酸化鉄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
酸化鉄(さんかてつ)は鉄の酸化物の総称。酸化数に応じて酸化鉄(II) (FeO) や酸化鉄(III) (Fe2O3) など組成が異なるものが知られる。いずれも鉄の酸化物であり、錆を構成する成分である。
目次 |
[編集] 酸化鉄(II)
酸化鉄(II) | |
---|---|
IUPAC名 | |
別名 | 酸化第一鉄 |
組成式 | FeO |
式量 | 71.9 g/mol |
形状 | 黒色固体 |
結晶構造 | 立方晶 |
CAS登録番号 | 1345-25-1 |
密度と相 | 5.7 g/cm3, |
水への溶解度 | g/100 mL ( °C) |
融点 | 1360 °C |
沸点 | °C |
出典 |
酸化第一鉄とも呼ばれる。IUPAC命名法では酸化鉄。
[編集] 化学的性質
常温常圧で黒色の固体。発火性があり、天然には存在しない。空気のないところでシュウ酸鉄(II) を熱すると生ずる。酸化鉄(III) に比べて表面が密なので、鉄固体の表面をこの物質で覆うことによりさらなる酸化を防ぐことができる。鉄棒などの表面にさび止めとして使われている。 脆く電気を通さない。
[編集] 酸化鉄(II) 鉄(III)
酸化鉄(II) 鉄(III) | |
---|---|
IUPAC名 | 四酸化三鉄 |
別名 | |
組成式 | Fe3O4 |
式量 | 231.5 g/mol |
形状 | 黒色固体 |
結晶構造 | 立方晶 |
CAS登録番号 | |
密度と相 | 5.2 g/cm3, |
水への溶解度 | g/100 mL ( °C) |
融点 | 1,565 °C |
沸点 | °C |
出典 |
IUPAC命名法では四酸化三鉄。俗に四三酸化鉄とも呼ばれる。含まれている鉄の酸化数の割合は、II:III = 1:2である。
- 組成式 Fe3O4
- 式量 231.5
- 融点 1,565°C
[編集] 化学的性質
アンモニア製造の触媒。酸化皮膜。常温常圧で黒色の固体。
赤くなるまで熱した鉄に水蒸気を作用させると生ずる。黒さびとも言う。磁鉄鉱(マグネタイト)。 鉄が濃硝酸によって、不動態になったときに表面を覆っているのがこれである[要出典]。これも、酸化鉄(II)と同じように鉄の表面を保護する目的にも使われる[要出典]。
[編集] 酸化鉄(III)
酸化鉄(III) | |
---|---|
IUPAC名 | 三酸化二鉄 |
別名 | 酸化第二鉄 |
組成式 | Fe2O3 |
式量 | 159.7 g/mol |
形状 | 黒色結晶または赤褐色固体 |
結晶構造 | |
CAS登録番号 | 1309-37-1 |
密度と相 | 5.1 g/cm3, |
水への溶解度 | g/100 mL ( °C) |
融点 | 1,538 °C |
沸点 | °C |
出典 |
酸化第二鉄とも呼ばれる。IUPAC命名法では三酸化二鉄。俗に三二酸化鉄と称する。多形を示す。
- 組成式 Fe2O3
- 式量 159.7
- 融点 1,538°C
[編集] 化学的性質
結晶は硬く金属光沢をもった黒色だが、粉末になると赤褐色を示す。一般的にみられるものは常温常圧で生成した微結晶の集合で、非常にもろい赤褐色の固体。水酸化鉄の脱水や、金属鉄の自然酸化によって生ずる。赤鉄鉱を構成しており、これを還元して金属鉄を得る。「赤さび」と呼ばれる錆は、鉄の自然酸化によってこの物質ができることによって生ずる。赤色顔料・弁柄として使われ、また、磁気テープの磁性体材料として広く使われている。