塩漬け
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塩漬け(しおづけ)とは、古くから用いられてきた食べ物(特に腐敗してしまいやすい物)を、長期保存のためや、味を付けるために食塩に漬けておいたもの、または塩に漬けておく方法そのもの。
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[編集] 概要
これらは、腐敗しやすい畜肉や魚介類・野菜等を塩分濃度の高い状態とする事で細菌(雑菌)の繁殖しにくい環境において保存する手段として、古くから利用されてきた。特に魚介類では塩辛・野菜類では漬け物の一種とされる。
畜肉の場合にはハム等が塩を使った加工をするが、こちらは一度塩をまぶしたら適度に払って風通しの良い冷暗所で熟成されるため、余りハムを指して塩漬けとは呼ばない。塩漬け肉などは、樽などに切った肉と塩を漬け込んで作られるイメージのほうが強い。
塩の殺菌効果(細菌の概念が無かった時代には、単に「腐敗を防ぐ効果」とみなされた)に関しては余りにも古くから知られていたため、この塩漬けによる食糧保存がいつ頃から始まったのかは不明である。世界的にも塩を大量に用いる事で保存性を高めた食品は多く、また熟成により生の状態よりも味が良くなるとして好まれた事もあって冷蔵庫が普及するまでは様々な食品の保存に塩(食塩)が用いられた。
ただし好塩菌の中でも高度好塩菌のような塩分濃度の極めて高い環境を好む菌もあるため、食塩のみでは完全に腐敗を防ぐ事は出来ない。しかしそのような環境でのみ生息する特定の菌類を繁殖させ、これを食品加工に用いる場合がある。(→くさやなど)
[編集] 食品以外
一般には食品保存法として利用される塩漬けであるが、その一方で様々な「傷み易いもの」を保存するために利用された。
[編集] 人の遺体
遺体の保存方法として利用された例も多い。中国や日本では戦国時代以降、打ち倒した相手の首を切り落として首級として持ち帰る際に、首を塩漬けにして腐敗を防いだ。また権力者が客死した際や埋葬する際、あるいは他の季節なら問題なくとも、真夏に死去して葬儀の間に遺体が腐敗しやすい場合など、塩漬けにして遺体を保存する事もあった(文禄慶長の役の耳塚を参照)。
ヨーロッパでも第一次世界大戦の頃までは、遺体を戦地から塩漬けにして輸送する事も在った模様である。
[編集] 学術的に貴重な標本
生物標本を保存のために一時的ないし一定期間、塩漬けにして保存する事がある。これは現在では様々な防腐処理が発達したために取られない方法であるが、未開国で採取された標本の保存のために使用される事があった。
シーラカンスでははじめて捕獲された標本が、塩漬けによって保管されていた。ただしこの方法は標本の水分が抜けてしまうために原型を損なう事も多く、シーラカンスでも当初は塩漬けになっていたために、その生物的特長が判りにくかった模様である。
[編集] 転用
転じて、購入後に価値が下落した不動産・株券などを、値上がりを期待して長期間保有し続けることや、しなければならないことを先送りにすることの意味にも使う。
[編集] 塩漬け不動産
日本でのバブル景気の頃に、銀行は土地や建物を担保に資金を貸し出したが、現在ではこれらの不動産の市場価格は下落、土地や建物の管理維持費だけは掛かり続け、しかも売ろうにも買い手がつかないと云う状況にもなっている。
このような担保になっているのに現金化できない不良資産は日本国内に数十兆円規模にも上ると見られている。
その一方で占有屋と呼ばれる、不動産売買を妨害して金銭を要求するグループの問題もあり、これが居座っているようなケースでも、塩漬け不動産と呼ばれる事もある。
[編集] バブル絵画の塩漬け
日本ではバブル景気の頃に、海外の美術品や絵画が投機目的で美術ブローカーらによって、海外オークションで買い漁られた。
これらは当時の市場価値を逸脱して値が付けられたため、後に不景気になって売り出そうにも、市場評価価格は当時の美術ブローカーが買った価格よりもはるかに廉くなっているケースも多く、投機目的でこれを収集した企業では「売れば赤字」という状況から売れず、また一部では倒産企業から財産として差し押さえるも、やはり売れないという状況の美術品も発生、これらは企業の保管庫で死蔵される状況となっている。
このような状況を揶揄して、「塩漬け絵画」等と呼ぶ者もいる。
[編集] 関連項目
- 元は塩漬けの魚から出た汁を調味料として使ったのが興りだと言われている。醤油は魚醤の魚の代わりに大豆蛋白を利用したもの。
- この食品(缶詰)は、主に保存のためではなく味付けのために塩が多用されているが、その味は極めてしょっぱい。