ブラウントラウト
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?サケ科 | |||||||||||||||||||||||||||
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ブラウントラウト |
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種の保全状態評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LOWER RISK - Least Concern (IUCN Red List Ver.2.3 (1994)) |
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Salmo trutta (Linnaeus,1758) |
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
チャマス(茶鱒) | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Brown trout | |||||||||||||||||||||||||||
多型 | |||||||||||||||||||||||||||
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ブラウントラウト(学名:Salmo trutta)は、サケ目サケ科に属する魚で、3つの型からなる。fario 型と lacustris 型はブラウントラウトと呼ばれ、trutta 型はシートラウトと呼ばれる。別名:ブラウンマス、茶マス、茶色マス等。
ブラウントラウトは一生の大部分を淡水域で過ごすのに対して、シートラウトは海を回遊し、産卵の時のみ、生まれ故郷の淡水域に戻ってくる。
一方ブラウントラウトも淡水域を回遊しており、通常湖から川に出て産卵するが、湖の岸で産卵を行うこともある。fario 型は流水を生息域とし、高山の小川に住むことが多いが、時に大きな河川に住むこともある。産卵のために川を遡るグループと遡らないグループは、同じ川に住むものであっても遺伝的に異なることが知られている。
ブラウントラウトは一般にヨーロッパとアジアに生息していると思われているが、実際には極付近まで周遊する。またギリシャやエストニアには海から遠く淡水のみで生活するものもある。絶滅危惧種とはされていないが、いくつかの地域では、生息域の破壊や乱獲などによって数が減っている。fario 型は比較的冷たく、酸素の豊富な陸水を好み、特に山地の大きな水流に多いが、他のサケ科の魚の最適温度よりは温かい摂氏15.5-18.3度程度である。
ブラウントラウトは標準的なサイズの魚で、ある地域では20kg以上になり、また小さな川では1kg程度以下のものもある。国際ゲームフィッシュ協会(IGFA)の公認記録では、18.25kgのものが1992年5月にアーカンソー州のリトルレッド川で釣られた記録が残っている。
ブラウントラウトは何年も生きる魚であるが、タイセイヨウサケと同様に産卵の後に多くのオスが死に、メスでも産卵後も生き続けるのはおそらく20%以下である。海を回遊するものはサイズが若干大きく、寿命も長い。ブラウントラウトは昼も夜も活動し、一日中餌を食べ続ける。淡水では川底の無脊椎動物、小さな魚、カエル、水面近くを飛ぶ昆虫類なども食べるが、食物の多くは幼虫、蛹、若虫などである。淡水のものはフライ・フィッシングの対象にもなりやすく、海を回遊するものは主に夜、ルアーを使って釣られる。
ブラウントラウトの産卵はタイセイヨウサケと良く似ている。平均、メスの体重1kgあたり2000個の卵を産む。他の種と交雑することは滅多にないが、カワマスと雑種(タイガーとよばれる)を作った例はわずかにある。
ブラウントラウトは、世界的に広く分布するニジマスと比較してやや癖があるといわれるが食用にも好まれ、刺身、寿司ダネなどの生食か燻製として食べられる。多くのレシピもあり、フライ、グリル、オーブン焼きなどニジマスとほぼ同様の調理が可能である。
種小名の trutta は、ラテン語でマスを意味する言葉 trutta に由来する。
目次 |
[編集] 人工的な繁殖
ブラウントラウトは釣り目的の自然界への放流や釣堀への供給のため、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、日本などに持ち込まれた。いくつかの国、特にオーストラリアや北海道などでは地域の淡水生態系が破壊されて問題となっており、北海道ではサケやマスの卵や稚魚を活発に捕食するため、2000年代に入ってからは特に注目されてきている。また食品として重要な魚であり大量に人工孵化させられるため、コルシカ島やアルプスの窪地などの閉鎖系では、天然個体群が絶滅してしまったところもある。
一方、回遊性のブラウントラウトは、養殖場のサケやマスに寄生するウオジラミの仲間(サケジラミなど)に感染しやすくなったために年々数が減っている。
[編集] 脚注
- ^ World Conservation Monitoring Centre 1996. Salmo trutta. In: IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species. Downloaded on 04 December 2007.
[編集] 参考文献
- サケ・マス魚類のわかる本(奥山文弥、井口斎 共著/山と渓谷社 刊)