北方艦隊
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北方艦隊(ロシア語:Северный флотスィェーヴィェルヌィイ・フロート;略称:СФ)は、ムールマンスクに司令部を置くロシア連邦海軍の艦隊である。白海やバレンツ海など北極圏の防備を担当していることから、しばしば北洋艦隊とも呼ばれる。艦隊主力はセヴェロモルスクに置かれており、このためセヴェロモルスクは閉鎖都市となっている。
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[編集] 概要
北方艦隊は、ロシアでは最も若い艦隊である。設置されたのは1933年のことであり、当時は赤色海軍、のちソ連海軍に所属した。ソ連時代後半には多数の原子力潜水艦を擁したことで知られ、最大で200 隻の潜水艦が所属していた。また、航空母艦や大型のミサイル巡洋艦も保有し、ソ連海軍の中でも特に有力な艦隊であった。
しかし、ソ連崩壊後には逆にこれらの大型艦が重荷となった。北方艦隊では原子力潜水艦やキーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦の維持を優先したことから、有力なソヴレメンヌイ級駆逐艦はじめ他の艦船の多くが活動不可能な状態に陥った。一部の艦船は整備を受けられないまま退役を余儀なくされ、北方艦隊の勢力は大きくそがれることとなった。
2000年代に入りロシア連邦の経済状況が改善する中でこうした危機的状況も徐々に改善しつつあり、活動を休止していた艦船も一部が戦列に復帰している。
2007年11月27日、ロシア海軍総司令官ウラジーミル・ヴィソツキー大将は、北方艦隊基地へ出張中に「ロシア北方艦隊の行動海域は、大幅に拡大される」と発言した。
この発言は、海外では注目されなかったが、ヴィソツキー発言から8日後の12月5日、第43ロケット艦師団所属の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ、第2対潜艦師団所属の大型対潜艦アドミラル・レーフチェンコ、アドミラル・チャバネンコ、第16支援艦旅団所属の大型海上給油艦セルゲイ・オシポフ、救助曳航艦ニコライ・チケルで構成される戦闘艦艇グループがセヴェロモルスクを抜錨、2ヶ月間の北東大西洋及び地中海への遠征へと出発した。戦闘艦艇グループは、北方艦隊司令官ニコライ・マクシーモフ中将が率い、艦隊運用は第43ロケット艦師団司令官アレクサンドル・トゥリーリン少将が行う。
[編集] 構成
2007年現在、ロシア連邦の北方艦隊は、連邦海軍の中で最有力の艦隊であるとされている。
攻撃部隊は、原子力あるいはディーゼル動力の潜水艦と航空母艦を主力に、巡洋艦、駆逐艦、大型対潜艦など一通りの水上戦闘艦艇を保有している。北方艦隊所属の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは、2007年現在ロシア海軍にとって唯一の航空母艦である。
この他、北方艦隊には対潜哨戒機やヘリコプターを中心とした海軍航空隊も所属し、これらは水上艦艇と協力して敵潜水艦や不審船の脅威から国土を守る任務についている。第61海軍歩兵旅団という陸戦部隊も所属し、複数の大型揚陸艦からなる上陸部隊も構成されているが、規模はあまり大きくなく、輸送力は限られている。
なお、この他に北方艦隊の担当領域ではロシア国境軍の艦艇も活動している。これは海軍艦艇ではなく、北方艦隊とは別組織である。
[編集] 第7大西洋作戦戦隊
- 第43ロケット艦師団
- 1143.5型重航空巡洋艦(アドミラル・クズネツォフ級)
- 1144「オルラーン」型重原子力ミサイル巡洋艦(キーロフ級)
- ピョートル・ヴェリーキイ、アドミラル・ナヒーモフ(改装中)
- 1164「アトラーント」型ミサイル巡洋艦(スラヴァ級)
- マールシャル・ウスチーノフ
- 956「サールィチ」型駆逐艦(ソヴレメンヌイ級)
- アドミラル・ウシャコーフ、グレミャーシチイ(旧ベズーデルジュヌイ、2007年12月9日改名)、ラストロープヌイ(修理中)
- 第2対潜艦師団
- 1155「フレガート」型大型対潜艦(ウダロイ級)
- アドミラル・チャバネンコ、セヴェロモルスク、アドミラル・レーフチェンコ、アドミラル・ハルラーモフ(予備役)
[編集] 第11潜水艦戦隊(原子力潜水艦)
- 第11潜水艦師団(ザーパドナヤ・リーツァ、ボリシャーヤ・ロパートカ湾)
- 949A「アンテイ」型巡航ミサイル原潜(オスカーII型)
- K-119ヴォローネシ、K-266オリョール、K-410スモレンスク、K-148クラスノダール(予備役)
- 671RTM「シュチューカ」型多目的原潜(ヴィクターIII型)
- B-138ポリャールヌィエ・ゾーリ、B-388ソスノーヴイ・ボール
- 705K「リーラ」型多目的原潜(アルファ型)
- K-373(係留試験艦)
- 第18潜水艦師団(ザーパドナヤ・リーツァ、ネールピチヤ湾)
- 941「アクーラ」型戦略重ミサイル潜水巡洋艦(タイフーン型)
- TK-208ドミートリイ・ドンスコイ、TK-17アルハンゲリスク、TK-20セヴェルスターリ
- 第7潜水艦師団(ヴィジャーエヴォ)
- 945/945A型多目的原潜(シエラ型)
- B-276コストロマ(予備役)(945型)、B-336プスコーフ、B-534ニージュニイ・ノーヴゴロト(945A型)
- 671RTM「シュチューカ」型多目的原潜(ヴィクターIII型)
- B-448タンボフ、B-292ペルミ(修理中)、B-414ダニール・モスコーフスキイ(予備役)
[編集] 第12潜水戦隊(原子力潜水艦)
- 第31潜水艦師団(ガジエヴォ、ヤーゲリナヤ湾)
- 667BDRM「デリフィーン」型戦略重ミサイル潜水巡洋艦(デルタIV型)
- K-117ブリャンスク、K-51ヴァルホトゥーリエ、K-84エカテリンブルク、K-114トゥーラ、K-407ノヴォモスコーフスク、K-18カレーリヤ(修理中)
- 667BDR「カリマール」型戦略重ミサイル潜水巡洋艦(デルタIII型)
- K-496ボリソグレープスク、K-44リャザニ
- 第24潜水艦師団(ガジエヴォ、ヤーゲリナヤ湾)
- 971「シュチューカB」型多目的原潜(アクラ型)
- K-328レオパールト、K-461ヴォールク、K-154チーグル、K-157ヴェープリ、K-335ゲパールト、K-317パンテーラ
- 第49潜水艦旅団(ガジエヴォ、オレーニヤ湾)、K-480アク・バルス(予備役)
- 09780「ナヴァーガ」型特務原潜(ヤンキー・ストレッチ型)
- BS-411(予備役)
- 667BDRM「デリフィーン」型戦略重ミサイル潜水巡洋艦(デルタIV型)
- BS-64(K-64「ヴラジーミル」より改修)
- 1910「カシャロート」型特務原潜(ユニフォーム型)
- AS-13、AS-14、AS-15
- 1083.1型小型特務原潜(パルタス型)
- AS-12
- 667BDR「カリマール」型特務原潜(デルタストレッチ型)
- KS-129
- ガジエヴォへ配備予定(建造中)
- 955「ボレイ」型戦略重ミサイル潜水巡洋艦(ボレイ型)
[編集] コラ小艦隊
- 第121揚陸艦旅団
- 1174「エジノローク」型大型揚陸艦(イワン・ロゴフ級)
- ミトロファン・モスカレンコ
- 775型大型揚陸艦(ロプチャ級)
- BDK-55アドミラル・オトラコーフスキイ、BDK-32、BDK-91オレネゴールスキイ・ゴルニャーク、BDK-45ゲオールギイ・ポベドノーセツ、BDK-182コーンドポガ
- 第161潜水艦旅団(通常動力潜水艦)
- 877「パールトゥス」型ディーゼル電池潜水艦(キロ型)
- B-401ノヴォシビールスク、B-459ヴラジカフカース、B-471マグニトゴールスク、B-808ヤロスラーヴリ、B-177リペツク、B-402ヴォログダ、B-800カルーガ(修理中)
[編集] 北方艦隊航空隊
- 第924海上偵察連隊(オレネゴールスク、オレーニヤ湾)
- Tu-22M3
- 「2度に渡ってソヴィエト連邦英雄になったボリス・サフォーノフ名称記念」第279艦上戦闘機航空連隊(セヴェロモルスク3)
- Su-25UTG、Su-33
- 第73独立航空中隊(キペロヴォ)
- Tu-142MK、Tu-142MR
- 第403分離混成飛行連隊(セヴェロモルスク1)
- An-12、An-26、Il-38、Tu-134
- 第830分離艦上対潜ヘリコプター連隊(セヴェロモルスク1)
- Ka-27
[編集] 関連項目
- Северный флот (ロシア海軍の公式紹介ページ) (ロシア語)
- «Северный флот... Не подведёт!» (ロシア語)