ミュージックマン・スティングレイ
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ミュージックマン・スティングレイ Musicman Stingray |
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スティングレイ |
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メーカー/ブランド | アーニーボール/ミュージックマン |
製造時期 | 1976年 - |
構造 | |
ボディタイプ | ソリッド |
スケール長 | 34インチ |
フレット数 | 21 |
ネックジョイント | ボルト・オン |
材質 | |
ボディ | アッシュ、稀にアルダー |
ネック | メイプル |
フィンガーボード | メイプル、ローズウッド、Pao Ferro |
ハードウェア | |
ブリッジ | 固定 |
電気系統 | |
ピックアップ | ハムバッカーx1 ハムバッカーx2(HH) シングルコイルx1、ハムバッカーx1(HS) |
コントロール | ボリュームx1、トーンx3(トレブル、ミドル、バス)、5ウェイピックアップスイッチ(HHおよびHS) |
テンプレート | カテゴリ |
ミュージックマン・スティングレイはミュージックマン社が1976年に発表したエレクトリックベース。後にミュージックマン社はアーニーボール社に買収され、「ミュージックマン」は1ブランドとして継続する。
1976年の発表当時にはギターモデルも存在した。
目次 |
[編集] 歴史
1971年、フェンダー社の社員フォレスト・ホワイトとトム・ウォーカーは親会社であるCBSの経営方針になじめず、フェンダー社を去り、ベンチャーを興した。最初は「トリ=ソニック」、後に「ミュージテック社」と名を変えたが、結局1974年に「ミュージックマン社」に落ち着いた。まずは真空管とソリッドステートのハイブリッド・アンプをトム・ウォーカーとレオ・フェンダー(フェンダー社売却の際に不競争条項にサインしていたため、匿名社員としてミュージックマンに参加していた)の手により製造開始。条項の期限切れとなった1975年にフェンダーはミュージックマンの社長になり、1976年には彼のコンサルティング会社CLFリサーチがミュージックマン名義の楽器製造・販売を開始した。
フェンダーとウォーカー、スターリング・ボール(ボールは楽器のベータテスターだった。後にミュージュックマン社を買収するアーニー・ボールの息子でもある)設計によるスティングレイ・ベースは1976年に登場、外観はフェンダー・プレシジョンベースに似ているが、非常に革新的な楽器となる。「ソープバー」ハムバッカーピックアップと9V電池駆動のアクティヴ・プリアンプを装備。初期モデルは2バンドイコライザー(バスとトレブル)を備えていたが後に3バンドに拡張され、またブリッジ位置へのピエゾ・ピックアップのオプションも用意された。スティングレイの3バンドイコライザーは非常に革新的で、低音域、高音域と同様に中音域を持ち上げることが可能になった。これはアクティヴ回路を持たない従来の楽器には不可能なことである。この電気的アドヴァンテージに加え、スティングレイはフェンダースタイルの楽器から一線を画す様々な特徴を持っている。たとえば上下移動をスムーズにするネック裏のサテン仕上げ、左右対称な卵型ピックガードと、独立したクローム仕上げの「ブーメラン」コントロールプレート、独特な3+1(3つのペグが上、1つが下に配置される。5弦モデルでは4+1、ギターは4+2)ヘッドなどといった点が、他の楽器と一見で区別できる特徴である。
初期モデルはボディースルーでアジャスタブル・ミュート機構付きのブリッジとなっていた。後のモデルではその両方を廃した(2006年の30周年記念モデルを除く)。
さらににスティングレイはハムバッカーをシングルコイルに分割可能な3ウェイトグルスイッチを装備、テフロンワッシャーを使った独特なトラスロッド調整システムを使用し、錆び、腐食への耐性が高く調整も楽になるといった進化を遂げた。ここでは5弦モデルのスティングレイ5も追加された。
2000年代初頭には "SUB" と名付けられた低価格モデルが製造された。テクスチャ仕上げのボディとダイヤモンド・プレートのピックガードを持つこのモデルは、2007年に製造コストの増大のため製造終了となった。
2005年、アーニーボールの最新ベースの1つであるボンゴ・ベースの成功を受け、2ピックアップヴァージョンのスティングレイ(HH、HSとして知られる)が発表された。5ウェイスイッチを備えることにより、ピックアップの組み合わせが増え、音色の多彩さが大幅に増加した。このピックアップ構成は同年スティングレイ5やスターリンにも導入された。
スティングレイは一般的にパンチのあるサウンドで知られ、ロックやファンクに向いており、特にスラップ奏法に威力を発揮する。また、製造品質の高さもよく知られている。たとえばネックプレートにボルトを6本使っている点である。ネックは特にフェンダー・ジャズベースタイプのモデルと比べると非常に広いが、上述のトラスロッドメカニズムはネックを外すことなしに調整することを可能にしている。
G弦が低音の3弦に比べ、わずかにヴォリュームが低いことに悩むユーザーもいる。この問題はスティングレイ5には起こらない。
[編集] 著名なユーザー
スティングレイは多くの有名ベーシスト、特にスラップ奏法で知られる奏者、たとえばルイス・ジョンソン、バーナード・エドワーズ、フリー等に好まれている。
AC/DCのクリフ・ウィリアムスはいつもスティングレイを使っている。ザ・ブラザーズ・ジョンソンのルイス・ジョンソンも初期からこの楽器を使うベーシストの1人である。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、オーディオスレイヴのティム・コマーフォードはジャズベースに持ち替える前、レイジのデビューアルバムで使用している。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーは何台ものスティングレイをヒット曲「ミー・アンド・マイ・フレンズ」等のレコーディング、ライヴパフォーマンス、ヴィデオクリップで使用している。アヴェンジド・セヴンフォールドのジョニー・クライストもレコーディング、ライヴで常に使用している。
クイーンのジョン・ディーコンはしばしばスティングレイを使用している[1](彼の楽器はクリーブランドのハードロックカフェに展示されている)。