ラビットスクーター
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ラビット(Rabbit)とは、1945年の終戦により中島飛行機から改名した富士産業(現在の富士重工業)が生産した二輪車のブランド名。
第二次世界大戦終了直後に入手したアメリカ合衆国製のパウエル式スクーター(ポウエルと表記する資料もある)を手本に、日本国内の経済性や道路事情を考慮して開発された。
一般にはラビットスクーターの名でもよく知られる。
1946年から1968年までの22年間に渡り製造され、一部モデルは海外へも輸出された。
その後、一般家庭への自動車の普及や、本田技研工業のスーパーカブの台頭などもあり、1968年6月に生産を終了した。
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[編集] モデル一覧
[編集] 1946年~
- ラビット(ポニー)試作車
- 1946年8月-1947年2月にGHQの製造許可を得て20台が製作された。群馬県の太田(呑龍)工場で作られたものが「ラビット」、埼玉県の三鷹工場で作られたものが「ポニー」というブランド名で呼ばれが、ポニーの意匠がすでに他社によって登録されていたためラビットに統一された。よく、太平洋戦争後に余剰となった爆撃機銀河の尾輪を流用して装着したと言われているが、航空機用のタイヤは溝がないスリックタイヤであるために使い物にはならず、実際に用いられたのは太田工場製の試作2号車までで、その後の車両にはトレッドパターンが刻まれた外径305mm(3.50-5)のタイヤが新たに生産された。
- S-1
- 1947年2月-1947年12月に538台が生産された。ラビットブランド初の量産モデル。エンジンは135cc空冷4サイクル単気筒。
- S-12
- S-1の改良型で、フロントサスペンションなどが追加されている。昭和天皇に献納された。
- SP-12
- S-12のアメリカ輸出仕様。進駐軍基地内のPXで販売された。
- S-2
- S-22
- S-23
- S-25
- ES
- S-22をベースに作られた電気スクーター。戦後の進駐軍占領下での燃料不足にあわせて開発されたが、実用性が低く、生産台数は23台にとどまった。
- S-31
- S-32
- S-41
- S-47
- S-48
- S-52
- S-53
- S-55
- S-61
- 1954年発売。225cc空冷4サイクルサイドバルブ単気筒エンジンを搭載。ラビットシリーズで初めてトルクコンバータを採用し、その扱いやすさでベストセラーとなった。
- S-71
- 1955年発売。ラビット初の2サイクルエンジン車。国産初のグリップチェンジを採用したモデルでもある。2サイクルで出足も良く、当時公表された最高速が70km/hだったのに対し、実際は85km/h以上出たことから爆発的にヒットした。ちなみに映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で三浦友和が演じる宅間先生が乗っているのはS-71-2型である。
- T-75
- 1955年発売。S-61の後部を荷台として作られたオート三輪仕様のモデル。
[編集] 1957年~
- S101
- 1957年発売。S-61の後継として出力アップした246cc空冷4サイクルサイドバルブ単気筒エンジンを搭載。ラビットでは初めてオイルダンパーを採用。
- S201
- 1958年発売。コンパクトな車体に前後15インチのホイールを採用し、更なる扱いやすさを追求したモデル。エンジンは87cc2サイクル単気筒。
- S601
- 1959年発売。S101の機能向上型として開発された。外観は継承しているが、199cc空冷2サイクル単気筒の片持ユニットスイングの新設計エンジンを搭載している。
- S102
- 1960年発売。通称スカーレット。ボディ外装を硬質ポリエチレンとして軽量化した小型スクーター。
- S301A
- 1961年発売。エンジンは123cc空冷2サイクル単気筒。ハンドチェンジの三段ミッションにより従来に比して最高速度、登坂性能などを向上させた。
- S402A
- 1962年発売。S301をベースにエンジンを142ccとした輸出仕様車。
- S301AT
- 1963年発売。エンジンは123cc空冷2サイクル単気筒。日本初のフォームラバー製前後一体シートを装備。その他前後にキャリア、タンデムグリップを装備。タンデム(2人乗り)でのツーリングを意識し、専用のツーリングバッグなどもオプション設定された。
- S402AT
- 1963年発売。S402Aをベースとしたツーリング車。
- S301B
- 1964年発売。吸気方式が従来のS301Aのピストンバルブからクランクウェブ式ロータリーバルブとなり、馬力向上されたモデル。ボディその他も各部リファインが施されている。
- S211A
- 1966年発売。ディスクロータリーバルブを採用した90cc空冷2サイクル単気筒エンジンを搭載。独自の車体設計によりシート下に大容量のトランクルームを持つ。
[編集] その他
- 現在、富士重工業のラリーパーツを製造するSTIでは、スバルマークと共にラビットマークも使われている。また、かつて傍系の「富士ロビン」(現・マキタ沼津)製の消防ポンプに「ラビット」の名とマークが残っている。
- 富士ロビンがマキタの子会社となりマキタ沼津に社名変更後は、ブランド名がこれまでの「ロビン」に代わり「ラビット」がマキタ沼津の正式ブランドとして統一されている。
- 若き小澤征爾が単身渡仏したときに日本から持っていったバイクが、富士重工から借りたラビットであった。
[編集] 関連項目
- 当時のライバルに三菱・シルバーピジョンなどがある。
[編集] 外部リンク
[編集] 出典
- 影山 夙『ラビットの技術史』 山海堂、2005年、ISBN 4-381-07780-6