ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
| ローマ内戦(BC49 - BC45) | |
|---|---|
 内戦勃発前のローマ（赤:元老院派、橙・桃:カエサル派） |
|
| 戦争：ローマ内戦 | |
| 年月日：紀元前49年 - 紀元前45年 | |
| 場所：ギリシア、エジプト、ヒスパニア他 | |
| 結果：カエサル派の勝利 | |
| 交戦勢力 | |
| カエサル派 | 元老院派 ヌミディア王国 |
| 指揮官 | |
| ユリウス・カエサル ガイウス・クリオ デキムス・ブルータス マルクス・アントニウス ガイウス・トレボニウス |
G・ポンペイウス ティトゥス・ラビエヌス メテルス・スキピオ ユバ1世 小カトー |
ローマ内戦 (羅: Bellum civile alterum, 紀元前49年 - 紀元前45年) またはカエサルの内乱は、共和政ローマ期におけるグナエウス・ポンペイウスおよび元老院派とユリウス・カエサルの間で起こった一連の戦争であり、カエサルが当時の国家に対して仕掛けたものである。紀元前49年から紀元前45年までの間にイタリア、ギリシア、エジプト、アフリカ及びヒスパニアで激しく争い、カエサルが最終的に元老院派を打倒して独裁体制を確立した。
目次 |
[編集] 経過
[編集] 対決の萌芽
共和政ローマではグラックス兄弟による一連の改革に始まり、ガイウス・マリウスやスッラによる支配、ポプラレス（平民派）とオプティマテス（閥族派）の争いなど後世「内乱の一世紀」と呼ばれる政情不安な状態が続いていた。紀元前59年にポンペイウス、カエサル、マルクス・リキニウス・クラッススは第一回三頭政治と後に呼ばれる統治体制を構築して権力を握り、カエサルは自身の娘ユリアをポンペイウスへと嫁がせたことで基盤を固めた。その後、カエサルはガリア等3つの属州の総督として赴任してガリア戦争を戦い、紀元前55年にはポンペイウスとクラッススが共にコンスルを務めた。
紀元前53年、カルラエの戦いでクラッススが戦死したことで第一回三頭政治が崩壊。また、カエサルがガリア遠征の成功によりポンペイウスと同等の軍事上の権限を得たことに対し、元老院派はカエサルの権力拡大を危惧してポンペイウスと手を組み、紀元前52年にポンペイウスを唯一のコンスル（執政官）に選出。元老院はカエサルがガリア総督としての任期切れ後にコンスルに立候補する意向であることを知り、カエサルから軍隊を引き離すことを模索した。紀元前50年12月、カエサルはポンペイウスがコンスルを辞するならば自分も軍隊を手放すと元老院に伝書を送ったが、元老院はカエサルが不法に軍を維持するのならば「国家の敵」と宣告するとした。
カエサルの幕僚であるマルクス・アントニウスおよびクィントゥス・カシウス・ロンギヌスはカエサルからの「応じられない」とする意向を元老院へ伝えたが、元老院はこれを拒否。
紀元前50年、ポンペイウス及び元老院派はプロコンスル（前執政官）としてのカエサルの任期が終わったことを受けて、ローマに戻り軍を解散するよう指示し、カエサルがコンスルに立候補するのを禁じた。カエサルはコンスルの地位も軍隊の力もなしにローマに戻るなら、大スキピオのごとく罪に問われ、政治的に失脚させられると考えた。ポンペイウスはカエサルに対して「元老院最終勧告」を発した。
[編集] ルビコンを渡る
紀元前49年1月10日、カエサルは子飼いの部隊である第10軍団とともに、ガリア・キサルピナとイタリア本土の境界であるルビコン川を渡るという決定的な一歩を踏み出した（イタリア本土（ルビコン以南、ブルンディシウム（現：ブリンディシ）以北）へ軍隊を率いて侵入することは禁じられていたが、実際は過去にマリウスやスッラも攻め込んでいる）。なお、この際にカエサルが "Jacta alea est" （賽は投げられた）と述べたことは有名である。
ローマへのカエサルの進撃に対して、無防備なローマにいることを嫌ったポンペイウスはローマから逃れた。ポンペイウスには影響下にある軍隊がいくつかあり、その中のドミティウス・アエノバルブスに対してカエサルがローマに着く前に途中で追捕するよう指示を出したものの、カエサルはドミティウスの軍を打ち破った。カエサルはローマへ向かわずにポンペイウスを追ってさらに南下。ポンペイウスは自身の地盤である東方属州へ向かう為にブルンディシウムを目指し、クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ピウス・スキピオ・ナシカや小カトーら元老院議員もポンペイウスに合流するため南へ逃れた。
カエサルはポンペイウスへ会談をするように申し出たが、ポンペイウスはこれを拒否。その後カエサルもブルンディシウムへ到着したものの、紀元前49年3月にポンペイウスは自軍の船隊と共にギリシアまで逃れていた。元老院派との戦いに備えて、カエサルはローマの国庫の金を軍資金に充てる為に持ち出そうとしたところ、護民官のメテルスが阻止しようとした為、カエサルは「若造、邪魔をするなら殺すぞ！」と脅してメテルスを追い払った。
ポンペイウスが軍を集めている間、カエサルはポンペイウスへの合力が予想される軍隊を排除すべく元老院派の牙城であったヒスパニアへ進軍。イレルダの戦いでルキウス・アフラニウスやマルクス・テレンティウス・ウァロ率いる元老院派軍を破り、更に元老院派に組して抗戦したマッサリア（現：マルセイユ）もデキムス・ユニウス・ブルートゥスらが陥落させた。一方、同じ元老院派の勢力下にあった北アフリカへは、ガイウス・スクリボニウス・クリオが総指揮を執るカエサル軍がアフリカ属州の州都であるウティカへ侵攻したものの、元老院派はヌミディア王ユバ1世の加勢も受けてバグラダス川の戦い（現：メジェルダ川）でカエサル軍を壊滅させ、クリオを討ち取った。
カエサルはローマへ戻ると元老院によって紀元前48年のコンスルに選出され、ギリシアへポンペイウスを追討するためカエサルは海峡の向こう側のエピロスに約15,000人の軍隊を集結させた。
[編集] ファルサルスそしてエジプト
ファルサルスの戦いも参照
紀元前48年7月、カエサル軍は元老院派の兵站基地でもあったドゥラキウムの包囲戦を展開（ドゥラキウムの戦い）したものの元老院派軍の前に敗走。しかし、ポンペイウスは寄せ集めの自軍がカエサルの精鋭軍を破ったと信じられず、カエサル軍の後退も罠と信じて掃討戦は行わなかった（結果、ポンペイウスは内戦を早期に終わらせる機会と勝機を失った）。 紀元前48年8月、両軍はギリシア北部のファルサルスで再度激突、カエサル軍より歩兵も騎馬兵共に遥かに多勢の元老院派軍であったが、一敗地に塗れた（ファルサルスの戦い）。この戦闘の結果、元老院派の中でマルケッルスやヒスパニアで敗北したウァロ、マルクス・トゥッリウス・キケロらが陣営を離れた。
ポンペイウスは再起を図るべくエジプトに逃がれたものの、紀元前48年9月に国王プトレマイオス13世の側近によって殺害された。ローマ元老院はカエサルをディクタトル（独裁官）に任命したが、11日後にディクタトルを辞職してコンスル（2期目）に選出された。カエサルはポンペイウスを追ってアレキサンドリアへ渡ったが、既にポンペイウスは殺害されていた。なお、プトレマイオス朝ではプトレマイオス13世および彼の姉アルシノエと、プトレマイオスの妻として共同でファラオの座にあったクレオパトラ7世が争う状態であったが、ポンペイウスを殺害したプトレマイオスの責任を強く見た（贈り物としてプトレマイオスの侍従が手渡したポンペイウスの首を見てカエサルは涙したと伝えられる）こともあって、カエサルはクレオパトラの側について、彼女を勝利に導き、クレオパトラがプトレマイオス朝の実権を握った（名目上はプトレマイオス14世との共同統治）。
[編集] 来た、見た、勝った
紀元前47年の内、1か月をエジプトで過ごしたカエサルは、ローマ内戦の間隙を突くかたちでポントス王ファルナケス2世がローマ領へ侵攻したのを受けて、カエサルはシリア属州を経てポントスへ向かい、カエサルはファルナケス2世にゼラの戦い（ゼラは現在のトルコ共和国ジレ）で勝利。この際、カエサルはローマの友人へ "Veni, vidi, vici"（来た、見た、勝った）という内容の手紙を送ったことは史実上よく知られている。ファルナケスはボスポロス王国まで退去して、スキタイ族とサルマタイ族からなる軍を構成し、いくつかの都市を支配下に置いたが、軍内部の人間によって殺害された（アッピアノスはファルナケスが戦死したとする一方、カッシウス・ディオは捕らえた後に殺されたする）。
[編集] 内乱終結
紀元前47年、カエサルは北アフリカ・ウティカに逃れた元老院派の残党を追討するため出発。メテルス・スキピオらが率いる元老院派及びユバ1世率いるヌミディア軍を紀元前46年4月にタプススの戦いで撃破し、その後メテルス・スキピオ、アフラニウスらは殺害された。更にカエサル軍はウティカを攻撃しウティカに籠城していた小カトーは支えきれずに自殺、ユバも逃亡を図ったが自決してヌミディア王国は断絶した（後に息子（ユバ2世）はマウレタニア王に即位）。
ポンペイウスの長男グナエウス・ポンペイウス（小ポンペイウス）と次男セクストゥス・ポンペイウス、そしてティトゥス・ラビエヌスらはヒスパニアに逃れて、当地で兵を集めた。ヒスパニアを守備していたガイウス・トレボニウスを圧迫する勢いであった為、紀元前46年夏に凱旋式を終えたカエサルはヒスパニアへ出兵し、紀元前45年3月ムンダの戦いで元老院派を撃破してラビエヌスは戦死、小ポンペイウスは逃亡途中で殺害された。セクストゥスは大西洋岸まで逃亡したものの、ムンダでの勝利を以て一連の内乱は終結を見た。
[編集] 関連項目
 |
この「ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)」は、戦争に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正等して下さる執筆協力者を求めています（P:戦争/PJ軍事史）。 |
