ネイキッド (オートバイ)
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ネイキッド(Naked)とはオートバイの1ジャンルである。略称はNK。
広義ではカウルを装備していないオートバイのことを指す。名称の由来は「裸」、「剥き出し」の意味を持つ英単語nakedから。ただし、ハーフカウルやビキニカウルを装着して派生したモデルもネイキッドと呼ぶ場合がある。なおこのジャンルの呼び方は、各国によってまちまちというのが現状である。
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[編集] 概要
ネイキッドというジャンルが広く認知されたのはカワサキ・ゼファーの登場以降だといわれる。ゼファーはZ2を彷彿とさせる先祖帰り的なスタイルを強調することにより、爆発的なセールスを記録した。
[編集] 誕生前夜
1970年代までは、一部の例外を除けばカウルをまとうオートバイはスクーターくらいのものであり、ヨーロピアンスタイルとされたオートバイの大半がネイキッドであったと言って良い。しかしそれはオートバイとしてごく当り前の形であったため、ネイキッドと呼ばれることはおろか、特定のジャンルとして認識されることも無かった。また、暴走行為を助長しかねないとカウルの装着が事実上禁止されていた背景もあったが、1980代に入る頃にはオートバイの高速化や法令の改正に伴い、カウルを備えたモデルが徐々にではあるが増えていった。
[編集] ネイキッド誕生
ネイキッドという呼称を初めて公式に使用したのは、1985年にヤマハから発売されたFZ400RベースのFZ400N[1]である。それ以前にもGPZ400Fのカウルを外したGPZ400F-2などが存在したが、ネイキッドという呼び方はされていなかった。翌1986年にはホンダからVFR400RをベースにしたVFR400Zが、1987年にはカワサキからGPZ400RをベースにしたFX400R、スズキからは1988年にΓシリーズをベースにしたウルフシリーズが発売された。これらのモデルの「高性能なカウル付きオートバイのカウルを外して軽量化しつつ、アップライトな扱い易いポジションで」という成立過程は、後のストリートファイターとあまり変わるところはない。しかし当時はカウルの有無すら性能評価の基準になってしまうようなレーサーレプリカブームであったため、いずれの車種も市場の評価を得られずに終わった。
[編集] ネイキッドブーム
1989年、初期のネイキッドの特徴を幾つか引き継いだCB-1、ヨーロピアンスタイルを踏襲したバンディット、そしてゼファーが登場する。この中で最も大きな支持を集めたのが「性能だけがオートバイの魅力ではない」という姿勢のゼファーであり、終焉を迎えようとしていたレプリカブームに引導を渡し、以降のネイキッドスタイルの方向を決定づける程の一大ブームとなった。対して1992年、先のCB-1での失敗をふまえながら「性能もまたオートバイの魅力のひとつ」とばかりにホンダはCB400スーパーフォアを投入、ゼファーを凌ぐセールスを記録する。CB400SFに対するカワサキの回答は、ゼファーの高性能化ではなく2年後のZRXの投入だった。また同1992年、カワサキはネイキッドの原点に回帰するかのような前衛的なデザインとZXR400ベースのエンジンを有するザンザスを投入するも、セールスは振るわなかった。自身が作ったゼファーによって生まれたブームに足をすくわれた皮肉な結果ではあるが、後のストリートファイターの隆盛を見ると登場が早過ぎた悲運の名車であるともいえる。一方ゼファー発売当初は静観の構えを見せていたヤマハも1993年にはXJR400を投入、スズキも1994年にGSX400インパルスを投入し、各社400ccクラスネイキッドの布陣は出揃った。400ccクラスがきっかけとなったネイキッド人気は、下は250ccクラスから、上はナナハン・リッタークラスまで飛び火した。このブームは、1990年代半ばのアメリカン(クルーザー)ブームとそれに続くビッグスクーターの台頭によって一応の終焉を迎えたが、普通二輪のラインナップが手薄な現在の国内市場においては今もってスポーツバイクの主力となっている。
[編集] リッターネイキッド
普通自動二輪免許で乗れる400ccクラスが主戦場だった各社も、限定解除審査合格率の向上と自動車教習所で大型自動二輪免許の教習が受けられるようになった1996年の規制緩和を受けて1000ccを超えるモデルを誕生させる。1992年のホンダ・CB1000スーパーフォア、カワサキ・ゼファー1100の登場を筆頭に、1994年にはヤマハからXJR1200、1995年にはスズキからGSF1200が投入された。現在ではこちらの方がネイキッドの主力となっている。
[編集] 主なモデル
括弧内はシリーズ毎の排気量を示す。
[編集] ホンダ
- CB1300スーパーフォア/スーパーボルドール
- CB750
- CB400スーパーフォア/スーパーボルドール
- CB-1
- ホーネット(250/600(-2006年)/900)
- ジェイド
- VTR250
[編集] ヤマハ
[編集] スズキ
- GSX1400
- GSX400インパルス
- バンディット(250/400/600/650/750/1200/1250)
- イナズマ(400/750/1200)
- SV(400/650/1000)
[編集] カワサキ
[編集] ドゥカティ
- モンスター(400/1000)
[編集] ストリートファイター
ネイキッドの中の1ジャンル。略称はストファイ等。海外(特にヨーロッパ)向けの車両が多い。
起源には諸説あるが、1990年代中頃にイギリスのバイク雑誌であるストリートファイター誌が提唱したカスタムスタイルであるというのが有力な説。これはレプリカからカウルを外し、オフロードバイクのライト、ショートシート、バーハンドルを移植したカスタムで、現在のストリートファイターの原型になっている。このようなカスタムを施したバイクをスタントマンに乗ってもらい、パフォーマンス(曲芸走行)してもらったところ、好評だった。この競技が現在のエクストリームバイクの原型となっている。エクストリームバイクに使用される車輌の殆どがストリートファイター並びに、ストリートファイターカスタムを施されたバイクである。
ストリートファイターの正確な定義は無いが,主に
- 異形ヘッドライト
- 1本サス
- ハーフカウルを装着する兄弟車もラインナップされる
- ホイールベースとシートカウルは短め
- 攻撃的なデザイン
などの特徴を有する(ヨーロッパでは丸形1灯のヘッドライトや後輪の2本サスは人気がないため)。600~1000ccが主流。軽量俊敏で走行性能は比較的高い。SSからカウルを外し、アップハンドル化したものといっても過言ではない。(事実、SSのエンジンや足回り等をベースに改良して生まれたストリートファイターは多い。)カウル付きモデルはツアラーに位置づけられることもある。
21世紀に入って日本でもストリートファイターの名が聞く機会が増えてきたが、以前は伝統的なスタイルだったモデルが近年のモデルチェンジでモダンに生まれ変わる例もあり、この境界線は薄れつつある。
[編集] 主なモデル
[編集] ホンダ
- CB1000R
- Hornet600 (2007年-)
[編集] ヤマハ
[編集] スズキ
- GSX1300BK B-KING
- GSR(400/600)
[編集] カワサキ
- Z1000
- Z750
- ER-6n/f
[編集] アプリリア
- tuono1000R
[編集] トライアンフ
- スピードトリプル(1050)
- ストリートトリプル(675)
[編集] ビューエル
- XB(900/1200)R/S
- ビューエルの車両は、その特長からほとんどがストリートファイターのような呼ばれ方をする。
[編集] KTM
- 990 SUPERDUKE
[編集] ベネリ
- TNT
[編集] クラシック
カワサキ・W400/650、トライアンフ・ボンネビル 、ドゥカティ・スポーツクラシックシリーズのように、更に昔の年代のバイクを復刻、現代風にアレンジしたジャンルをネイキッドと呼ばずに、クラシックと呼ぶことがある。W650のモチーフとなったW1、W3はその年代に生産されていたバイクなのでクラシックとは呼ばない。(敢えて称するなら「レトロバイク」か。)
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ NはネイキッドのN