ビリルビン
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ビリルビン | |
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IUPAC名 | 3-[2-[(3-(2-カルボキシエチル)-5-[(3-エテニル-
4-メチル-5-オキソ-ピロール-2-イリデン)メチル]- 4-メチル-1H-ピロール-2-イル]メチル)-5-[(4-エテニル- 3-メチル-5-オキソ-ピロール-2-イリデン)メチル]- 4-メチル-1H-ピロール-3-イル] プロパン酸 |
分子式 | C33H36N4O6 |
分子量 | 584.662 g/mol |
ビリルビン (bilirubin) はヘモグロビンなどに含まれるヘムの生分解産物で、赤褐色の胆汁色素である。ヒトなど多くの動物の糞や尿の色の原因となっている。ピロールが4個連なった構造を有するテトラピロール化合物の一種。血液中のビリルビン量は変動が大きいが、種々の疾患でさらに大きく上昇するため、血液検査で重要な項目である。
[編集] 生理学
ビリルビンは基本的には廃棄物で、赤血球が死んでヘモグロビンが分解された後にできる。ヘモグロビンはマクロファージによって分解され、そのうちヘムはさらにFe2+、一酸化炭素と緑色のビリベルジン (biliverdin) に分解され、さらにビリベルジンが還元されてビリルビンとなる。草食動物では胆汁色素としてビリベルジンの方が多い。ビリルビンは水溶解度が低いためほとんどが血清アルブミンに結合して肝臓に運ばれる。肝臓ではさらにグルクロン酸抱合を受け、水溶性の抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)となる。肝臓で抱合される前のアルブミン結合型ビリルビンは非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)ともいう。この抱合型ビリルビンは胆汁に入り、胆管を通って胆嚢に貯留され、さらに十二指腸に出る。腸内のビリルビンの一部は再吸収される(腸肝循環)。腸内では細菌によってステルコビリノーゲン (stercobilinogen) に変換され、これが糞の褐色色素である。尿の黄色はやはりビリルビンの分解産物であるウロビリン (urobilin) による。ヘモグロビン分解過多あるいはビリルビン排出不全となる種々の疾患で、体内にビリルビンが蓄積して黄疸となる。
[編集] 毒性と有用性
非抱合型ビリルビンは脂溶性であるため、新生児の血液脳関門を超えて脳に沈着しダメージを与えること(核黄疸)がある。一方、適正なレベルのビリルビンは、活性酸素やフリーラジカルによる酸化ストレスから細胞を保護している可能性がある。
[編集] 血液検査
血液検査ではビリルビン全体の量を総ビリルビン (total bilirubin, T-Bil) という。また総ビリルビンのうち、水溶性の抱合型ビリルビンはグルクロン酸抱合で出来るジアゾ基によって直接測定できるので直接ビリルビン(direct bilirubin, D-Bil, 直ビ)ともいい、脂溶性の非抱合型ビリルビンは可溶化を要するので間接ビリルビン(indirect bilirubin, I-Bil, 間ビ)ともいう。
通常はT-Bilと直ビのみを測定し、間ビはT-Bilから直ビを差し引いて算出する。血中のT-Bil濃度が高い病態を高ビリルビン血症、血中の直ビ濃度が高い病態を高直接ビリルビン血症、血中の間ビ濃度が高い病態を高間接ビリルビン血症という。正常値は概ね、T-Bilが1mg/dL以下、直ビが0.2mg/dL以下、間ビが0.8mg/dL以下。
検査法による名称 | 略称 | 抱合の有無による名称 | 極性 | 毒性 | 正常値 (mg/dL) |
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総 | T-Bil | ~1 | |||
間接型 | 間ビ | 非抱合型 | 脂溶性 | 有り | ~0.8 |
直接型 | 直ビ | 抱合型 | 水溶性 | 無し | ~0.2 |