ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
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ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ (Romuska Palo Ur Laputa) は宮崎駿監督の映画『天空の城ラピュタ』に登場する架空の人物で、同作品の主人公の前に立ちはだかる悪役として描かれるキャラクター。声は俳優の寺田農、英語版ではルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルが担当している。劇中ではムスカ、もしくはムスカ大佐と呼ばれる。
宮崎作品では珍しい、完全な悪役である。
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[編集] 人物
シータと同じラピュタ王家の末裔。年齢は28歳(アニメージュ記載)と32歳(ロマンアルバム記載)の2説がある。頭髪はブラウンで、同色のダブルの背広(シングルの背広で登場するシーンもある)を着ている。瞳の色は金色で近眼。度の入ったサングラスをかけている。
政府の情報機関(作品中では「特務」)に属しており、階級は大佐。政府の密命を受けて謎の天空城ラピュタの調査をしていた。空賊(空中海賊)のドーラ同様に暗号解読の天才[1]であり、一瞬にして相手の暗号を解読する能力を持つ。また旧約聖書やラーマヤナなどの古代文献を調査したり、ラピュタ文字を解読するなど、高い教養も併せ持っている知識人。拳銃の射撃技術も相当な腕前で、離れた位置からシータの左右のおさげ髪を撃ち抜き[2]、中折れ式リボルバー(エンフィールドNo.2)の再装填を3秒で完了させている[3]。
軍のラピュタ探索隊の指揮官であるモウロ将軍とは異なり、基本的には手荒な行為を好まない紳士的態度を見せるが、物語が進むにつれて、冷酷且つ利己的な本性を露にする。王家の末裔としてラピュタによる世界統治を目論んでおり、軍に協力する素振りを見せながら機会を伺っていた。
作中では数々の特徴的な台詞を残し、これらは他の数多くの作品でパロディとして用いられている。
[編集] 名前
もともとは一つだったラピュタ王家は、地上に降りた際に二つに分かれたと作中でムスカが語っている。シータの王族としての名はリュシータ・トエル・ウル・ラピュタであり、「トエル・ウル・ラピュタ」が「真のラピュタ王」を表すと作中で説明されている。ムスカの王族としての名「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」と比較すると、「真」を表す「トエル」がないことから、ムスカ一族は正統な王位継承者ではなく、分家のようなものであると思われる。
また、「パロ」(παρ、par) はギリシャ語で「従属」の意味を示す(パロディを参照の事)。これを古代語と見做して当てはめてみると「ラピュタ副王」となる。
[編集] 行動と最期
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
ラピュタを目指すムスカは、いくつもの障害を乗り越えた末に飛行石を入手し、飛行石が示す光を手掛かりに、ラピュタが存在する「竜の巣」へ向かった。
ラピュタに到着したムスカは、古文書に記された通路を抜けて中心部に辿り着く。そしてラピュタの復活、ラピュタ王への即位、全地上の征服を宣言した。ラピュタの兵器とロボットによる軍への攻撃を急ぐムスカは、シータに隙を衝かれて飛行石を奪われる。ムスカは玉座の間でシータを捕らえるが、飛行石はパズーに託されていた。パズーにシータの命と飛行石の引き換えを提案するムスカは、弾切れのリボルバーに再装填するため、シータとパズーに3分の猶予を与える[4]。猶予の間に、シータとパズーは滅びの言葉による決着を選ぶ。
ムスカは、滅びの言葉「バルス」の発動で発生した強烈な閃光により視力を失ったような言動をとり(本当に失明したのか、目がくらんだだけなのかは不明)、崩壊するラピュタの瓦礫と共に海へ転落した。滅びの言葉を唱えた二人は、閃光が発生した瞬間に吹き飛ばされ目を瞑っている。
ラストシーンで崩壊するラピュタの瓦礫に混じり落ちてゆくムスカは、宮崎の絵コンテにも描かれている。
[編集] その他の設定
『天空の城ラピュタ』の原案は『未来少年コナン2』として書かれたものである。その第一作『未来少年コナン』に登場するレプカと初期設定のムスカの顔が酷似していたため「レプカの祖先」との設定があったが、後にイメージの変更をしたためあくまで初期段階での設定である[5]。
『未来少年コナン2』は企画倒れとなり、再編集された劇場版『未来少年コナン』が製作された。宮崎による同原案から、NHKを通して、ガイナックスによって『ふしぎの海のナディア』が制作された。