ブラウンウォーター・ネイビー
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ブラウンウォーター・ネイビー(Brown Water Navy)とは、アメリカ合衆国海軍で、河川や沿岸部を担当範囲とする部隊を指す用語。大洋を担当とする通常の艦隊(ブルーウォーター・ネービー)に対し、水が茶色い河川や沿岸部を担当することからこの名が付いたといわれる。アメリカ合衆国海軍ではブラウンウォーター・ネイビーはイレギュラーな存在という事もあり(米国内の沿岸・港湾・河川・湖沼の警備はアメリカ沿岸警備隊が行なっている。また、サイクロン級沿岸哨戒艇に代表されるように、アメリカ海軍での哨戒艇は、特殊作戦の支援というような「特殊」な任務に用いられていた)、ブルーウォーター・ネービーに対しての蔑称として、あるいは自虐的に使われる事もある。ただし、近年ではイージス艦「コール」爆破事件などの教訓から、基地周辺の港湾を警備する武装ボートの充実を図っている。
ブラウンウォーター・ネイビーの名が一番最初に使われたのは、南北戦争でミシシッピ川で戦ったモニター艦などに対してであった。20世紀には砲艦が権益保護のため中国の長江に派遣された部隊にその名が引き継がれた。ベトナム戦争ではメコン川に派遣され、流域の南ベトナム民族解放戦線のゲリラ討伐を行った。なお、実際には河川警備艇や高速警備艇を中心とする河川哨戒部隊と、重装備の河川砲艇(上陸用舟艇を改造したものからオリジナルの設計のものまで存在した)から成る河川戦闘部隊に分割されていた。
イラク戦争においても、ティグリス川・ユーフラテス川において、SEALSを用いた奇襲作戦を主任務とするブラウン・ウォーター・ネイビー部隊を編成する計画が度々出されているというが、現在のところ実現化していおらず、河川の警備は河岸に駐屯している陸軍・海兵隊及び新生イラク軍隷下の舟艇部隊が行なっている。