公道コース
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公道コース(こうどうコース)は、陸上競技のマラソン・駅伝・競歩や自転車のロードレース、モータースポーツなどで、レース開催期間中に限定使用される公道競走場のこと。特にモータースポーツにおけるものは市街地コース、ストリートサーキットとも呼ばれる。
本記事では公道コースの中でも、特に定期的に同一のコースで競走が開催されるものについて扱う。
なお、モータースポーツでは世界ラリー選手権(WRC)などのラリーやダカール・ラリーなどのラリーレイドも公道を使用するが、開催年度によって走行するルートを変更するのが一般的なため、本記事では取り扱わない。
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[編集] 陸上競技
陸上競技の中でもマラソン・駅伝や競歩(の一部)は、その走行距離が非常に長い距離となることから、他の陸上競技が専用の陸上競技場で争われるのに対し、基本的に公道上で争われる。
ただ、競技に際し専用競技場を使用しない関係から「コースにより条件が異なる」などの問題が存在したことから、かつては競技記録が国際陸上競技連盟によって公認されず、あくまで「最高記録」としての扱いに留まっていた(詳しくはマラソン#歴代記録などを参照)。現在はコース整備や測量技術等の進歩に伴い、他の陸上競技同様に記録が公認されるようになっている。
主なコースについてはCategory:マラソン大会、Category:駅伝などを参照。
[編集] 自転車競技
自転車のロードレースは、陸上競技のマラソンなどと同様に長距離を走行するという関係から、やはり公道コースを使用する。中でもワンデーレースでは、基本的に毎年同じコースを用いて争われるのが一般的となっている。
一方でツール・ド・フランスに代表されるいわゆるステージレースの場合は、毎年レースに使用するルートを変更するのが通例となっているが、一部の山岳コースやゴール地点については恒例のコースとして使われるものがある。
[編集] 主なコース
※ワンデーレースについてはCategory:自転車競技大会を参照。
- パリ・シャンゼリゼ通り周回コース(ツール・ド・フランス)
- ミラノ周回コース(ジロ・デ・イタリア)
- ラルプ・デュエズ(ツール・ド・フランス)
- ガリビエ峠(ツール・ド・フランス)
- モン・ヴァントゥ(ツール・ド・フランス)
[編集] モータースポーツ
[編集] 問題点
モータースポーツにおいて公道コースは、常設されるサーキット等と比べた場合、下記のような問題点が存在する。
- 安全設備
- 常設サーキットでは走行する車にトラブルが発生した場合などに備えて、コースの周囲に広いエスケープゾーンや安全フェンスを設けたり、緊急時の救助などにあたるマーシャルポスト等を設けるのが普通だが、公道コースではフェンス等が仮設のものにならざるを得ないほか、エスケープゾーン等を設ける場所が物理的に確保できないこともある。そのためクラッシュ時等の安全性の確保が難しいとされた。
- グリップ不足
- 常設サーキットではタイヤのグリップを上げるためにわざと目の粗い舗装を行っている場合が多いのに対し、公道コースでは通常の道路同様の舗装であるため、常設サーキットに比べタイヤと路面の間の摩擦係数が低下してしまう。このため通常のサーキット用と比較してさらに柔らかいタイヤを必要とする場合が多い。また道路上に引かれている白線や道路上のマンホール等がマシンの挙動に影響をもたらすこともある。
- 交通の遮断
- 公道コースでレースを行う場合は、上記の安全設備に加え観客席等を仮設する必要性から、レース開催の数日前からコースを断続的に閉鎖し工事を行う。またレース終了後にもそれらの撤去作業が必要。このためレース開催期間中はもちろんのこと、レースの前後各1週間程度はコース内の交通規制が行われるため、当該道路を生活道路として利用する人間にとっては不便が発生する。
また公道コースではピット・パドックなどの付帯設備や観客席の確保といった問題も発生するが、モンテカルロ市街地コース等のようにこれらの付帯設備のみを常設とするケースや、そもそも常設のサーキットと公道を組み合わせたコース設定を行い、付帯設備は常設のサーキットのものを使用する(サルト・サーキットがブガッティ・サーキットの設備を利用している例など)といったパターンが多い。
[編集] 利点
しかし一方では下記のような利点もある。
- 観客の利便性
- 常設サーキットの多くは用地確保や騒音問題等の兼ね合いから比較的田舎に立地することが多く、周辺道路等の交通インフラの問題から大きなレースの際は渋滞などが発生することが珍しくないが、公道コースは交通の便の良い街の中心部に設けられることが多いため、観客の利便性が向上する。また同様の理由から観客動員の増加なども見込める。
[編集] 現状
F1では1980年代までは主にアメリカ合衆国を中心に多くの公道コースがシリーズに組み込まれていたが、上記のような安全性確保の問題などから、一時公道コースは減少する傾向にあった。しかし近年は技術の進歩により、公道コースでもコンピュータシミュレーションなどを駆使して常設サーキットと同等の安全性が確保できるようになったことなどから、主にチャンプカー・ワールド・シリーズなどが積極的に公道コースを使ったレースを開催している。
F1でも観客の利便性や盛り上がりを優先した結果、近年は公道コースを使ったレース数が増加する傾向にある。
[編集] 主なコース
- フォーミュラー
- アデレード市街地コース(F1・オーストラリアグランプリ)
- アルバートパークサーキット(F1・オーストラリアグランプリ)
- モンテカルロ市街地コース(F1・モナコグランプリ、モナコF3)
- ロングビーチ市街地コース(F1・アメリカ西グランプリ、チャンプカー)
- フェニックス市街地コース(F1・アメリカグランプリ)
- デトロイト市街地コース(F1・アメリカグランプリ)
- バレンシア市街地コース(F1・ヨーロッパグランプリ)
- ギア・サーキット(F3・マカオグランプリ、世界ツーリングカー選手権)
- スポーツカーレースなど
- かつて公道を含んでいたコース
- スパ・フランコルシャン(F1・ベルギーグランプリ)