スチームパンク
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スチームパンク (Steampunk) とは、1980年代にサイエンス・フィクションの分野で流行したサブジャンルの一つ。同じくSFのサブジャンルであるサイバーパンクより派生した。
サイバーパンクの旗手ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングによって書かれた『差分機械』がその代表作とされる。
目次 |
[編集] 概要
スチームパンク作品の世界においては、一般的には動力源として(内燃機関と比較した際に小型化がより困難な外燃機関である)蒸気機関が普及しており、よりコンパクトな内燃機関や大出力の電動機などが発展・普及した現実の技術史を参考にしながらも、これら制約の大きな動力をどのように発展させ、またそれらによって成立する社会を描くか、言ってしまえば、どのようにして「有り得たかもしれないホラを吹くか」が、スチームパンク作品の面白さの一つと言える。
スチームパンクは、本来の意味あいとしては「産業革命の原動力となった蒸気機関が、現実の歴史の絶頂期のありようを超越して発展した技術体系や社会を前提としたSF作品」などと形容することができ、反理想郷を描いた物だった。前出の『ディファレンス・エンジン』などはこの前提に合致する。
一方、これらの作品や舞台を単にそのスタイルのみ模倣した作品がスチームパンクを名乗ることもあり、現在では(とくに日本の漫画やアニメ、ゲーム作品などにおいては)スチームパンクを標榜していながら内燃機関や電力などが安易に用いられるなど、単にレトロ風の技術やスタイル・デザインの記号として「スチームパンクという造語」が用いられる例も少なくない。
これらの現状を内包する「広義としてのスチームパンク」においては、時系列としてはおおむね19世紀から20世紀初頭にかけて、産業革命から世界大戦までの社会を舞台とする作品が多い。主要な動力源として蒸気機関が用いられており、人体改造(人体への歯車埋め込み、インプラント)、階差機関(ディファレンス・エンジン)や解析機関などの機械式(歯車式)計算機(コンピュータ)、飛行船などの飛行機械、マスコミュニケーションの存在(ニュースペーパー、ラジオ放送)などがガジェットとして登場する例が多く、また作品によっては、当時の未発達な科学的知見にもとづく誤解や後に修正ないし撤回された学説(例えばエーテル宇宙論など)をネタとして採用する作品のほか、オカルト的な霊魂や、ホムンクルスなどと呼ばれる人造人間を取り扱う作品も存在する。
このように、現実の歴史や技術史を超越したテクノロジー(技術体系)を前提とした世界や社会を描く作品は俗にテックパンクとも呼ばれ、メジャーなところでは(コンピュータの)ネットワークと人格、電子技術と人体が融合して発展した世界を描くサイバーパンク作品や、あるいは鉄塔や電線、真空管などのガジェットに傾倒するエレクトリックパンクといったマイナーなサブジャンルも存在する。
[編集] スチームパンクの歴史と系譜
ジュール・ヴェルヌの『海底二万マイル』はスチームパンク以前に書かれた作品だが、後にスチームパンクの先駆的作品として認められるようになった。
スチームパンクというジャンルを成立・確定させた作品は、前出の『ディファレンス・エンジン』である。
また、1960年代に制作されたアメリカのテレビシリーズ『ワイルド・ワイルド・ウェスト』はスチームパンクとは見なされていないが、これを原作として作成された1999年の映画『ワイルド・ワイルド・ウェスト』はスチームパンク作品のイメージの一環と見なされている。これらの誤解をもとに「スチームパンクとは『ワイルド・ワイルド・ウェスト』のような世界を描いた作品である」と言われる事もある。
[編集] 代表的なスチームパンク作品
[編集] 日本小説
- 押川春浪『海底軍艦』(1900年)
- 押川春浪『空中大飛行艇』(1902年)
- 海野十三『大空魔艦』(1938年)
- 海野十三『怪鳥艇』(1941年)
- 南洋一郎『謎の空中戦艦』(1940年)
- 横田順彌『火星人類の逆襲』(1988年)
- 天沼春樹『飛行船帝国』(1993年)
- まさきひろ『幕末二万マイル』(2005年)
- 川崎康宏『ガジェット・ポップ』(2006年)
[編集] 海外小説
- ジュール・ヴェルヌ『海底二万マイル』(1869年)
- H・G・ウェルズ『陸の甲鉄艦』(1903年) - ハヤカワ文庫から出ている『タイムマシン』に収録されている。
- K・W・ジーターMorlock Night(1979年)
- K・W・ジーター『悪魔の機械』(1987年)
- ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング『ディファレンス・エンジン』(1990年)
- ジェイムズ・P・ブレイロック『ホムンクルス』
- ティム・パワーズ『アヌビスの門』
- ハリイ・ハリスン『大西洋横断トンネル、万歳!』
- ヴォルフガンク・ホールバイン『ノーチラス号の冒険』(1993年)
[編集] 漫画・アニメ・映画・ゲーム
- 『アトランティス』(ディズニー映画)
- 『快傑蒸気探偵団』(麻宮騎亜)
- 『ギア・アンティーク』
- 『機神兵団』1993年製作 オリジナルアニメーションビデオ
- 『キャッスル・ファルケンシュタイン』
- 『雲のグラデュアーレ』
- 『グランディア』
- 『鋼鉄帝国』
- 『荒野の蒸気娘』(あさりよしとお)
- 『蒸気王』(唐沢商会)
- 『サクラ大戦シリーズ』
- 『THE ビッグオー』
- 『サムライガン』
- 『スカイガンナー』
- 『英雄伝説VI「空の軌跡」』
- 『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』
- 『風を見た少年』(C・W・ニコル原作、大森一樹、監督第45回アジア太平洋映画祭、最優秀アニメーション賞受賞)
- 『スチームボーイ』(大友克洋監督)
- 『蒼天のセレナリア』(18禁)
- 『赫炎のインガノック』(18禁)
- 『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』
- 『テラ:ザ・ガンスリンガー』
- 『天空の城ラピュタ』
- 『天空の覇者Z』
- 『ネオスチーム』
- 『鋼の錬金術師』
- 『パタパタ飛行船の冒険』
- 『バッケンローダー』
- 『発明冒険大奇譚蒸気王』唐沢商会(唐沢俊一・唐沢なをき)- 蒸気と電気の争いがテーマになったギャグ漫画作品。
- 『ファイナルファンタジーVI』
- 『ふしぎの海のナディア』- 19世紀末を舞台とするが、電気技術やオーバーテクノロジーが多用される。
- 『名探偵ホームズ』
- 『らいむいろ戦奇譚』(18禁)
- 『LAST EXILE』
- 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』アラン・ムーア/ケビン・オニール
- 『リーグ・オブ・レジェンド』
- 『ワイルド・ワイルド・ウェスト』
- 『プロギアの嵐』