエト(ソヴィエト、ソヴェトとも) - Совет(会議)
- ソフホーズ - совхоз ← советское хозяйство(ソビエトの農場)
- タイガ - тайга(密林)
- チェカ - ЧК ← чрезвычайная комиссия по борьбе с контрреволюцией и саботажем(反革命と怠業に対する闘争のための非常委員会)
- ツァーリ(ツァーとも) - царь(皇帝)
- ツンドラ(サーミ語からロシア語を経由) - тундра
- デカブリスト - декабрист(十二月党員)
- トーチカ - точка(点、地点)
- トロイカ - тройка(3番、3つ組)
- トロツキスト(しばしば軽蔑の意味をこめて) - троцкист
- ノルマ - норма
- バラライカ - балалайка
- ヴ・ナロード - в народ(人民の中へ)
- ペチカ - печка(暖炉、ストーブ)
- ペレストロイカ - перестройка(建て直し)
- ボリシェヴィキ(ボルシェヴィキとも) - большевики(多数派)
- ボルシチ - борщ
- メンシェヴィキ - меньшевики(少数派)
[編集] ローマ字表記の使用について
ロシア語のキリル文字表記は、しばしばラテン文字(ローマ字)転写で表されることがあります。各ページ内では、必要があればラテン文字転写を記載してください。ただし、その際にはいくつかの点について注意してください。
一般に、ロシア語のキリル文字表記のラテン文字転写にはいくつかの方法があります。主なものでは、ロシア科学アカデミーなど各国の科学アカデミーで制定されているものがあります。しかし、そこでもいくつかの表記方法が認められています。この他では、アメリカ合衆国の図書館でよく用いられる表記、イギリスの図書館でよく用いられる表記、そして国際標準化機構(ISO)によって定められた表記などがあります。学術的な分野ではISO方式が用いられる例が多く見られますが、それ以外では英語方式かドイツ語方式が優勢のようです。
表記バリエーションがどのくらい生じるかといえば、例えばПущинという名前をラテン字で表記しようと思った場合、主なものだけでもPushchin、Puschtschin、Puszczin、Puścin、Puscsin、Puščin、Puschinなどが候補として考えられます。こうした転写バリエーションをすべてページ内で網羅することは困難ですし、たとえその偉業を達成したとしてもそれが必ずしも閲覧者の利益になるとは限りません。従って、ラテン文字転写が必要であると考える場合には、こうした候補の中からいくつか(たいてい1つか2つ)の表記方法を選ぶことになります。
従って、ページに記載する際には「ラテン文字転写:xxxx」という方式は取ることはできません。飽くまでそれは「ラテン文字転写の例:xxxx」なのです。
例外もあります。国名や都市名であれば、その国や都市で公式に定められている表記があればそれは唯一無二の「ラテン文字転写」と扱うことができます。人物であればパスポートに書かれた表記や本人が公式に用いているラテン文字表記が記載できる場合は「ラテン文字転写:xxxx」と書くことができます。また、それに準じて公的・公式に用いられる表記も同様です(例えば、スポーツ選手の場合その所属する団体・協会・機構などに登録してあるラテン文字表記名)。
それから、ラテン文字転写を記載する際にはこれが「日本語版」ウィキペディアであるという点を忘れないで下さい。本当にそのラテン文字転写は日本語版利用者にとって必要でしょうか? そのラテン文字表記はキリル文字表記のみの場合と比べて日本語版利用者に有益な情報をより多くもたらすでしょうか?
こういった点に留意し、各ページにラテン文字表記を記載するようにしてください。
[編集] 参考文献
このページに加筆したときに参考にしたものがありましたら追加してください。
- 内閣告示『外来語の表記』
[編集] 関連項目
- Wikipedia:外来語表記法/ウクライナ語・Wikipedia:外来語表記法/ベラルーシ語