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ウィリアム・ギブスン - Wikipedia

ウィリアム・ギブスン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

文学
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William Gibson
William Gibson

ウィリアム・ギブスンWilliam Ford Gibson, 1948年3月17日 - )は、アメリカ合衆国サウスカロライナ州コンウェイ生まれの小説家SF作家。ベトナム戦争の際に、徴兵を拒否してカナダに移住し、しばらく路上生活を経験。その後、ブリティッシュ・コロンビア大学英文科を卒業。

目次

[編集] 経歴

1977年にセミプロ雑誌でデビュー。1982年に発表した短編『クローム襲撃』(Burning Chrome)で一躍脚光を浴びる。

1984年の初長編『ニューロマンサー』(Neuromancer) でサイバーパンクSFというSFの新しいジャンルのけん引役となった。「サイバースペース」は彼の造語である。その日本語訳の「電脳空間」は、本作品の翻訳者、黒丸尚による。ちなみに装幀は、奥村靫正。彼の『スプロール・シリーズ』と呼ばれる一連のシリーズ(ニューロマンサー、カウント・ゼロ、モナリザ・オーバードライブ、クローム襲撃記憶屋ジョニィ)は、日本の漫画/アニメ『攻殻機動隊』や映画『マトリックス』に大きな影響を与えたと言われている。

1995年、短編『記憶屋ジョニイ』(Johnny Mnemonic)が『JM』(Johnny Mnemonic, 1995年(米)出演:キアヌ・リーヴス北野武)として映画化。脚本はギブスン自ら手掛けている。その後映画『エイリアン3』の脚本に参加するが、結局彼の書いた物で映画に残ったのは囚人の首のバーコードのみであったと言われている。また人気TVドラマ『X-ファイル』の脚本にも参加したことがある(第5シーズンエピソード11"Kill Switch"、第7シーズンエピソード13"First Person Shooter")。

サイバーパンク分野でいち早く「コンピュータネットワーク」の可能性に言及し、コンピュータ上のバーチャルリアリティの概念を世に発表した(「バーチャルリアリティ」という言葉自体の発明はしていない)。

1990年代には『バーチャル・ライト』、『あいどる』、『フューチャーマチック』という、スプロール・シリーズから世界観を一新した新三部作を完成させる。現代に近い近未来を舞台とし、現存する技術から外挿可能なバーチャルリアリティ技術の多用によりSF色は弱まっているが、ナノテクのようにSF特有のガジェットも登場する。

2003年には新長編『パターン・レコグニション』を執筆。現代を舞台に、インターネット上にアップロードされる映像「フッテージ」の作者を探索する非SF小説であるが、続編 Spook Country (2007) も同じ世界を共有しており、新たな三部作となるのか注目される。

[編集] 作品リスト

[編集] 長編

「電脳」三部作(スプロール・シリーズ)

  • Neuromancer (1984):1984年ネビュラ賞フィリップ・K・ディック記念賞、1985年ヒューゴー賞受賞、ローカス賞ノミネート
  • Count Zero (1986):1986年ネビュラ賞、1987年ヒューゴー賞、ローカス賞ノミネート
    • 『カウント・ゼロ』:黒丸尚訳、ハヤカワ文庫SF、1987年
  • Mona Lisa Overdrive (1988):1988年ネビュラ賞、1989年ヒューゴー賞、ローカス賞ノミネート
    • 『モナリザ・オーヴァドライヴ』:黒丸尚訳、ハヤカワ文庫SF、1989年

共著

「橋」三部作

  • Virtual Light (1993):1994年ヒューゴー賞、ローカス賞ノミネート
    • 『ヴァーチャル・ライト』:浅倉久志訳、角川書店、1994年
  • Idoru (1996):1997年ローカス賞ノミネート
    • 『あいどる』:浅倉久志訳、角川書店、1997年
  • All Tomorrow's Parties (1999)
    • 『フューチャーマチック』:浅倉久志訳、角川書店、2000年

その他

  • Pattern Recognition (2003)
    • 『パターン・レコグニション』:浅倉久志訳、角川書店、2004年
  • Spook Country (2007):未訳

[編集] 短編集

  • Burning Chrome (1986)

[編集] その他

  • ブルース・スターリング『蝉の女王』ハヤカワ文庫SF、1989年:序文
  • Skinner's Room (1990):後に『ヴァーチャル・ライト』に発展する短篇
    • 『スキナーの部屋』:浅倉久志訳、巽孝之編「この不思議な地球で 世紀末SF傑作選」所収、紀伊之國屋書店、1996年
  • The Beloved (Voices for Three Heads) in ARTRANDOM Robert Longo 京都書院、1991年:詩
    • 愛する人(みっつの頭のための声):黒丸尚訳、上記書籍に併録
  • Agrippa (A Book of the Dead) (1992):芸術家デニス・アッシュボウとの共作から生まれた、ギブスンの自伝的テクスト
  • Johnny Mnemonic (1995):映画「JM」の脚本と短篇「Johnny Mnemonic」を収録
    • 『JMハンドブック』:ギャガコミュニケーションズ、1995年
  • YMO『テクノドン』1993年:Floating Awayの作詞と朗読を担当
  • 現代作家ガイド3「ウィリアム・ギブスン」巽孝之編、彩流社、1997年:インタビューや、短篇「ダンボール都市13景」を収録
  • William Gibson - No Maps for These Territories :ギブスンへのインタビューを収録したドキュメンタリー。1999年撮影
    • 日本版『No Maps ウイリアム・ギブスンとの対話』2005年
  • Larry and Andy Wachowski Matrix - The Shooting Script (2001):序文
    • 映画『マトリックス』のパンフレットにも収録されている

[編集] 映像化された作品

  • Johnny Mnemonic (1995):日本版タイトル「JM」
    • ギブスンは脚本を担当。ローテックたちの住処として「橋」が描かれること、現実のテクノロジーから類推可能なバーチャルリアリティ技術が使われるなど、同時期の長編小説『バーチャル・ライト』からの影響が見られる
    • ノベライズに Terry Bisson Johnny Mnemonic(1995)(テリー・ビッスン「JM」嶋田洋一訳、角川文庫、1995)がある
  • New Rose Hotel (1998)
    • 天野喜孝がヒロシとして、坂本龍一がホサカの重役として登場する

[編集] 作品の傾向

退廃した社会と高度なテクノロジーというスタイルを好み、その世界に住む人間の心理的な根底を汲み出すことでストーリーを展開させる。

また、世界観の構築上で「スプロール」(無秩序に郊外へ拡散する都市様式)という状況を好み、大規模建造物に寄生して、そこの住民により付け足された部分が増殖するさまを描き、更には都市の隙間や空白地帯に、都市伝説のようなものが芽生えるさまを描く事もある。

彼の作品に影響されたSF映画コミック等の娯楽作品は数知れず、その中には、日本の漫画/アニメ『攻殻機動隊』や爆発的ヒットを記録した映画『マトリックス』シリーズも含まれる。その影響には、以下のようなものがある。

  • 進化したAI(人工知能)が自我を持って神のようにふるまうこと
  • 別々の存在が融合し、ネット上に拡散して上位的存在となること
  • 仮想現実空間をマトリックスと呼ぶこと
  • 聖域「ザイオン」 の存在
  • インプラントプラグ(人体に埋め込んだプラグ)へのケーブル接続によるサイバースペース侵入
  • 透明スーツ(光学迷彩)『擬態ポリカーボン』
  • 人間をハッキングして操るAI『人形使い』
  • 電脳を通じて他者の視覚情報や感覚を共有できること
  • ハッカーに対する攻撃的防御プログラム(→攻性防壁
  • 眼球の代替物として顔に埋め込まれたミラーシェードのグラス

『マトリックス』に関しては、当初、ウォシャウスキー兄弟は『ニューロマンサー』そのものを映画化しようとしたが、スポンサーサイドがピカレスク小説であることに難色を示し、現在の『マトリックス』へと企画が変更された。また『マトリックス』のパンフレットにはギブスン自身による映画の解説も載っている。2作目の『リローデッド』編の劇中で『ニューロマンサー』の続編と同題の『モナリザ・オーバードライブ』という曲が流れるのも、かなり意図的である。ちなみに、そのプレゼンテーションの際に、『攻殻機動隊』の映画そのものを使って「こういう映画を作りたい」とアピールしたと本人たちが語っている。

[編集] 日本マニアとしてのギブスン

日本のテクノロジーや風土・精神性・社会・メディアには強い関心があり、作品中にしばしば日本風の存在が登場する。

作中の「サムライ」とはストリート上の傭兵・用心棒的な存在を指すが、俸給に対して忠義心が強く、契約に忠実で死すら厭わないという存在として描いている。 ヤクザは作品世界におけるマフィアコミュニティであるが、「ネオン菊の息子達」と形容され、畏怖を持って語られる存在として描かれている。

また日本企業らしき「オノ・センダイ」等の企業名や、「チバ」に代表される日本の実在の地名をサイバネティックス医療技術で先端を行く国際都市として登場させるなどしている。

『ニューロマンサー』に登場する殺し屋・モリィのデザインは短篇『記憶屋ジョニィ』がS-Fマガジン1986年11月号で初めて日本で翻訳された際に末弥純が描いた挿絵に影響を受けたものである。

『モナリザ・オーバードライブ』では日本人の少女・久美子が準主役として登場し、『ヴァーチャル・ライト』では大震災ゴジラにより東京が壊滅したことが語られる。また、その後の作品『あいどる』、『フューチャーマチック』、『パターン・レコグニション』では日本が舞台として登場する。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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