スーフィー
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スーフィー(Sufi)は、おおまかにはイスラームの範疇に含まれ、イスラム神秘主義と解釈されることが多く、スーフィズムとも呼ばれる。おおむねスーフィーの諸派は、イスラームの教えの真理をその本質において認めるが、国家または社会が容認するイスラム教の権威を必ずしも認めず、直接的な体験によってみずから知ることを求める傾向が強い。
欧文の伝統的な記法に則って-ismをつけるスーフィズムは、その実践のあり方も含めて思想的な側面からの総体を指すとみなされる。語源的に見ると、「スーフ」とはアラビア語で羊の毛皮を意味する言葉であり、スーフィーとは羊の皮を着衣や座布として修行あるいは遍歴した者たちを意味していたというのが一般的な解釈である。従って、スーフィーはスーフィズムの担い手をその思想の実践者としての側面からとらえた呼称ともみなされうる。この場合、両者を分かち用いるのが望ましいと考えることもできるが、通常は本ウィキペディアの通り混用される。
また、スーフィーは特定の宗派または教義の呼称ではなく、もっぱらイスラム世界においてこのような傾向をもって精神的な探求を志向した人物や彼らのまわりに生まれた精神的共同体もしくは教団の総称として、さらにそれらと結び付いた思想・哲学・寓話・詩・音楽・舞踏などを指すこともある。諸派の間にはある程度まで共通の精神性や方向性が認められるが、諸派の間での違いも大きい。預言者ムハンマドにつながる直接的な伝承の系譜をもって権威とする教団もあれば、外的な権威よりも内的な体験を重視する教団もある。
一般的にはスーフィーはイスラム教の発祥(7世紀)とともに、その影響下で、あるいはイスラム教の多数派に対する異議をもって生まれたと見なされている。ただし、スーフィーの起源をイスラム以前とする説もあり、その発祥または発展の過程での、ユダヤ教、キリスト教、ゾロアスター教、中央アジアでは仏教からの影響を指摘する説もある。スーフィーは13~15世紀にかけて特に発展し、中東全域のほか、北アフリカ、インド、中央アジア、イスラム支配下のスペインなど、イスラム世界の各地に諸派が生まれた。
スーフィーの諸派の間では、イスラム教の多数派が戒律によって禁じる音楽や舞踏などを行法に用いることも一般的である。直接的な体験を重視する傾向ゆえに、師もしくは長老(シーク)との直接的な関係を基軸とした共同体や同胞団としての形態をとることが多い。それらの共同体のなかで修行に打ち込んだり、あるいは教えを説いて各地を遍歴したりする者たちは、ダルヴィッシュとも呼ばれる。
一般的には、個我からの解放、そして<神>もしくは<全体>との合一をみずからの体験として追求する傾向が、広くスーフィーとして知られる諸派の共通点であると言われる。また、諸派が構成する精神的共同体の内部での友愛的な絆の強さも、スーフィーの特徴のひとつと言われる。それらの精神的共同体のメンバーは一般的には男性のみであるが、歴史のなかでは女性がスーフィーの師となった例もあり、少数ながら女性の入団を認める派もある。
国家的または社会的に認められたイスラム教との関係の持ち方やその教義の扱い方は各派各様であるが、イスラム教の多数派からもイスラム原理主義派からも異端視されがちである。19世紀においてスーフィズムの一大中心地となったトルコでは、20世紀初頭、ケマル・アタチュルクらが欧化政策を推進するなか、トルコ帽とヴェールの着用を法律で禁止するなどという施策とともに、ダルヴィッシュ(スーフィー)であることは違法とされ、スーフィーの教団は強制的に解散させられた。
昨今でもトルコでのこの事情は変わっておらず、スーフィーの代表的な行法として知られるズィクル(独特の呼吸と留意をもっての読誦)の声が外部に漏れるとそれは警察への密告を招くことがあり、やはり代表的な行法であるメヴレヴィー教団のセマー(旋回舞踏)は観光客向けのショーという名目でのみ許されている。白いスカート状の服を穿き、音楽に併せてくるくるくるくると回り続けることで神に近づくという儀礼で、一時間以上回り続ける。
その一方で、ダルヴィッシュという言葉は、大きな斧や托鉢用の鉄なべを腰にぶらさげて各地を遍歴し、友愛の絆をもって結ばれた、精神的ながらも屈強で勇敢な男たちというイメージをもって受け止められることが多く、「ダルヴィッシュの冒険」などという題名の絵本やアニメがそれを物語っている。
イスラム圏の他国でもイスラム原理主義の台頭によりスーフィーの表立った活動は困難になっているようである。その一方で、西洋においてスーフィーの団体が活動を始めたりしている。
[編集] 関連項目
[編集] パキスタンのスーフィズム
外部リンク
- Gonga Saeen & Mithu Saeen beats the drum for Baba Shah Jamal, Photo by Yasuo Osakabe, Photographer, Yasuo Oaskabe 写真:長壁泰生
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