仙台平野
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仙台平野(せんだいへいや)には広義・狭義・最狭義の3通りの定義が存在する。
広義の仙台平野は、宮城県の仙台湾(広義)から西部の山脈または丘陵までの間に広がる平野部の総称。東北地方最大の平野であり、北上川、阿武隈川などが流れる。
広義の仙台平野において、松島丘陵を境に北側を仙北平野、南側を仙南平野に分けることがある。この場合、仙南平野には仙台市を中心とする仙台都市圏が位置するため、仙南平野のみを指して仙台平野(狭義)ということもある。
最狭義では、仙台市内部分のみを指す。
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[編集] 仙北平野
仙北平野は、北上川流域(江合川含む)や鳴瀬川流域の洪積台地や沖積低地で構成されている。沖積低地では、低湿地が大部分を占めて水田が多く、仙北米の単作地である。低い丘陵地(陸前丘陵)が各所にあり、水田が広がる平野は大きく北上川本流周辺の平野と、江合川および鳴瀬川の流域である大崎地方に分かれる。気候としてはやや内陸性となり、冬季は晴天が多いものの、遮るものがないため急に地吹雪となることもあり、数年に一度は東北自動車道の下り北行きで多重玉突き事故が発生する。
北上川本流の流域の方は、旧栗原郡の辺りを「栗原平野」、旧登米郡の辺りを「登米平野」、旧北上川が流れる新石巻市部分を「石巻平野」という場合があるが、宮城県民に浸透した呼び名とまでは言えない。栗原平野の中心部は栗原市築館、登米平野の中心部は登米市佐沼、石巻平野の中心部は旧石巻市地区。
一方、大崎地方の平野部は、「大崎平野」という呼び名が浸透している。大崎平野の最奥部は「王城寺原」と呼ばれ、陸上自衛隊王城寺原演習場もある。この平野には、宮城県古川農業試験場があり、「ササニシキ」「ひとめぼれ」などの数々のブランド米を生み出してきた。そのため、これらのブランド米は、大崎平野産が最も美味しい、という人もいる(宮城県では、新潟県のように地域圏ごとにブランド化せず、全県で「宮城米」としてブランド化している)。大崎平野では、その地形や風を利用した気球が盛んである。大崎平野の中心部は大崎市古川。
なお、秋田県仙北郡(現在、仙北市、大仙市がある)の平野部も「仙北平野」と言われるため、混乱を避ける意味で宮城県については「仙北平野」という言葉を用いない人もいる。
[編集] 仙南平野(狭義の仙台平野)
仙南平野(狭義の仙台平野)は、仙台市辺りから南に広がる海岸平野で構成されており、阿武隈川、名取川の埋積によって自然堤防が発達する。名取川より北を「仙台平野(最狭義)」(仙台市部分)、名取川から阿武隈川までを「名取平野」(旧名取郡)、阿武隈川から南を「亘理平野」(亘理郡)と分けることもあるが、県民にはあまり浸透していない。また、「仙南平野」という呼び名よりも「仙台平野」という呼び名の方がよく使われる。
仙南平野は、福島県浜通りと地形的にやや連続的になっているため、気候が似ている。海風が入るため、夏季には南東風(イナサ)が入って霧に包まれることが多く、年によっては、北東風(やませ)の影響から気温がなかなか上がらない冷夏となることもある。冬季は北西風(ナライ)に乗ってやってくる雪雲が奥羽山脈と陸前丘陵によってブロックされるため、晴天が多い。亘理平野は、角田丘陵(亘理丘陵)によって更に雪雲がブロックされるため晴天率が最も高く、また、海風によって気温も宮城県内では最も暖かいため、ビニールハウスを使ったイチゴなどの促成栽培が盛んである。
この平野の中心部は仙台市であるが、長年の国の農政(圃場整備に税金が投入されている)の影響により、平野部の農地は開発規制がかかっており、広大な稲作地として残されている。農地の開発規制のため、平野部に住宅地を造ることが出来ず、仙台都市圏の住宅地のほとんどが丘陵地に造られており、雪が降る地域としては不便を強いられている。
なお、仙南平野は、宮城県庁が設定している地域圏としての「仙台都市圏」に全て含まれ、同様の地域圏の「仙南圏」には含まれない。仙南圏の平地は全て盆地である。