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トランスワールド航空800便墜落事故 - Wikipedia

トランスワールド航空800便墜落事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

トランスワールド航空800便の残骸。機体の再現のため、つなぎあわされている。
トランスワールド航空800便の残骸。機体の再現のため、つなぎあわされている。
トランス・ワールド・エアラインズ 800便
概要
日付   1996年7月17日
原因   電気配線の腐食から空中爆発
場所   ニューヨーク州ロングアイランド
死者   230
負傷者   0
航空機
機体   ボーイング747-100
航空会社   トランス・ワールド・エアラインズ(TWA)
機体記号   N93119
乗客数   212
乗員数   18
生存者   0

トランスワールド航空800便墜落事故とは、1996年アメリカトランスワールド航空(TWA)のボーイング747が空中爆発による空中分解によって墜落した航空事故である。当初は一週間後にせまったアトランタオリンピックを妨害するために引き起こされた航空テロであるとの説が真実味をもって報道されたが、その後の事故調査によって電気配線でショートした火花が燃料タンクに残留した気化ガスに引火して爆発したことが判明した。

目次

[編集] 事故の概要

トランスワールド航空のボーイング747
トランスワールド航空のボーイング747

1996年7月17日午後8時19分(アメリカ東部時間)、アメリカのニューヨークジョン・F・ケネディ国際空港からフランスパリシャルル・ド・ゴール国際空港行きのトランスワールド航空800便(ボーイング747-100型機:製造番号20083、機体記号N93119、1971年製造)が、離陸して12分後にニューヨーク州ロングアイランドのイースト・ハンプトン沖を上昇中に空中爆発し大西洋に墜落した。近くを飛行中のイーストウィンド航空(Eastwind Airlines)507便の目前で起こったため、すぐに管制に連絡が入った。

爆発の直後、機体底部に巨大な穴が空き、そこから亀裂が機体を一周して、2階を含む機体前方(セクション41とセクション42)が切り離されて乗客を乗せたまま落下、機体後部は操縦席が無くなったまま10数秒急上昇し続け、エンジンが停止してから降下し始めた。機体後部はそのまま海に向かって落下し、落下中に火災によって左翼が分離、どんどん火災が激しくなったまま落下して海に墜落した。この事故で乗員18名、乗客212名、計230名全員が犠牲になった。

[編集] 事故の原因

[編集] 調査

事故の目撃者の証言が記述されたレポート。黒く塗りつぶされている部分はプライバシー情報である。
事故の目撃者の証言が記述されたレポート。黒く塗りつぶされている部分はプライバシー情報である。

当初は1週間後に開催される予定のアトランタオリンピックを狙ったテロが疑われた。事実、事件発生直後サウジアラビアの新聞社にイスラム原理主義勢力の名で「TWA機を爆破した」との犯行声明が送りつけられ、墜落したTWA機の残骸からTNT火薬の爆発による硝煙反応が検出されたとの発表もありFBIも捜査に乗り出した。また、地対空ミサイルの航跡とおぼしきものが旅客機に向かって伸びていたという複数の証言があったり、それらしき写真が2枚撮影されたりした。

事故機がニューヨークに到着するまえは、数々の航空テロの舞台となり、セキュリティーが甘いとされたギリシアアテネにいた(実際にTWAがテロの標的になり、ハイジャックや爆発物によって墜落する事態が複数回あった)。この日、事故機はアテネからの881便として午後4時31分に着陸していた。そのため、事故当初は海上からの攻撃、もしくは機体にしかけられた爆弾によって墜落したといわれていた。

また、事故時にニューヨーク周辺で訓練を行っていたアメリカ海軍軍艦軍用機による誤射も疑われた。この説についてはFBIが大規模な調査を実施した。FBIは、事故時に周辺にいたすべての軍用機、軍艦、潜水艦を細かく調査した。結果は、事故時には確かに訓練を行っていたものの、最も近くで訓練していた軍艦でも800便から数十キロ離れた、撃墜が不可能な場所にいたというものであった。よってこの説は「あり得ない事」と結論付けられた。

機体の残骸は北東方向に全長7.5キロ、全幅6.5キロの範囲の海中に落下していたが、国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board, NTSB)による徹底的な残骸の回収が10ヶ月以上行われ最終的には95パーセントの機体残骸が回収された。それらの残骸は様々な分野の専門家による調査が行われ、格納庫の中に主要構造物のうち翼中央部と中央胴体部分が三次元モックアップで組み立てられるなど、アメリカの航空事故史上類を見ないほどの時間と労力と費用が投入された。

結果、2000年8月23日に事故原因は飛行中に燃料タンクそばの電気配線がショートし、それが燃料タンク監視システムに接続している電気回線を通じて高電圧がタンク内に流れ、気化していた中央燃料タンク内の燃料に引火し爆発したと断定された。また、撃墜を裏付ける2枚の写真のうち、1枚は800便とは違う方向に飛行する別機、もう1枚はレンズについた汚れである事が判明した。

事故調査報告書によれば、事故当時中央燃料タンクには13,000ガロンの容量のうち50ガロンしか入っておらず、燃料が気化しやすい状況にあった。そのうえ事故機はパリへの出発は定刻午後7時00分であったが大幅に出発が遅れていた。その間、真夏であったためエアコンをフル稼働していたが、この空調装置は中央燃料タンクの真下にあったため、タンク内の燃料を暖め燃焼可能な気化した空気で満たされていた。このままでは発火源がないので着火しないが、電気回線のショートが引き金を引いたと推定された。燃料測定器のプローグに外部のショートで生じた過大な電圧が流れ、タンク内の気化した燃料を発火させたとされた。これは事故機は製造後25年を経た経年機であり、電気配線の腐食がショートの直接の原因とされた。そのため、メーカーに対し事故再発防止策として、タンクの改修やメンテナンスの強化が答申された。

サウジアラビアの新聞社に送りつけられた犯行声明はいたずらの可能性が高いとされている。TWA機残骸から検出されたTNT火薬の硝煙反応については、当該(事故)機が事故発生3日前に行われた、爆発物捜索訓練に使用され、実際に機内にTNT火薬を仕掛けた際付着した残留物とされている。

[編集] 結果

この事故の原因については、直前にレーダー上で同機に向かう飛行物体が確認されたこともあり、アメリカに敵対しているイスラム過激派によるテロのほか、アメリカ海軍原子力潜水艦によるミサイル誤射説や、アラスカの軍事施設ハープの実験説など諸説が唱えられていたが、いずれも陰謀論の類といえるものであると言える。実際に、残骸から爆発物が機内で炸裂した時に残されるであろう金属片といった証拠が全く発見されなかっためである。

地対空ミサイルで撃墜された説の反論として、現在の地対空ミサイルは熱感知誘導システムを持っているため、旅客機を狙った場合には主翼のエンジンにミサイルが命中しているはずだとされている。

またNTSBが結論した原因とは別の要因(たとえば隕石の衝突)で墜落したと主張するサイトがアメリカにはあるという。これはアメリカ北東部で多くの流星が観測されていたためであるが、報告書によれば航空機に隕石が衝突する確率を「59000年から77000年に1回」としており、可能性は極めて小さいとしている。

[編集] 参考文献

[編集] トランスワールド航空の破産

事故後、トランスワールド航空は被害を最小限に抑えようと、トランスワールド航空の副社長は責任はないはずだと述べた。その後、事故前から経営不振に陥っていたトランスワールド航空は、事故の影響でますます経営が悪化し、2001年春にアメリカン航空に吸収合併された。

[編集] 共通する航空事故

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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