ジョン・W・キャンベル
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ジョン・W・キャンベル(John Wood Campbell Jr., 1910年6月8日 - 1971年7月11日)は、アメリカ合衆国の小説家、SF作家、編集者。マサチューセッツ工科大学出身。1937年からSF雑誌『アスタウンディング・サイエンスフィクション』(後の『アナログ』誌)の編集長を務め、ロバート・A・ハインライン、A・E・ヴァン・ヴォークト、アイザック・アシモフなど多くの一流SF作家を育てた。また「亜光速で航行中の宇宙船が直角に方向転換する」ような作品を排除してSFの質を高めることに尽力した(ただしキャンベルの強硬な姿勢は後に反発を招いた)。これらの功績と創作活動(後述)によって1940年代アメリカSFの立役者の一人と見なされている。
編集者としては特に初期のアシモフとの関係で知られている。出世作となった短編「夜来たる」は彼のアイディアであり、有名な「ロボット工学三原則」もアシモフの短編を元に彼が定式化したものである。
ただし、一方で悪影響もあり、アシモフのファウンデーションシリーズで異星人が登場しないのは、白人至上主義者で異星人すら蔑視していたキャンベルとの衝突をアシモフが避けたためと言われている。他にも、アシモフの長編『宇宙の小石』において、腐敗された未来世界で、人類発祥の地であることを忘れられた地球で、未来の考古学者が発見し「これは素晴らしい文書だ」と感激するのが「アメリカ合衆国憲法」であるというわざとらしい設定がある。これもキャンベルに強要されたアイディアである。
なお、SF作家のL・ロン・ハバードがダイアネティックスを提唱し、キャンベルがそれを信奉して以降、晩年にかけて、キャンベルは超科学のたぐいにのめりこみ、彼の人生の汚点となっている。
彼が育てた作家の一人であるアーサー・C・クラークは、その自伝でキャンベルについて、「彼は晩年に近づくにつれて、ありとあらゆる(ひかえめに言っても)論争を呼ぶアイデア――ダイアネティックス、超心理学、反重力機械(〝ディーン駆動〟)、極端な政治的見解――に関与し、かつての示唆に富む編集後記は意味不明に近くなった。」と書いている。
SF作家としての代表作は、月面探検隊のサバイバル生活をリアル描いた『月は地獄だ!』(1951年)。作家活動は1930年代序盤から行なっており、初期作品にはスペース・オペラの「アーコット、モーリー&ウェード」シリーズなどがある。科学性の強い作風は1930年代のアメリカSF界において高く評価された。短編「影が行く」(Who Goes There?) は、『遊星よりの物体X』(1951年)、『遊星からの物体X』(1982年)として2度映画化されている。ドン・A・スチュアート (Don A. Stuart) 名義でも、短編『機械』(The Machine) などいくつかの作品を発表した。
彼の業績を記念して、彼の名をとったジョン・W・キャンベル記念賞 (The John W. Campbell Memorial Award) とジョン・W・キャンベル新人賞 (The John W. Campbell Award) が別々に設けられた。
[編集] 邦訳書リスト
- The Mightiest Machine 『100万光年の死闘』吉川純子訳、久保書店
- The Moon Is Hell! 『月は地獄だ!』矢野徹訳、早川書房
- The Black Star Passes 『暗黒星通過!』野田昌宏訳、早川書房
- ※中編連作。「アーコット、モーリー&ウェード」シリーズ
- Who Goes There? And Other Stories 『影が行く』矢野徹・川村哲郎訳、早川書房
- ※短編集。「影が行く」、「薄明」、「夜」、「盲目」、「エイシアの物語」を収録
- The Ultimate Weapon 『太陽系の危機』久保書店
[編集] 映画化された作品
- 遊星よりの物体X (The Thing from Another World)、1951年(米)
- 監督:クリスチャン・ナイビー、出演:マーガレット・シュリダン、ケネス・トビー、ジェームズ・アーネス
- 遊星からの物体X (The Thing)、1982年(米)
- 監督:ジョン・カーペンター、出演:カート・ラッセル、A・W・ブリムリー、リチャード・ダイサート