ミッシングリンク
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ミッシングリンク(Missing-link)とは連続性が期待されている事象に対して、非連続性が観察される場合、その比較的顕著な間隙を指す。
ごくまれに、間隙の存在を持って連続性を否定をする論があるが、二点間に挿入され得る新たな論理、資料等の存在の可能性が開かれているため、論理的には意味が無い。またそのような論では、多くの場合は観測点が任意にとれるかどうかの証明が欠如しており、さらに間隙の大きさを測る基準に恣意的な指標が用いられている。論者が恣意性に気づかずに誤っている場合もある。これらの理由から科学的文脈ではミッシングリンクを埋める物が存在する場合、あるいは存在を仮定し、かつ比喩的な表現を用いる場合を除いてこの言葉はほとんど用いられていない。しかし、これらの基準が満たされその上で間隙が認められるときには、既存の理論に何らかの問題があることを示し、少なくとも修正が必要であることは明らかとなる。
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[編集] 古生物学におけるミッシングリンク
古生物を扱う分野において、ミッシングリンク(失われた環/鎖)とは、進化の途上に位置する、発見されていない中間形の化石のことを指す。ただし学術用語ではない。学術的には「未発見の中間型化石」などと呼ぶ。
通常、古生物の化石は進化過程のうちの一部分しか発見されず、ゾウやウマのように各進化段階で多くの化石が発見され、進化の様子がはっきりしているものは例外的である。生息した時代が古い種は化石が発見されにくく、ミッシングリンクになりやすい。一方クジラやコウモリのように、比較的時代が新しい種でも、その属する綱(この場合は哺乳綱)の基本型から大きく外れた形態のものは、両者をつなぐ中間的な形の化石がほとんど出ず、ミッシングリンクを生じる例が多い。
これは往々にして進化論の疑問点ないし急所として反進化論者の攻撃対象になる。それに対する説明は難しいが、一つの考え方として陸棲生物が進化によって水棲生活や飛翔生活に適応するといったような大きく変化した性質を獲得する場合には、新しい環境に対して適応的な遺伝的形質が生じた時にその遺伝情報が短期間で集団全体に広がるような比較的ちいさな集団が地理的条件などによって隔離された条件下に於て短い期間の間でおこり、変化した系統とその元になった系統の接点となる種の化石はその個体数も少なく、生息した地域も時期も限定されるので発見されにくいものと考える、等の論がある。ただしある一種の生物の中間型化石が見つかっていないからと言って、すでに見つかっている他の生物の中間型化石が否定されるわけでもなく、分子的な証拠が否定されるわけでもない。いくつかのミッシング・リンクがあっても、進化論全体の妥当性が揺らぐわけではない事に注意が必要である。
人類は類人猿の中から500〜600万年前に分岐して直立二足歩行するように進化したと考えられている系統であるが、分岐の直後については化石証拠が乏しくミッシングリンクとされている。また、どのような環境に適応して進化の途についたのかも諸説あり結論を得るには至っていない。 ダーウィンが進化論を発表した1859年当時は、進化の過程を裏付けるサルと人類の間の中間種の化石が発見されていなかった。ダーウィンは、1871年に発表した著書の中で「将来、必ずヒトとサルを結ぶミッシングリンクが発見されるに違いない」と述べており、その後の発掘調査によって猿人(アウストラロピテクス)、ジャワ原人や北京原人(ホモ・エレクトス)、ネアンデルタール人、クロマニヨン人などの化石人類が発見されている。 20世紀末には分子生物学の進歩により、人類は500~600万年前頃にチンパンジーの祖先と分岐した可能性が示唆されており、またこの時期に近い時代のものと推定されるオロリン、サヘラントロプスなどの化石も発掘されている。
[編集] 古生物学におけるミッシングリンクの関連項目
- 断続平衡説 アメリカの古生物学者 S.J.グールドとN.エルドリッジが提唱した、生物は適応放散などで(地質時間から見れば)ごく短期間のうちに進化が進み、そして安定状態になると言う説。つまり中間種は絶対数が少なく化石にのこりにくいと考える。
- ウイルス進化説 ミッシングリンクを説明するものとして、日本で一般書によって提唱されている説。進化はウイルスの感染により1世代単位で起こるとする。科学的な学説とは見なされていない。
[編集] 古生物学におけるミッシングリンクを扱った作品
- 漫画 『OFFERED』(小池一夫、池上遼一)
- 漫画 『少年の町ZF』(小池一夫、平野仁)
- 漫画 『クルドの星』(安彦良和)
- 漫画 『アフター0』第3巻収録「EPISODE9 究極のホラー」(岡崎二郎)
- 漫画 『NEEDLESS』(今井神)
- アニメ『ふしぎの海のナディア』
- 小説 『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン)
[編集] 犯罪におけるミッシングリンク
一見、互いに無関係に見える複数の事件・被害者の間にあると仮定される共通点のこと。