別府地獄めぐり
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別府地獄めぐり(べっぷじごくめぐり)は、別府温泉に多数存在する様々な奇観を呈する温泉を周遊する別府観光の定番コースである。また、これらの温泉の総称としても使われる。
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[編集] 概要
別府温泉には、含有物によって青、赤、白などの様々な泉色を呈する温泉や、間欠泉などの特色のある温泉が点在する。また、温泉の熱を利用して飼育・育成した動植物を展示する施設を併設したものもある。このような、入浴ではなく、観覧を主な目的とした温泉は地獄と呼ばれ、別府観光の目玉のひとつとなっている。
別府市内には多くの地獄が存在するが、その中でも地獄組合に加入している海地獄、鬼石坊主地獄、山地獄、かまど地獄、鬼山地獄、白池地獄、血の池地獄、竜巻地獄の8つの地獄は特によく知られている。このうち血の池地獄、竜巻地獄はやや離れて亀川駅の近くにあるが、他の6つは鉄輪温泉に集中している。地獄組合に加入している地獄については、共通観覧券で見学できる。
亀の井バスによる「地獄めぐり」定期観光バスは、日本で初めての定期観光バスで、地獄組合加盟の8つの地獄を約2時間半で回る。
現在の地獄めぐりは、血の池地獄・竜巻地獄・坊主地獄がやや離れているものの鉄輪中心に行われている。ところが、昭和30年代までは南立石の鶴見地獄・八幡地獄、明礬の紺屋地獄等も非常に有名であり、今よりも地獄めぐりの範囲が広かった。つまり、現在は海から別府を見たときに右側の山手(御幸・野田)に地獄が集中しているのに対して、昔は左側の山手(南立石)や中央の山手(明礬)にも有名な地獄があったということである。
[編集] 様々な地獄
[編集] 海地獄
海地獄(うみじごく)は、1200年ほど前に鶴見岳の爆発によって誕生したとされる。硫酸鉄によってコバルトブルーの一見涼しげな色をしているが、その温度は98度にも達する。付近の池にはオオオニバスが植えられている。卵を入れた竹籠を地獄の湯に沈めてゆでた温泉卵が名物である。なお、当地獄は別府の地獄の中で最も広大であり、群を抜いている。戦前は藤の花が有名であった。
所在地:別府市御幸
[編集] 鬼石坊主地獄
鬼石坊主地獄(おにいしぼうずじごく)は、坊主地獄同様に熱泥がそこかしこで吹き上げている。閉鎖していたが、2002年(平成14年)12月16日に約40年ぶりにリニューアルオープン。「別府地獄組合」に加盟した。本坊主の後に出た地獄ということで、新坊主という呼称も昭和30年代まではよく用いられた。鬼石とは、当地獄の最初の所有者の屋号である。坊主地獄よりも色が白みがかっており、熱泥のたぎり方もやや弱い。
所在地:別府市御幸
[編集] 山地獄
山地獄(やまじごく)は、山裾から水蒸気が吹き上げている。その水蒸気の熱を利用してミニ動物園が併設されており。カバ等が飼育されている。
所在地:別府市御幸
[編集] かまど地獄
かまど地獄(かまどじごく)は、竃門八幡宮(かまどはちまんぐう)の大祭でここの噴気を使って神前に供える御飯を炊くことからこの名が付いた。他の地獄をダイジェストにして集めたような雰囲気で、それぞれ「地獄の一丁目」から「六丁目」と名付けられている。昭和30年代前半までは柴石温泉の近くにあり、血の池地獄や龍巻地獄と同じく鉄輪の地獄地帯からは離れていたが、湧出量が減少したことから鉄輪に移転した。現在、亀川にある竃門八幡宮と鉄輪にあるかまど地獄が離れているため大祭云々の話もあまりピンと来ないが、昭和30年代までは今よりもずっと近かったということである。
所在地:別府市御幸
[編集] 鬼山地獄
鬼山地獄(おにやまじごく)では、緑白色の熱水をたたえた池を中心に、その熱を利用して広大なワニ園が整備されていて約100頭のワニが飼育されている。このため、別名ワニ地獄とも呼ばれる。ワニの飼育は1923年(大正12年)に始められたもので、世界一長生きしたワニの剥製もある。シンボルとなっている建物はマレーシアのサラワク州から移築されたもの。
所在地:別府市御幸
[編集] 白池地獄
白池地獄(しらいけじごく)は、含ホウ酸食塩泉で、噴出するときは透明だが、外気に触れ温度が下がると白濁することからこの名が付いた。熱帯魚館が併設されている。
所在地:別府市御幸
[編集] 血の池地獄
血の池地獄(ちのいけじごく)は、『豊後国風土記』や『万葉集』にもその存在が見える歴史ある地獄。酸化鉄などによって朱色に染まっていることからこの名がある。1927年(昭和2年)には高さ220mにまで達する大爆発を起こしたという。足湯があり、地獄の湯を体感することもできる。
所在地:別府市野田
[編集] 龍巻地獄
龍巻地獄(たつまきじごく)は、間欠泉として知られる地獄。20~40分間隔で噴出する。アメリカ・イエローストーンなどの物と比べて噴出間隔が短いのが特徴である。熱湯が飛び散ると非常に危険であるので、噴出孔の上には石の天井が設けられてしまった(以前はなかった)。別府市の天然記念物に指定されている。
所在地:別府市野田
[編集] 金竜地獄
金竜地獄(きんりゅうじごく)は、別府の地獄中もっとも多量の900キロリットル/日を湧出し、付近の温泉への供給源となっている。その湯気が朝日に照らされた姿が黄金の竜を連想させることからこの名が付いたという。多数の仏像が並んでいるほか、植物園もある。現在は「別府地獄組合」から脱退しており、見学料は200円と他の地獄に比べて低額である。
所在地:別府市御幸
[編集] 坊主地獄
坊主地獄(ぼうずじごく)は、90度を優に超える高温の泥が煮えたぎり、坊主(僧侶)の頭のように膨れ出てはじけることからこう呼ばれる。天然坊主地獄とも呼ばれる。この地獄は「別府地獄組合」ができた当初から組合には加盟しておらず定期観光バスのコースには入っていない。鬼石坊主地獄と区別するために本坊主と呼ぶこともある。鬼石坊主地獄よりも色が黒ずんでいる。
所在地:別府市小倉
[編集] 鶴見地獄
鶴見地獄(つるみじごく)は、現在は霊泉寺境内で、訪れる観光客もいない。しかし、昭和初期には海地獄や血の池地獄と並んで、主要な地獄の一つに数えられた。戦前はかなり広大な敷地を有し、蒸気がすさまじく別府名所として名高かったが、戦後は土地所有者が次々に変わり、少しずつ寂れていった。その間に地獄組合から脱退し、現在も地獄組合には加入していない。
所在地:別府市南立石八幡町
[編集] 明礬地獄
明礬地区の岡本屋の近くに近年整備された地獄。本来の地獄に遊歩道を整備し、同地区で有名な湯の花小屋を立てて内部を見学できるようにしてある。他の地獄のように、元来の地獄の様子が一変するほどの手は加えられていない。
所在地:別府市明礬
[編集] 現存しない地獄
- 八幡地獄
八幡地獄(はちまんじごく)は、鶴見地獄のすぐ裏手に存在した地獄で、戦前は観光客で大変賑わった。湧出量の低下により閉鎖され、現在は「八幡公園」という公園になっており、昔日の面影は全くない。
所在地:別府市南立石八幡町
- 無間地獄
無間地獄(むげんじごく)は、八幡地獄のすぐ側にあった地獄である。1937年(昭和12年)にはまだ存在したことが確認されているが、比較的早い時期に閉鎖されたと思われる。鶴見地獄や八幡地獄に比べると知名度は著しく低い。現在は八幡地獄の跡地と一緒に「八幡公園」になっている。
所在地:別府市南立石八幡町
- 三日月地獄
三日月地獄(みかづきじごく)は、観海寺温泉の山手に存在した地獄で、三日月形の地獄の横に休憩所等も建っていた。ここは地獄よりもむしろ蒸湯の方が有名で、蒸湯のついでに地獄も見学するといった程度の小規模な地獄であった。昭和初期には閉鎖され、当時の面影は全く残っていない。
所在地:別府市観海寺
- 紺屋地獄
紺屋地獄(こんやじごく)は、泥湯で有名な別府健康保養ランドの所にあった地獄である。大正時代から昭和30年代にかけて別府土産として名を上げた別府絞りの主要な生産地の一つであった。現在、当時の面影はないものの「紺屋地獄前」というバス停があり、紺屋地獄があったことを今に伝えている。また健康保養ランドの受付から浴場までの回廊は長く、元遊歩道であった名残が伺える。なお、戦前より、泥湯の屋内浴場は存在し、1930年代の絵葉書写真に見る浴場風景[1]は今もほとんど変わっていない。
所在地:別府市明礬
- 今井地獄
現在は住宅地が立ち並ぶ竹の内や大畑、小倉あたりは昭和30年頃までは水田や畑が広がり、石の転がる荒地からは幾筋もの湯煙が立ち昇っていた。その中でも、現在「今井」というバス停があるあたりは「今井地獄」(いまいじごく)と呼ばれ、浜脇等の市街地とは対照的な荒涼とした風景が別府名所の一つに数えられていた。他の地獄は塀で囲まれるなどして公園的な性格が強かったのに対して、この地獄はあまり整備されておらず自然のままであり、他の地獄とは一線を画していた。
所在地:別府市竹の内
- 雷園地獄
雷園地獄(らいえんじごく)は、鉄輪地獄地帯の地獄で、訪れやすかったこともあり観光客も多かったが、戦後は閉鎖された。
所在地:別府市御幸
- 鉄輪地獄
鉄輪地獄(かんなわ地獄)は白池地獄や雷園地獄の側に存在した地獄で、これといって特徴はなかったものの、戦前は観光客で賑わった。戦後になって地獄は閉鎖され、跡地には旅館が建ったが現在はその旅館もなくなってしまっている。
所在地:別府市御幸
- 十万地獄
十万地獄(じゅうまんじごく)は、非常に大規模な地獄で、その広さは別府の地獄の中でも一、二を争うほどであった。石垣を積んだ遊歩道も整備されており、所々に東屋も建てられ、訪れる観光客も非常に多かった。戦後閉鎖され、現在跡地は公園として整備されており市民の散策の場となっているだけでなく、海地獄や山地獄が近いところから観光客の休憩の場としても活用されている。現在も滾々と湯が湧いている。
所在地:別府市御幸
- 堀田地獄
堀田地獄(ほりたじごく)は、堀田温泉の側に存在した地獄で、今井地獄と同様にあまり手が加えられていなかった。堀田温泉の整備により消滅した。
所在地:別府市堀田
- 照湯地獄
照湯地獄(てるのゆじごく)は、坊主地獄のすぐ裏手に存在した地獄で、散策路などは整備されていたものの大石小石が転がっており、あまり手が加えられていない自然のままの地獄に近かった。戦前、照湯の整備により消滅。
所在地:別府市小倉
- 乙原地獄
乙原地獄(おとばるじごく)は、現在の別府ワンダーラクテンチの敷地内に存在した地獄で、観音像が安置されていたことから観音地獄と呼ばれることもあった。ケーブルラクテンチ(ワンダーラクテンチの旧名)の開発により温泉が整備されたことから、地獄は消滅した。
所在地:別府市乙原
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ 「100年前の日本 絵葉書に綴られた風景-明治・大正・昭和-」生田誠/編著 ISBN 4-86126-296-8 98頁 浴室風景(別府)
[編集] 外部リンク
- 別府地獄めぐり公式サイト(別府地獄組合)
- 海地獄
- 鬼山地獄
- 血の池地獄
- 亀の井バス 地獄めぐり]
- 別府市の温泉 - 別府市ウェブサイト
- 別府八湯ポータルサイト 別府NAVI - 別府市観光協会監修のサイト