ボヌール・デ・ダム百貨店
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ボヌール・デ・ダム百貨店 (Au Bonheur des Dames) は、1883年に出版されたフランスの自然主義作家エミール・ゾラの小説である。ゾラのライフワークである「ルーゴン・マッカール叢書」(全20巻)の第11巻にあたる。19世紀後半のフランスにおける大衆消費社会の牽引役となったデパートの躍進を描いた本作は、叢書で唯一のハッピーエンドを迎える異色の作品となっている。
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[編集] 概要
物語の主軸となるのは、パリのデパート「ボヌール・デ・ダム百貨店」の貧しい女店員である主人公ドゥニーズ・ボーデュと、このデパートの経営者で前作『ごった煮』の主人公でもあった青年実業家オクターヴ・ムーレとの身分違いの恋愛である。しかし本作の主たる魅力はむしろ、豪華な店内に所狭しと並べられた大量の魅惑的な商品と、現代の小売店の商法にも通じるバーゲンなどのさまざまな近代的商法によって婦人客を食い物にし、容赦ない価格競争によって近隣の老舗商店を押し潰しながら発展していく、消費社会の権化とも呼ぶべき「デパート」という存在の実態を克明に描いている点にある。(あらすじや登場人物紹介については「外部リンク」を参照。)
ゾラは本作執筆にあたって、パリのさまざまなデパートに対して綿密な取材調査を行ない、デパートの管理経営についてはボン・マルシェ百貨店およびルーヴル百貨店の管理職から資料提供を受けた。その結果として本作は、第二帝政期のジョルジュ・オスマンのパリ改造と軌を一にして急成長し、第三共和政下においては続々と巨大な新館を築きつつあったパリのデパートの、ほぼ30年におよぶ発展の歴史を、小説内の5年足らずの時間に圧縮して描くことに成功している。
[編集] 翻訳
- 吉田典子訳『ボヌール・デ・ダム百貨店—デパートの誕生』 藤原書店、2004年、ISBN 4894343754
- 伊藤桂子訳『ボヌール・デ・ダム百貨店』 論創社、2002年、ISBN 4846004007
[編集] 映画
アンドレ・カイヤット監督『貴婦人たちお幸せに』(Au Bonheur des Dames)1943年
[編集] 参考文献
- 鹿島茂『デパートを発明した夫婦』 講談社<現代新書>、1991年、ISBN 4061490761
- 海野弘『百貨店の博物史』 アーツアンドクラフツ、2003年、ISBN 490159219X
- レイチェル・ボウルビー著、高山宏訳『ちょっと見るだけ—世紀末消費文化と文学テクスト』 ありな書房、1989年
- ロザリンド・H・ウィリアムズ著、吉田典子・田村真理訳『夢の消費革命—パリ万博と大衆消費の興隆』 工作舎、1996年、ISBN 487502262X
- 宮下志朗・小倉孝誠編『いま、なぜゾラか—ゾラ入門』 藤原書店、2002年、ISBN 4894343061
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 第11巻『ボヌール・デ・ダーム百貨店』 - ルーゴン・マッカール双書 - 講読ノート - 朝倉秀吾氏によるエミール・ゾラとフランス文学に関するサイト「SYUGO.COM」内にある、『ボヌール・デ・ダム百貨店』講読ノート。簡潔で的を射たあらすじと登場人物紹介のほか、より専門的な書評へのリンクを含む。
- 近代消費社会と女性 - 日本語版の翻訳者である吉田典子氏による、『ボヌール・デ・ダム百貨店』の簡単な紹介。藤原書店のサイトより。
- 貴婦人たちお幸せに - 「キネマ旬報全映画作品データベース」より、『ボヌール・デ・ダム百貨店』映画版の紹介ページ。
- プロジェクト・グーテンベルクにおける Au Bonheur des Dames - 原著の電子テキスト(フランス語)。
- BnF - Au Bonheur des dames - ビブリオテーク・ナショナル(フランス国立図書館)による『ボヌール・デ・ダム百貨店』についてのウェブ展示。当時のデパートに関する画像が豊富(フランス語)。