ザ・ブラックオニキス
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ザ・ブラックオニキス(The Black Onyx)は1984年にBPS(Bullet-Proof Software)が発売した、事実上の日本初のファンタジー・コンピュータRPG。略称はブラオニ。
当時はまだコンピュータRPGという概念が日本では一般的ではなかったため、システムを簡略化するために戦闘中の攻撃手段は武器による物理攻撃のみで、魔法を使うことはできず、敵のモンスターも魔法などは使わなかった。プレイヤーキャラクター(PC)が行動可能な場所は地上の街「ウツロ」と地下のダンジョンだが、地上も3D表示になっていた。
このゲームはコンピュータ雑誌のランキングで上位に入り、また長期にわたってランキングにとどまり、アスキー社のログイン誌のソフトウェア大賞を受賞している。
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[編集] ゲームシステム
ロジャースはロールプレイングゲーム初体験者のことを考慮してゲーム中の様々な情報を視覚化し、プレイしやすいように作っている。プレイヤーのパーティやモンスターだけでなく、ライフ(生命力)や経験値などを横長のバーや横向きの線などで視覚的に表現し、プレイヤーが直感的に理解しやすいように作られた。また冒険するパーティは5人まで、自分でキャラクターを作るか、ゲーム内で遭遇した友好的なパーティに対しJoin usのコマンド(Jキーを押す)で仲間にすることができる。
[編集] 物語
古くからの伝説によれば、永遠の命と莫大な富をもたらす宝石ブラックオニキスが、呪われた街ウツロのはずれのブラックタワーにあるのだという。この宝石を求めて、多くの冒険者達が地下迷宮へと消えて行った。
[編集] 冒険の舞台
- ウツロの街
魔法使いの呪いによって、空が常に夜となっている街。善人と悪人がおり両者は対立しているが、服装によって見分けることができる。
- 商店街
- WEAPONS(武器屋) 武器を売っている。武器にはナイフ・棍棒・斧・槍・剣がある。ただしこのゲームの戦闘には距離の概念がないため投石器や弓などの武器はない。
- ARMOR(鎧屋) 鎧を売っている。
- SHEILDS(盾屋) 三種類の盾(S・M・L)を売っている。
- HELMS(兜屋) 兜を売っている。
- TAILOR(服屋) 服屋だがつぶれている。
- 病院
- SURGERY(外科) 怪我の治療ができる。
- DRUGS(薬局) 薬とその容器を買うことができる。薬による治療はSURGERYと比較して割高になる。容器は35GP、薬は一回分が55GPで一つの容器に5回分まで入れることができる。
- EXAMINATIONS(検査) 有料でキャラクターのパラメータを調べることができる。
- BANK(銀行)
- お金を預けたり引き出したりできる。ウツロの街には泥棒がいてプレイヤーキャラクターからお金を盗むため、ここに預けると安全である。またキャラクターは一人につき15000GPまでしか持つことできないので、それ以上は預けることになる。銀行だが時間の概念が無いため利子はつかない。
- 酒場・飯屋
- 酒場では酒を飲むことはできない。また、飯屋でも食事はできない。
- ARNOLD'S PUB(アーノルドの酒場) ウツロの社交場になっている。
- TOM'S(トムの飯屋) 酒場を備えている飯屋。
- GRUB(飯屋) 食事どころ。
- 宿泊施設
- UTSURO INN(ウツロの宿屋) 4部屋あり、宿に泊まっている人がいる。プレイヤーが泊まることはできない。
- 公共施設
- JAIL(刑務所) 犯罪者が囚われているが、何故かプレイヤーが中に入ることができる。ファイアクリスタルではこの場所は市役所になっている。
- その他
- WELL(井戸) 枯れ井戸。ここから地下迷宮に入ることができる。井戸の底にはクラーケン(KRAKEN)がおり、初心者のパーティは大概ここで全滅する。
- RUINS(廃墟) 元々魔法使いの館だった。ここからも地下迷宮に入れる。
- CEMETERY(墓場) 元々死者を葬る場所だったが今はモンスターに乗っ取られている。ここも地下迷宮への入り口がある。
- ARENA(闘技場) ここでプレイヤーキャラクターを闘わせる予定だった。
- TEMPLE(寺院) ザ・ファイアクリスタルの入り口。
- GATE(門) ザ・ムーンストーンへの入り口になる予定だった。
- BLACK TOWER(ブラック・タワー) ここに伝説の宝石ブラック・オニキスが眠っていると言われている。
- 地下迷宮
- RUINSからは見えない壁を抜けると入ることができる。ウツロの地下迷宮には魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)するのだという。地下迷宮ではまれに生命力の強いバーバリアン(barbarian:「野蛮人」の意)に遭遇することがあり、一般のキャラクターと比較して生命力があるので、仲間にすると力強い味方になる。
このゲーム最大の謎である「イロイッカイズツ」は地下6階のカラー迷路で、パソコンのカラーコードの順番に従って移動すると、ブラック・タワーに昇れる階段がある部屋に入れる様になるというものだった。カラーコードの順番は昇順(PC-8801版)や降順(X1版)など機種によって異なっている。またPC-8801SR専用版やFM-7版は昇順でも降順でもない独自の順番になっていた。88SR専用版ではオープニングのブラックオニキスのグラフィックにヒントが隠されていた。当時この謎がパソコンに詳しい人間でないと解けないため、これについて批判するユーザーもいた。
[編集] 続編・制作秘話など
- 作者は当時ビーピーエス社長のヘンク・ブラウアー・ロジャース。一部で誤解されていることだが、当時副社長だったコンラッド・T・小沢は作者ではなく、製作を支援しただけである。
- 初めは以下の4つのゲームをまとめて作る予定だったが、容量不足のため4つに分割され、徐々にシステムを拡張する予定だった。
- PC-8801版はBASICと機械語で組まれている。
- H・B・ロジャースは開発するにあたり、"Out of memory"(「メモリが足りません」の意)などのエラーに悩まされ、またマシンに関する情報が十分になかったため、リバースエンジニアリングをしながら開発をしていた。
- ザ・ブラックオニキス
- 当初はPC-8800シリーズ用ソフトとして発売されたが、後にPC-9800シリーズ・PC-8000シリーズ・PC-6001mkII・FM-7シリーズ・X1シリーズ・MSXシリーズ(アスキー発売)・MZ-2500・Apple IIへと移植された。
- またNECがPC-8801mkIISRを発売すると、多少改良されたPC-8801mkIISR専用版も発売された。
- 供給メディアはカセットテープやフロッピーディスクやロムカセット(MSXのみ)だった。
- アーケードゲーム版の「ブラック・オニキス・アーケード」(Black Onyx Arcade。略称はBOA)をアイレム社と共同で開発し、アイレムの「R-TYPE」「Mr.HELIの大冒険」と同じアーケードゲーム基板で作っていたが、アイレム側の申し入れで開発は中断し、アイレムが制作料を支払って問題を解決した。この基板は当時のアーケードにしては珍しく(当時アーケード業界では16ビットや32ビットCPUとしては68000シリーズが良く使われた)インテル社の16ビットCPUである8086の上位互換CPUV30(NEC製)を搭載していた。またプレイヤーのキャラクタ・データの保存用に磁気カードを使用する予定もあった。
- ザ・ファイアクリスタル(The Fire Crystal)
- 続編。魔法が導入された。
- ザ・ムーンストーン(The Moonstone)
- 第3弾で野外も冒険出来る仕様。ハワイ支社で製作していたが、完成したものが余りにもアメリカンテイストなグラフィックだったので、日本で発売するには向いていないとの理由から作り直されることになり、何度かPC-9801で作り直されたものの、実際に発売されることはなかった。
- あるバージョンでは、ユーザーがブラック・オニキスやファイア・クリスタルのキャラクタのデータをもう持っていないだろうとの判断から、ムーンストーンにはブラック・オニキスやファイア・クリスタルが入れられる予定だった。
- あるバージョンでは小林孝志がプログラマとグラフィックデザイナーを担当し、PC-9801でアナログ16色モード用に作っていたが、結局完成することはなかった。
- アリーナ(Arena)
- キャラクタを戦わせることができる闘技場。パソコン版は発売されずゲームボーイ版のブラックオニキスにおまけ機能として入れられた。
- リメイク
- リメイクとしてファミリーコンピュータ版のスーパー・ブラック・オニキス(Super Black Onyx。略称はSBO。BPS内ではBlack Onyx Nintendoと呼ばれていたことがあった)が存在する。このゲームではブラック・オニキスでありながら魔法が使えるようになっていたが、ストーリーや冒険する世界は原作とは大部分が違うものになっている。
- 2001年にタイトーよりゲームボーイカラー用としてリメイクされ、キャラクターを対戦できるアリーナが入れられた。パソコン版ブラック・オニキスと同じレガシー・モードと、アレンジ版のモードの2つのモードを持つ。
[編集] 余談
- 「ウツロ」は、当時BPSがあった横浜市の菊名にあった交差点、「内路(うつろ)」にちなんでつけられたものである。
- ビーピーエスでは「ムーンストーンに関わった者は会社を辞める」というジンクスがあり、関わった人間の多く(小林孝志など)は関わった直後に辞めている。
- このゲームを原作としたゲームブック「スーパー・ブラックオニキス」が存在する。タイトルはファミコン版と同じスーパー・ブラック・オニキスだがパソコン版のザ・ブラックオニキスに近い内容になっている。
[編集] 関連項目
- ビーピーエス
- ヘンク・ブラウアー・ロジャース
- コンラッド・T・小沢
- ハンス・ヤンセン(スーパー・ブラック・オニキスのグラフィックデザイナー)
- 小林孝志
- ザ・ファイアクリスタル
- スーパー・ブラック・オニキス(ファミリーコンピュータ用移植ゲーム)
- スーパー・ブラックオニキス(ゲームブック版)
- ブループラネットソフトウェア