ローマ人の物語
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『ローマ人の物語』(ローマじんのものがたり)は、小説家塩野七生の古代ローマの歴史に関する著作であり著者の代表作でもある。1992年以降、年に1冊ずつ新潮社から刊行された書き下ろし作品で、2006年12月刊行の15作目で完結した。
歴史を扱った作品であり、日本の書店や図書館などでは歴史書として扱われていることもあるが、大半の研究者からは、実証研究や史料に基づかない記述がある(すなわちフィクション)、客観性や反証可能性を放棄した安直な断定が許されるという意味合いにおいて小説と捉えられている。また、塩野本人も「HISTORIA」(歴史)ではないと述べており、ラテン語でのタイトルも『RES GESTAE POPULI ROMANI』(ローマの人々の諸行)としている。出版元の新潮社も、読まれ方は別として、本シリーズを基本的には「小説」として扱っている。
いわゆる古代ローマの終焉を、西ローマ帝国の滅亡でも、東ローマ帝国の滅亡でもなく、東ローマ帝国がローマを奪還した時期と見なしているのも興味深い。塩野は東ローマ帝国をローマ継承国家とは認めず、ユスティニアヌス1世の征服事業による戦乱によってローマ市民と元老院が消滅したとして、本書の筆を置いている(それ以降も一応概略として駆け足で述べられているが)。
2002年から順次、新潮文庫から単行本1冊を2から4冊に分けて文庫化されている。2008年2月現在31巻まで刊行済み。
[編集] 評価
小説家である著者によって魅力的に描かれた古代の英雄達は、多くの読者を獲得している。本シリーズはローマ史をよく知らぬ読者から、歴史的事実そのままの記述として扱われているという問題を有する。ベストセラーとなった本シリーズが多くの日本人読者に古代ローマについて関心を抱かせ、ティベリウスやドミティアヌス等のやや評価の低い人物への再評価を試みた反面、ヌマンティア戦争やブーディカによる反乱等のローマにとって都合の悪い事跡は割愛している(ヌマンティアへの蛮行は『ハンニバル戦記』で、ブーディカによる反乱は『悪名高き皇帝たち』で触れている)。
シリーズ1作目の『ローマ人の物語I ローマは一日にして成らず』は新潮学芸賞を受賞した(1993年)。
[編集] 装丁
基本的に単行本各巻の表紙には、その巻に登場する英雄の彫像の写真が用いられている。一方文庫版では、扱っている時代のローマコインの写真が用いられている。
[編集] 各巻構成と内容
- ローマ人の物語I ローマは一日にして成らず (1992年) ISBN 978-4103096108
- ハンニバル戦記 ローマ人の物語II (1993年) ISBN 978-4103096115
- 勝者の混迷 ローマ人の物語III (1994年) ISBN 978-4103096122
- ユリウス・カエサル ルビコン以前 ローマ人の物語IV (1995年) ISBN 978-4103096139
- ユリウス・カエサルの偉業と魅力。
- ユリウス・カエサル ルビコン以後 ローマ人の物語V (1996年)ISBN 978-4103096146
- パクス・ロマーナ ローマ人の物語VI (1997年) ISBN 978-4103096153
- 悪名高き皇帝たち ローマ人の物語VII (1998年) ISBN 978-4103096160
- 危機と克服 ローマ人の物語VIII (1999年) ISBN 978-4103096177
- ユリウス・クラウディウス朝断絶後の帝国の混乱とフラウィウス朝の成立、ネルウァまで。
- 賢帝の世紀 ローマ人の物語IX (2000年) ISBN 978-4103096184
- 五賢帝のうちトライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの3皇帝の時代。
- すべての道はローマに通ず ローマ人の物語X (2001年) ISBN 978-4103096191
- ローマのインフラストラクチャーについて書き尽くした番外編。
- 終わりの始まり ローマ人の物語XI (2002年) ISBN 978-4103096207
- 哲人皇帝マルクス・アウレリウスと息子コンモドゥスの時代、その後の内乱からセウェルス朝まで。
- 迷走する帝国 ローマ人の物語XII (2003年) ISBN 978-4103096214
- 最後の努力 ローマ人の物語XIII (2004年) ISBN 978-4103096221
- ディオクレティアヌスとコンスタンティヌスの時代。
- キリストの勝利 ローマ人の物語XIV (2005年) ISBN 978-4103096238
- コンスタンティウス2世と背教者ユリアヌスの時代からテオドシウスの時代まで。
- ローマ世界の終焉 ローマ人の物語XV (2006年) ISBN 978-4103096245